第602話 ディーマー皇子歓迎レセプション会場へ
「カーチスとエルマーにプログラムを伝えないと、ダルシー二人はどこにいるか解る?」
王城の階段をタッタカ下りながら私はダルシーを呼んだ。
「……、お二人とも集会室前にいます」
「ありがとう」
あっち行ったりこっち行ったりだな。
スマホが欲しいぜ。
魔導って付ければええんやろ、魔導スマホ。
魔導ツイッタで、聖女ナウとか書いてバズりたいぞ。
まあ、魔導でスマホ的な物が出来るとしてもずいぶん後だろう。
趣も無いしな。
通用口からエントランスに出て、小走りで王宮門へ。
「聖女さま、学園へ行きますか」
「はい、すいませんね」
「いえいえ、問題はありませんよ」
門番さん良い人だなあ。
通用門を開けて貰って学園へと戻る。
「おおっ、マコトちゃん、マコトちゃん」
第二グラウンドで練習していたナッツ先輩が声を掛けてきた。
「はいはい?」
「わあ、聖女服だ、年末~~って感じ」
「本当だ、年末感」
「去年も講話を聞きにいったなあ、ありがたやありがたや」
甘々先輩に拝まれたよ。
「んもう、先輩方は」
「あはは、ごめんね」
「お仕事頑張って」
「今度飛空艇に乗せてね」
そう言って陽気な先輩方はラクロスの練習に戻っていった。
ほんとに、ほがらかな人達だなあ。
心がほっこりした。
さて、池のほとりを歩いて集会棟を目指す。
そろそろ夕暮れで空が暗くなってきたな。
集会室のドアを開けると、正装したカーチス兄ちゃんとエルザさん、そしてエルマーとヒルダさんがいた。
「わ、みんな集まってるね」
「おう、マコトも正装だな。レセプション開始は六時だったな」
「そうだよ、六時開場、七時から王様のご挨拶で開始だって」
「わかった、歩いて行くか」
「そうですわね、馬車は混みそうですわ」
ヒルダさんもバリッとドレスだな。
「ヒルダさんも来てくれるの?」
「はい、私は伯爵家の当主なので呼ばれました」
うん、ヒルダさんが会場に居ると安心だ。
「僕は……、どうする?」
「エルマーは蒼穹の覇者号に詰めても良いし、レセプション会場に居てもいいし」
「クレイトンさまは私をエスコートしていただけますか?」
ヒルダさんがしゃなりとポーズを取ってエルマーを誘った。
「……、そうだね……」
まあ、舞踏会じゃなくて、レセプションなんで個人で行ってもかまわないのだけれど、カップルの方が良いか。
「私が危機を察知しますので、魔法をおねがいしますわ」
「……おもしろい」
エルマーを固定砲台に使うのか。
それも良いな。
エルマーとヒルダさんが並ぶと美男美女で非常にゴージャスであるな。
いいねいいね。
「私は、カロルと一緒に飛空艇で行くから。コクピットにはカロルが詰めます」
「無難だな、とりあえず、敵が来たら、皇子と王女を逃がすのが優先だな」
「そう、相手が皇子と王女の命を取ったら奴らの勝ち、こちらは二人を守り切ったら勝ち」
「防衛戦は……、面倒……」
まったくだな、エルマー。
「あ、ホウズ、あんた甲蟲騎士の事しらない?」
カーチスの背中でぴょこんとホウズが鞘からちょっと抜けた。
『甲蟲騎士か、何体かは斬った事はあるが、詳しくはしらぬな』
「そうか、ありがとう」
カーチスがカチンとホウズを納剣した。
「なんだ、心配事か?」
サーチ。
カアアアアアン。
げ、まだ魔力蠅が部屋の隅にいやがる。
「いや、ちょっと不安で」
「そうか、だが、心配するな、お前の光魔法は無敵だし、俺たちも結構やる。死なない限りお前が治してくれるから、俺たちは思いっきり戦える。問題ない」
「カーチス……」
カーチス兄ちゃんの力強い慰めに、ちょっと胸が熱くなった。
そうか、私一人でひっかぶる事は無いな。
みんなにも頼ろう。
うん。
ドアがカチャリと空いて、カロルがやってきた。
「マコト、そろそろ行く?」
「あ、そうだね。それじゃ、みんな会場でね」
「はい」
「おう」
「あとで……」
私はみんなに手を振って集会室を後にした。
「具合はどう?」
「まあまあ回復したよ」
「無理しないのよ」
「わかってるよ」
「聖女服、素敵ね」
「あ、ありがと」
んもう、いきなり褒めるなよう。
照れちゃうし。
二人で連れ立って武道場下の倉庫の階段をたたたと下りる。
待合室のドアがシュッと開く。
格納庫に行き、船のタラップを駆け上がる。
船内の時計をチラリと見ると五時半、良い時間だね。
ラウンジに入ると、正装した皇子と王女が待ち構えていた。
「おお、来たか聖女よ、おお、正装をすると豪華だな、よいぞよいぞ」
「そっちの準備はどう?」
「問題ありませんわ、聖女さま」
「問題無い、挨拶の原稿も頭に入っている」
大丈夫かね、つっかえて笑われんなよ。
さて、王城まで飛ぼう。
と、思ったら、カロルに止められた。
「私が操縦するから、マコトは皇子さまたちを大人しくさせておいて」
「いいの?」
「大丈夫よ」
カロルはサブ操縦室に入り、メイン操縦席に座った。
いつもすまないねえ。
私はラウンジのソファーに座った。
「どうぞ」
皇国のメイドさんがお茶を入れてくれた。
「ありがとう」
お、なんだか美味しいお茶だ。
「どうだ、南洋の特級茶葉だ」
「おいしいね。ありがとう」
「そうだろうそうだろう」
なんか、嬉しそうだなディーマー皇子は。
ファンファンと上の方でプロペラが回る音がして、ふわりと浮遊感。
ガチャンガチャンと前方のゲートが開いていく。
そこをゆるゆると蒼穹の覇者号は移動していく。
さて、歓迎レセプションで何が出るかね。
私は美味しいお茶をカプリと飲み干した。
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