第589話 大浴場で意外な事実を聞く
グレーテ王女と共に脱衣所に入った。
ジーン皇国の人と裸のお付き合いをするとは思わなかったな。
ぱっぱと服を脱いで浴室に入った。
「こんにちわマコトさま」
「この時間だと思いましたわ」
「マコト、具合はどう?」
おー、お洒落部の子たちとカロルが入っていた。
嬉しいね。
「具合はまあまあ。船に魔力チャージはしなかったしね」
「無理しないのよ」
「ありがとう、大丈夫だよ」
ひさびさのカロルとのお風呂だなあ。
うひひひ。
「あら、こんにちは」
「あら、グレーテ王女さま」
「ごきげんよう」
「こんにちは」
グレーテ王女を見てみんなはいぶかしげな表情を浮かべた。
「広いお風呂に入りたかったらしいわよ」
「そうですわ、本当は聖女の湯に入りたかったのですが」
「まあ、王女さまも聖女の湯に夢中ですの?」
「一度入るとやみつきになりますわよね」
「そうですわね」
私はかけ湯をして湯船に入った。
くはあ、いいお湯だな。
グレーテ王女も入って来た。
「ジーン皇国ではサウナが中心と聞きましたけれども、本当ですか?」
「はい、サウナとジャグジーが中心ですわ。湯衣を着ますのでこのように裸でお湯に入るのは滅多にありませんの」
世界には色々なお風呂の風習があるんだなあ。
お風呂で衣を着てたら開放感ないじゃんか。
「だいぶ、王女さまと仲良くなったのね」
「まあね。護衛しないと戦争になるから仕方が無いよ」
「ふうん」
なんですかそのちょっとむっとした顔は。
焼き餅ですか、そうですか。
うししし。
ドアが開いて、ヒルダさんが入って来た。
いつもながら完璧な裸で凄いよなあ。
「領袖、いらっしゃいましたか」
彼女はかけ湯をして湯船に入ってきた。
「うん、ディーマー皇子たちと大神殿に参拝してきたよ」
「そうでしたか、こちらは諜報メイドと組んで甲蟲騎士を追っていました」
「どこに潜んでるとか解った?」
「下水道を使って学園まで来た事までは解りましたが、どこに潜伏しているかは不明ですね」
「下水かあ、王都の外まで通じてるって噂よね」
「そうですね、警備騎士が犬を使って追っていましたが、途中で痕跡を失ったようです」
下水道かあ、コリンナちゃんに聞いてみるかな。
「ごめんなさいね、聖女さん、巻き込んでしまって」
「それにしちゃ、最初は蒼穹の覇者号を鹵獲するとか、やりたい放題だったけど」
そう言うとグレーテ王女はコロコロと笑った。
「いえ、早急にアップルトンとの戦争状態に持ち込んで甲蟲騎士たちの追撃を外す計画でしたの。マコトさまに軽くいなされてしまってお兄さまも困っていましたわ」
「わざと喧嘩を売ってたのかーっ」
「ええ、アップルトンと戦争が始まれば皇国は内紛している場合ではなくなりますからね。当然、甲蟲騎士団への命令も解除されるだろうと。あと蒼穹の覇者号が欲しかったのは本音でしたのよ」
「酷い話だ」
「まさか光魔法で動く聖女様専用船とは思いませんでしたわ」
それこそ、本気でジーン皇国から逃げて来たのか。
「お兄さまは立太子したばかりなので、何か成果が欲しかったのですわよ。それこそ、聖女さまをジーン皇国に迎え入れれば大成果で皇帝の座が近づきましょうね」
「だ、だめよっ」
カロルがざばっとお湯を蹴立てて立ち上がった。
「マ、マコトはジーン皇国なんかに渡さないからっ」
がばっと、後ろからカロルが抱きついて来た。
うひゃあ。
「ええ、お兄さまはこっぴどく振られてましたわ」
「あ、そう……」
あ、カロルが離れた。
もっと密着していてもええんやで。
うえひひひっ。
「でも、女性の方に目を向けただけ良かったかもしれませんわね」
「あいつ、ホモなん?」
「ちがいますわ。その、ジーン皇国の宮廷では、誰が味方がわかりませんのよ。なのでお兄さまが気を許せるのは私だけですの。利害関係の無い外国の女性、というのは盲点でしたわね」
暗殺とか裏切りとかが横行してるのだなあ。
まったく、ジーン皇国はろくな国じゃないな。
皇子がひねくれる訳だ。
「それは、たいへんでございますわね」
「おさっしいたしますわ」
「ほほほ、ですから、お兄さまも私も、今は気持ちがとてものんびりしていますの。ありがたい事ですわ」
事情はわかった、だが、迷惑だからとっとと帰れ。
だな。
洗い場に出て、ダルシーに体を洗って貰う。
髪を洗ってもらって、ああ気持ちがいいなあ。
ねむっちゃいそう。
お隣にカロルが来た気配がした。
「ケビン王子に明日の歓迎レセプションの警備を頼まれたわ、カロルは飛空艇に詰めてくれるかしら」
「かまわないわ、甲蟲騎士は襲ってくるかしら」
「わからない、攻める気が無くなるぐらい騎士を王城にぎゅう詰めにするつもりだけどね」
反対側の洗い場にヒルダさんが座った。
シャーリーさんが洗い始める。
「派閥から護衛は出しますか?」
「カーチスとエルザさんを会場に入れるわ。他の子は危ないから待機ね」
「聖剣ホウズとリジンを準備ですね」
「そういうことよ」
ヒルダさんはうなずいた。
「週末のホルボス山は中止?」
カロルが聞いてきた。
「いえ、皇子と王女を積んで行くわ」
「甲蟲騎士が追いかけて来たら?」
「どこかに誘い出して、蒼穹の覇者号でバーン」
「それが手っ取り早いかもしれないわね」
早く皇子と王女を帰したいからなあ。
殲滅やむなしか。
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