第590話 グレーテ王女を図書館に連れて行く
脱衣所でダルシーにブイーーンとドライヤーを掛けて貰っていると、グレーテ王女も上がって来てメイドさんにドライヤーを掛けて貰っていた。
「あら、ドライヤー買えたの?」
「はい、ドワーフさんに売ってもらえましたわ。これだけでもアップルトンに来た甲斐がありましてよ」
メイドさんが持ってるドライヤーは黒と金でゴツイタイプだな。
強そうな感じだ。
お土産になったらなにより。
「帰りには沢山買い込んであちこちに配りますわよ。おほほほ」
「王都全体でまだ品薄だからねえ、廉価版を買っていくと良いよ」
「廉価版ってどんなのですの?」
私は収納袋から羊皮紙製の廉価版を出して王女に見せた。
「まあ、これはこれで軽便ですわね、これは沢山売ってますの?」
「魔導印刷機で量産してるから実機よりは手に入りやすいわよ」
「お土産のランクを付けられますわね。素敵ですわ」
田舎のおばちゃんが海外旅行したみたいだな。
ああ、ジーン皇国なら国外旅行か。
外国即海外になるのは前世日本の特殊事情だ。
新しい制服に着替えてすっきりしゃっきりした。
「はあ、お風呂一つでも外国に来た感じがしますわ」
「普通に来れば王都を楽しめたのに」
「後悔先に立たずですわ。でも魔法学園の寮に入れたのは嬉しかったですわよ」
王女は皇族だから外国に来ても王城とか迎賓館住まいだろうからね。
学生寮に泊まったのは良い経験かもね。
っても、最上階のスイートなんか王城と変わらないけどね。
「やっぱり大きいお風呂はいいですわね。さあ、船にもどりましょうか」
「ええ、そうね。あ、図書館行ってみる? 私と一緒ならOKだから」
「まあ、良いんですのっ、聖女さま大好きですわっ」
グレーテ王女は華が咲いたように笑った。
こうしてみると、年相応の女の子なんだけどなあ。
やっぱ、ジーン皇国の宮廷がいかんのか。
私が王女を連れて地下大浴場から出ると、カロルとお洒落組もついてきた。
「一緒にまいりますわ」
「地下道で図書館に行った事がないので行きたいですわ」
「マコトに付き添い」
まあ、人数が居るほうが賑やかで良いけどね。
それからカロルは嫉妬ね、嫉妬。
うぇひひひ。
地下道への階段をみんなで下りる。
「ここは学園が出来た時に作ったんですの?」
「いや、前にビアンカさまの邸宅があって、その名残みたい」
「ああ、それで飛空艇の格納庫まで地下道が出てますのね」
たわいのないおしゃべりをしながら図書館方向へ進む。
地下秘蔵書庫の扉を開けると、きちんと整理された書庫群が整然とならんでいた。
学者さんたち頑張ったな。
「ここですの?」
「うんにゃ、ここは倉庫、図書館は上よ」
「へえ、こうなってますのね」
「女子寮から外に出ないで図書館にいけますわ」
お洒落組の二人はあんまり本を読まなそうだよねえ。
螺旋階段を上って図書館に入った。
「まあ、大きい図書館ですわね。素敵だわ」
「すごいですわー」
「服飾史のご本はどこにあるのでしょう」
「こっちよ、マリリン」
初図書館らしいお洒落組のお世話はまかせた、カロル。
「王都の観光案内とかはありませんかしら?」
「図書館の主に聞いて見よう、こっちよ」
私はグレーテ王女を二階の貸し出しカウンターに誘った。
「おう、マコトっち、そちらは?」
「ジーン皇国のグレーテ王女よ。しゃんとして」
ルカっちはいつも通りだらんと貸し出しカウンターで本を読んでいた。
で、VIPが来たと解って背筋を伸ばした。
「これはようこそグレーテ王女様」
「司書の方かしら、私、王都の観光案内をお借りしたいのだけれども」
「観光案内は地学の棚の二列目ですね」
「ありがとう」
指示された棚に行くと王都の各種観光案内が並んでいた。
へえ、こんな所にあったのか。
王都っ子だからあまり読んだ事がないけどね。
「あら、これは綺麗な図判がありますわね。素敵」
「本当だ、あと、観光地図とかないかな」
隣の棚に大きめの観光地図があった。
おお、名所百選地図だって。
グレーテ王女は観光案内を三冊と地図を借りていった。
図書カードは私のを使った。
「ありがとうございます」
カロルとお洒落組が本を沢山もってやってきた。
服飾史とか、着こなしの本とか。
ほんと、二人はお洒落好きよね。
「あら、ずいぶん借りたわね」
「良い本が一杯ですわ」
「これから図書カードを作りますの」
「そう、カロルは何を借りたの?」
「え、あ、その」
タイトルを見ると恋愛小説であった。
うふふ、そういうのも読むんだ。
「ちょっと前に流行った小説なのよ」
「小説も読むのね」
「よ、よむわよ~」
カロルってば錬金の専門書しか読まないかと思った。
意外な一面だなあ。
みんなの貸し出しを待って地下秘蔵書庫に下りた。
そこから地下道を通って格納庫まで王女を送っていった。
「今日は本当にありがとうございます。お兄さまと相談して行きたい所を決めますわ」
「できるだけ協力するから、王都滞在を楽しんでね」
「はい、うれしゅうございます」
蒼穹の覇者号へ入って行くグレーテ王女に手を振ってから、私たちは地下道に戻った。
「なんか可愛くなったわね、グレーテ王女」
「知り合うと軟化するタイプなんだろうね。蒼穹の覇者号を分捕ろうとした人とは思えない」
「あはは、本当ね。人は不思議だわ」
本当だね、知り合うと印象が変わる人がいるんだなあ。
勉強になったよ。
「マコトさま、私たちもこの地下道を使って図書館に時々行ってもよろしいかしら」
「近道感が半端ないですわ」
「うん、いいよ」
私はエイダさんブローチに声を掛けた。
「エイダさん、メリッサさんとマリリンさんの地下道通行を許可してあげて」
【了解です。というか派閥の皆さんは普通に通れますよ】
「さすが」
「うれしいですわエイダさん」
「ありがとうございますエイダさん」
【いえいえ、何でもありませんよ。メリッサさま、マリリンさま】
エイダさんも穏やかで良い人だな。
魔導頭脳だけど。
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