第601話 聖女服を着て学内をうろつく
さて、ダルシーに体を洗って貰い、つかり直した後、お風呂を出た。
下着をはいて、ドライヤーを掛けて、聖女服を着せてもらう。
うむ、聖女服を着るとなんか、とある感じの滅多に出てこないメインヒロインみたいであるな。
「あら、素敵、ちゃんとした服を着ると神々しい感じね」
「ありがとう、グレーテ王女、というか、これだとペタ靴が履けるからね」
「あ、ハイヒールだと素早く動けないからなのね」
「そういう事」
足下が不安定だといざというとき踏ん張れないからね。
「すぐ王城へ行きますの?」
「夕方かららしいからまだじゃ無いかな、六時頃に飛ぶ予定だよ」
「解りました、それまでに準備をしておきますわ」
ジェラルドにレセプションのプログラムを聴かないと。
舞踏会じゃないからダンスは無いよね。
皇子と王様のご挨拶が有って、立食パーティかな?
基本的に、皇子の顔見せの性格が強い行事だろう。
はたして甲蟲騎士は来るか?
警備が厳重になっている事は魔力蠅からの情報でわかっているだろう。
飛空艇をどこかから調達してくる可能性は無いだろうか……。
ないな。
そんなに飛空艇が余ってるとは思わないし、飛ばすだけでも馬鹿みたいにお金が吹っ飛ぶ、それに飛空艇があるなら覇軍の直線号を襲って撃墜するのが手っ取り早い。
まあ、考えていてもしょうがない。
グレーテ王女を地下道入り口まで送っていった。
「それでは、また後で、聖女様」
「皇子に準備をさせておいてね」
「はい、それはもう」
ふんわりと笑ってグレーテ王女とメイドさんは地下道に下りて行った。
「ダルシー、ジェラルドがどこにいるか解る?」
「……、現在ジェラルド様は王城の三階にいらっしゃいます」
レセプション会場か。
ちょっと遠いな。
私は階段を上って女子寮を出た。
そのまま歩いて図書館へ、階段を上って入り口に入る。
地下道を行っても良かったのだけど、王女に追いついても難なので地上を行ってみた。
貸し出しカウンターには相変わらずルカっちが居て、本を読んでいた。
「お、聖女服だ、年末年始にしか見ないから、なんだかカレンダーが狂う感じだな」
「歓迎レセプション用よ。ルカっち、甲蟲騎士の事が書かれた本は無い?」
「んーー、難問だねえっ」
本の整理をしていたヤツキノさんが振り返った。
「『世界の秘密騎士団』って本にいい加減な記事が有ったのを見たよ」
「それはそれは」
「それはそれは」
信憑性が無さそうな本だなあ。
だれだ、そんな本を書くやつは。
ヤツキノさんがささっと行って探し出して持って来てくれた。
「はいよ、聖女さン」
「ありがとう」
スツールに座って本を開く。
うんうんうん。
甲蟲騎士は甲胄蟲を体に装着して闘う騎士だそうだ。
甲胄蟲はダンジョンにいる蟲の一種で、それを秘法にて飼い慣らしたのがサイズ王国の甲胄騎士団らしい。
甲胄蟲は長命らしく、装着者が死んだら遺体を摂取してパワーアップするらしい。
金色と銀色は相当年月を重ねた個体らしい。
以上。
むむむ、新しい発見がほとんど無いな。
「がっかりした顔をするな、なにしろ、あいつらは秘密騎士団の代名詞のような物だしな」
「どんな種類の蟲騎士がいるか解るかと思ったのに」
「ん? 蟲騎士は一種だろう?」
私もそう思ってたんだけど、蠅がいるしなあ。
変種がいそうなんだけどな。
ちえ、無駄足だなあ。
サイズ王国があったのは、アップルトンから見るとジーン皇国をはさんでの反対側、魔国側だしね。
情報はなかなか入ってこないか。
「ありがとう、参考になったよ」
「うむ、また来なよ」
そう言うとルカっちは読書に戻った。
まったく本の虫だね。
とりあえず、王城へ行こうか。
なんだったらエイダさんに皇子達を持って来て貰ってもいいし。
そろそろ警備陣が集まる頃じゃないかな。
「そいじゃまたね」
「またなー」
「またね、聖女さン」
私は図書館を後にした。
ここから王城に行くには校舎をぐるっと回らなければならないね。
校舎内を行くと聖女服で目立つしなあ。
図書館脇の階段を下りて地上へと下りる。
集会棟の方へ歩いて、池を横目に見て、グラウンドまで出る。
役立たずの覇軍の直線号がドーンと第三グラウンドに乗っかっているね。
上部構造に作業員が入って修理してるようだ。
ははは、すまないねえ。
王宮門まで来た。
「あ、聖女さま、正装ですね。お通りになりますか?」
「はい、お願いします」
門番さんが通用口を開けてくれた。
なんだか、毎週のように王城に入るので大分慣れてしまったなあ。
エントランスを抜けて、通用口から王城へと入る。
ジェラルドは三階だな。
階段をえっちらおっちら上っていく。
三階に着いて、ぶらぶらと大ホールに近づくと、ジェラルドが執事たちに何か指示をしていた。
「やあ、キンボール、正装だな」
「まあね、準備はどう?」
「今の所は順調だ」
「歓迎レセプションのスケジュールが知りたいのだけれど」
「解った。会場は大ホールで、午後六時開場。午後七時に王のご挨拶、その後皇子の挨拶だ。その後立食パーティとなり。九時頃閉会となる」
「今は四時だから、五時半頃皇子を連れてくればいいかな?」
「そうだな、世話を掛けるが頼む」
三時間のパーティか。
結構長いな。
お、大ホールの横に料理が並べ始められているな。
メレーさんとクララが働いているな。
「おーい」
「マコトさん、わあ、正装ですね」
「あはは、なんか年末感でるなあ」
聖女服がサンタコスみたいな扱いなのがムカつく。
「チョコボンボンは間に合った?」
「ええ、なんとか、くたくたですよ」
「ヒールボンボンもなんとか納品したよ」
「薬液が少なくなってるので、また下さい」
「解ったよ」
二人の肩をポンポンと叩いてヒールを掛けてあげた。
「わあっ、疲れが抜けた」
「やっぱり凄いですねっ」
「じゃあ、頑張ってね」
「はい、助かりましたよ」
「マコト大好きっ」
二人はにっこりと笑った。
うんうん。
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