第608話 空元気を出しても魔力は溜まらない
「よしっ!! 起きたっ!! 寝たら絶好調!!」
「嘘をつけ、声がかすれているぞ」
コリンナちゃん、そこは突っ込まない約束だ。
せっかく空元気を出して目覚めたというのに。
うっはあ、だるい。
だるいが朝はくる。
あの後ベットに潜り込んで夢も見ないで寝たのだが、だるいっ。
やっぱり魔力が満タンまで溜まるには三日はかかりそうだ。
「やっぱりホルボス山行きは中止にしろよ」
「そうはいかないよ、学者さんに悪いじゃん」
「もー、お前は人の事ばっかり。ジーン皇国の馬鹿皇子とか馬鹿王女とかも助ける事はなかったんだぜ。殺されてもマコトのせいじゃないじゃんか」
「まあ、そうだなあ、でも自分が頑張れば助けられるなら助けたいんだよ。後で後悔するの嫌じゃん」
コリンナちゃんはやれやれと肩をすくめた。
「とりあえず、船に魔力は残ってるんだな」
「まあ、ホルボス山往復ぐらいは、近いし」
「飛空艇の操縦はカロルかクレイトン様に替わってもらえ。お前はとりあえず体を休める、いいな」
「うん、ありがとう、コリンナちゃん」
コリンナちゃんはぶっきらぼうだけど優しくて好きだな。
ハシゴから下りるときに足がよれるな。
わりと腰にきている。
のろのろと服を着替え、用を足した。
ケトルを持ったダルシーが入ってくる。
コリンナちゃんと差し向かいでお茶を飲む。
美味い美味い。
「今日は午後からホルボス山へ視察だな」
「そうだね、向こうで一泊の予定よ」
「宿は村のを使うのか? 大丈夫か?」
「溢れたら、飛空艇の第三第四室ね」
第一第二は皇子と王女が、第五、第六は皇国メイドさんが使っているからな。
ホルボス村の宿も結構広そうだったから何とかなるでしょ。
「夕方に帰るのかと思ってた」
「一泊した方がのんびりと時間が取れるからね」
「そりゃそうだ、まあ、馬車で帰れる距離だしな」
「そうそう」
あー、早くホルボス山村で温泉に入りたい。
のんびりしたいぜ。
その前に甲蟲騎士たちをやっつけなきゃだけどなあ。
まったく、面倒な。
二人で階段を下りて、みんなと合流して食堂へ。
派閥はみんなホルボス山に来るみたいね。
操縦は任せてとカロルに力強く言われた。
朝ご飯を食べた後、学校へ。
土曜日は数学、地理、国語、魔術理論だね。
だるくても知力のパラメーターで乗り切るぜ。
前回休んだ国語の授業も、そんなには進んでなくて一安心。
今日は土曜日で半ドンなのでアンソニー先生のHRである。
中間テストも近いですから勉強をしっかりやりましょう、だそうだ。
来週は勉強会を本格的にやらねば。
ホルボス山で、ジャンヌお義姉様にお洒落組の勉強を見て貰うか。
可哀想かな?
鐘が鳴って、今週の授業は終わりだ。
「すごい顔色だな、キンボール」
「大丈夫かい、キンボールさん」
「平気」
というか、なんで王家主従は私に寄ってきやがる。
「あんたたちはホルボス山に付いてくるんだっけ?」
「え? ジェラルド、どうしよう、予定は?」
「土日の予定ですか、午後に御領地の代官が報告にきますが」
「うーん、どうするべきか。後日に延ばせないか?」
「報告ですからな、月曜でも大丈夫でしょう、ホルボス山に行きますか」
「そうだな、下賜した領地を見るのも勉強だね」
「というわけだ、キンボール」
「解った、ご飯を食べたら出発するから、寝間着とかは?」
「なに、一泊するのか、日帰りではなく」
「日帰りでも良いけど、行ったらすぐ馬車に乗らないと王都に帰れないぞ。橋も夜間は開いて無いし」
「うむむ」
ケビン王子はうむうむとうなずいた。
「ジャック、悪いんだが王宮に行って、泊まりの用意をマリオンにして貰ってくれ」
「かしこまりました」
王宮メイドのマリオンさんに用意をしてもらうのか。
「マリオンさんの頭痛の方は治った?」
「ああ、なんともなく元気に暮らしてるよ、あの時はありがとうね、キンボールさん」
「元気なら何よりだよ」
王家主従も一緒かあ。
「乗るところあるかしら」
隣の席からカロルが笑いかけて来た。
「まあ、ラウンジに居て貰えばいいんじゃない?」
「皇子と王女が同じ部屋に居て貰えればスイートが空くけど……」
「まあ、あそこで寝てるから駄目でしょうね」
休憩とかくつろぐのに使っているなら皇子と同室もありだろうけど、もうあそこで寝てるからね。
移動は抵抗あるでしょ。
「おー、マコト、お昼はどうする?」
B組勢がどやどやとやってきた。
どうしようかね、この所パンばかりだったから外食したいけどなあ。
「ひよこ堂にしましょうよ」
カロルがカーチス兄ちゃんに声をかけた。
「ここの所パンばっかりだなあ、外食しないか」
「カーチス、マコトが魔力切れで疲れてるから」
「あ、良いんだよ、私は気にしないで、元気だから」
「わりい、そうだな、ひよこ堂だな」
「いいっていいって」
ジェラルドが一歩踏み出してきた。
「わかった、中を取って上級貴族レストランへと行こうではないか。私がおごろう」
「いや、駄目だよジェラルド、おごるのは僕だ。今回も色々お世話になったからね」
おー、学内の上級レストランなら近くて良いな。
あと、王家主従のおごりというのも心が躍る。
「じゃあ、遠慮無く」
「もちろんだよ、キンボールさん、さあ、行こう」
ケビン王子は輝くような笑顔を私に向けた。
ゴチになりますっ。
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