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第605話 蜂、蜻蛉、蜻蛉

 無数の蜂の羽音が大ホール中にとどろき、貴族たちのつんざくような悲鳴や怒号が鳴り響く。

 遠く蜂の騎士は手を揺らめかして蜂を操っているようだ。


 蜂は、でかい。

 青色で金属で出来ているような感じ。

 ハンドバッグぐらいの大きさの馬鹿でかい蜂だ。

 皇子を狙って矢のように飛来して私の張ったドーム状の障壁にぶち当たり跳ね返っていく。

 土砂降りの時のトタン屋根みたいな音が響く。


「くそっ、何という事だ!」


 皇子が惨劇を見てうめき声を上げた。


 ヒルダさんが糸を振り回して蜂を叩き落としている、エルマーはアイスボールを大量に発射している。

 カーチス兄ちゃんとエルザさんは背中を合わせてホウズとリジンを振っている。


 王様とケビン王子とビビアンさまが駆けよって来たので障壁を拡張して中に入れた。


「助かる、聖女マコト」

「あ、ありがとう……」

「ありがとう、キンボールさん」

「お礼は早いわ、破られる」

「「「「えっ!」」」」


 巨大蜂が尻尾を持ち上げて、ガシンガシンと針を打ち込んでいる。

 そのたびに障壁にひびが入る。


「マコト、外に出る」

「アダベル、なんか出来るの?」

「凍らせる」


 そう言うとアダベルは口を尖らせて息をフウと吐いた。

 ブレスか!


「私もでましょう」


 ナーダンさんが剣を抜きながら言った。


「3、2、1、今っ!!」


 障壁を解いた。

 わっと蜂が群れをなして飛んでくる。

 アダベルとナーダンさんの後ろに障壁!


 少数入って来た蜂はケビン王子とディーマー皇子が叩き落とし踏み潰した。


 ナーダンさんが剣を振る。

 惚れ惚れするような美しい動きで、蜂が斬られていく。

 さすがは剣聖だなあ。


 アダベルが両手を広げて冷気を吐きだした。

 みるみるうちに蜂が凍えてボタボタと落ちていく。


「や、やったか!」

「まだ!」


 蜂は少なくなったが、たぶんこれは足止めだ。

 そう思った瞬間、ガチャーンとステンドグラスの上部を破って蜻蛉の甲蟲騎士が二人現れた。

 空中型!!


 私は障壁を解いた。

 VIPを守るように近衛騎士団員が人の壁を作った。


「カーチス、ホウズを!」

「おうよっ!」


 ホウズを空中で受け取る。

 すらりと抜いて鞘を投げ捨てる。


『ついに我の出番か!』

「女性の剣の動きをちょうだいっ」

『おうっ!』


 過去、ホウズを振るった二人の女性の動きが私の脳裏に伝わってきた。

 マリアさまの動きだと体が大きすぎる。

 ビアンカさまの動きだな。

 彼女の動きはちょっと大きいぐらいだ。


 蜻蛉騎士は槍を抱えるようにして高速でこちらへ飛んでくる。

 ホウズを構える。


 引きつけて、引きつけて、二なぎで両方を切り落とす。

 集中しろ、集中しろ。


 蜻蛉騎士が近づく。


『もう一拍、今じゃっ!』

「ホウズ! 光臨!!」


 ジャアアアッっと、ホウズの光の刀身が伸びて右の蜻蛉騎士の片足と羽を斬り飛ばした。

 血が飛び散る。

 剣を返して左の蜻蛉騎士を上から切り下ろす。


 バッシュ!!


 左蜻蛉騎士の片腕と羽を斬り飛ばした。

 悲鳴を上げながら蜻蛉騎士は飛び去り、大ホールの床に落ちて転がった。


 私は光の刃を戻した。


 ぐほう……。


 ま、魔力が残ってねえ……。


『うお、大丈夫であるか、少し戻す』


 ホウズの柄から少し魔力が戻ってきて、私は大きく息をついた。


「ありがと」

『魔力が少ない時に無理をしてはいかん』

「空を飛ぶ奴は想定外だったから、エッケザックスを持ってくるんだった」

『うむ、たしかにエッケの方が魔力が少なくてすんだな。だが良くやった』

「ありがとう、ホウズ」


 私はホウズを鞘に戻し、カーチス兄ちゃんに渡した。


「大丈夫か、マコト、顔色悪いぞ」

「大丈夫」


 蜂騎士の方はヒルダさんが行って拘束したみたいだ。

 ふううう。

 蜂がもう一人居たら危なかったな。

 アダベルの冷凍ブレスで大量に落とせて助かった。


 私は蜻蛉騎士の元に歩いた。


「クソっ!! 貴様はなぜジーンの皇太子に加勢するのだっ!!」

「お客さんだからだよ。『ハイヒール』」

「あ、な、な?」


 奴の腕と羽をくっつけてやった。


「どうしてそんな悪漢を手当するのーっ!!」

「聖女候補だからね」


 私はもう一人の蜻蛉騎士も治療した。


「蜂に刺された人は居ませんか、居たら治します」

「あ、あの、転んでくじいちゃったのだけれど」

「問題無いです『ヒール』」


 ちゃっちゃと怪我人を治していく。

 クソだるい。


 収納袋からマジックポーションを出してラッパ飲みした。

 あーすっぱい。


 蜂は皇子と王女を狙っただけで、あのゴツイ針に刺された人は居ないみたいね。

 良かった良かった。


「聖女さま……」


 あちこちで私を拝む人がおる。

 やめろー。


「よくやってくれた、聖女マコトよ!」


 王様がやってきて感極まったように私を抱きしめた。


「たいしたことじゃないですよ」

「そんな事はないぞっ」


 しかし、パーティはシラけちゃったね。

 これで終わりかな。


「聖女よ、ありがとう」

「すごいですわ、聖女さま」


 皇子と王女が寄って来て口々にお礼を言った。

 私はおっくうになってイヤイヤと手を振った。


「しかし、あれは聖剣ホウズか、やはりアップルトンにも聖剣があったのだな」

「アップルトンというより、大神殿だよ。総本山から持って来たって」

「何本あるのだ」

「三本、ジーン皇国にもあるの?」

「……ある、二本だ」


 聖剣は結構いっぱい有るな。


「お兄さま、今回のお礼に聖剣を聖女さまに奉納しては?」

「う、うーむ、そ、そうだなあ」

「いらんいらん、三本あれば十分」

「そ、そうかっ」


 ジーン皇国の紐付きの聖剣はいらんよ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] マコトそろそろ魔力枯渇でつみそう
[良い点] 蜂が予想以上に大きかったことに驚きましたが、 それ以上に空飛ぶ騎士ってのが驚きました!! 蜻蛉はそういえば虫ですもんね。 蜂がいるなら、蜻蛉もいますよね。 蝿だっているんだし・・・。 g・…
[良い点] ふーふーするアダベルちゃんすこ [一言] まあ助けちゃうよねえマコっちゃんは。仕方ないなあ。
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