第614話 ホルボスダンジョンが無くなっているのだが……
学者さんはほっといてホルボス山ダンジョンへと向かう。
魔物がでるかもだけど、ワンコとかなら剣術組でなんとかなるでしょ。
飛空艇を村に着陸させてお客を下ろしても良かったかな。
地獄の猟犬団がたたき切った扉を抜けて地下礼拝堂に入る。
ん? なんか雰囲気が変わっている。
大きさが小さくなって、座席とか生えてるのだが。
「なんかおかしい」
「そうね、前に来たときと印象がちがうわ」
前はもっと広くて階段とかも見えなかったのに。
ずいぶんこぢんまりしているな。
そして、アタックドックも出てこない。
「こりゃあ、ダンジョンじゃ無くなったかな」
「え、そんな事ある?」
「魔力を供給していたアダベルと飛空艇が無くなったから、普通の場所になったのかしら」
小規模ダンジョンはたまに消滅するって聞くけど、実際に見ると不思議だなあ。
「先を見てきます」
ダルシーが現れて駆けていった。
「立派な女神像ですわね」
「そうだな、レオニダ親方の手かな」
「そうですな、ビアンカ様関連の施設ですから、弟子では無く本人の作かもしれませんぞ」
皇子と王女とお養父様が女神像を鑑賞しておるな。
学園の廃教会の女神像と似ているから本物かもね。
さて、階段に向かうか。
ダルシーが駆け下りてきた。
「大変です、邸宅です」
「は?」
「ダンジョンが無くなって、地上に二階建ての邸宅が出来ています」
「は?」
お前は何を言ってるのだ、と思ったが見た方が早いので駆け上がった。
「おーーーっ!!」
ダンジョンの陰気な石造りの廊下や部屋は無く、ちゃんとした邸宅が階段の上には広がっていた。
廊下もフローリングでちり一つ落ちてないぞ。
ビアンカさまの別邸か?
「これは凄いわね」
「わあ、豪邸だみょん」
ダルシーとアンヌさんが確認に駆け回っていた。
「百五十年前のビタリ風建築だね。これは豪華だ」
「インテリアも凄いわねえ。さすがは聖女様の別邸だわ」
お養父様とお養母様が感嘆の声を漏らした。
「マコトさま、玄関にこちらが」
ダルシーがなんか封筒を渡してきた。
マコトへ、と、何時ものビアンカさまの筆跡で書いてあった。
中身を引っ張り出すと、マコト・キンボール名義の土地と建物の権利書類であった。
そしてもう一枚。
大きく『やる』と書いてあった……。
ビ、ビアンカさまよ……。
「これは良いわね、村と飛空艇基地の行き来が楽になるし、人も泊まれるわ」
「ビアンカ様はもー」
ミーシャさんが前に出てきた。
「さあ、メイドたち、このていたくをみがきあげるのです。ていこくのメイドさんもいっしょに」
「あら、それは良いわね」
「うむ、サラ、手伝ってやれい」
「はいっ!」
両国のメイドさんたちが邸宅に散らばって備品の確認とか掃除とかをし始めた。
その間に村に行って挨拶してくるかな。
と、思ったらキンコンキンコンと鐘がなった。
ドアベルっぽいな。
玄関の大きな扉をあけてみると、村人さんたちが沢山居て、私の顔を見て、おーーと感嘆の声を上げた。
「聖女さまっ、この邸宅はいったい」
「ビアンカ様の別荘みたいですね、迷宮化が解けたので地上に出てきたみたいです」
「なんとも不思議な! この邸宅は聖女さまがお使いに?」
「はい、領邸代わりにしようと思っています」
「おお、これはこれは、そうですな、聖女様がホルボス山一帯の御領主となられたと聞き、村人一同、とても嬉しく思っております。これからよろしくお願いいたします、御領主さま」
村長さんが深々と頭を下げた。
「いえ、こちらこそ領主は初めてなので色々と教えてくださいね」
私は後ろにいたブリス先輩を前に出した。
「この方はブリスさまといって、代官をやってもらいます、元の代官さまは?」
「代官のゲードルさまは、年に一回、収穫祭の時に税の取り立てに来るだけですなあ。幾つも王国領を持っておられるお忙しいお方なので」
「ふむ、それは良くないな、あとで意見をしておこう。ブリス先輩、ゲードル氏には、のちほど王府にて紹介して引き継ぎをさせましょう」
「ありがとうございます、ジェラルドさま」
代官さんはホルボス村に常駐じゃないのか。
ジェラルドが来ていて良かったな。
「さっそく、帳簿などを見たいので村役場まで案内してくれませんか」
「それは良い、私もご一緒しよう。王国領の行政の現場がどうなのか勉強になる」
「ははー、あの、あなたさまは?」
「ああ、申し遅れた、私はジェラルド・マクナイトだ」
「ひいいいっ、宰相さまのご子息で!」
「そうだとも、よろしくお願いするよ村長」
まあ、後ろには王子とか皇子とか居るのだが、それは紹介しないでおこう。
ケビン王子が笑って口に人差し指を当てているしね。
「私もお手伝いしますよ、ジェラルドさま」
「うむ、コリンナくん、手伝ってくれたまえ」
なんだかアップルトン一の文官集団が出来てるような気がするのだが。
「じゃあ、お願いね、ブリス先輩、ジェラルド、コリンナちゃん」
「任せて下さい」
「うむ」
「行ってくるよ」
文官たちは村長に連れられて村の方に歩いて行った。
「さて、村に行きますか」
「そうだな」
「了解……」
「行きましょう、マコト」
みんなでぞろぞろと文官さんたちの後を追って歩いて村をめざす。
今日は良い天気だな。
あったかい。
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