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第588話 グレーテ王女とお風呂に行く

 ガチョンと飛空艇基地に到着である。


 ディスプレイを見ると、皇子どもはラウンジでお茶を飲んでいるな。

 王宮コックさんがケーキを出してあげたようだ。

 私はメイン操縦席で一人で操縦である。

 野次馬がいない方が操縦は楽だけどねえ。


 船長帽を椅子の頭に引っかけて床に下りる。


「エイダさん、メイン操縦室は封鎖してね」

【了解いたしました】


 さて、皇子と王女に挨拶をしてフリーになりますか。

 勉強の途中だったしね。


 とてとてとて。

 廊下を行き、階段を上り、ラウンジの扉を開けた。


「おお、聖女マコト、ご苦労だった。お前もお茶を飲むがいい」

「いらんよ。とりあえず地下で悪いけど滞在中はここに居てくれ。歓迎レセプションとか、晩餐会には直接送迎するから」

「そうか、ご苦労。王宮での襲撃はどう対処するのだ?」

「一応騎士達を沢山集めて数で対応する感じだね。発着場に蒼穹の覇者号を置いておいて危なくなったら空に逃れる感じだ」

「そうね、甲蟲騎士たちも空は飛べないみたいだし、安全だわ」

「色々と世話をかけるな、これをやろう」


 皇子がじゃらんとペンダントのような物をテーブルに置いた。


「私の魔導画像が入ったペンダントだ。肌身離さずつけておけ」

「いらねえ」

「高価なものだが感謝の印だ、遠慮せずに受け取れ」

「ちっ」


 いらねーよ、お前の現し身が入ったペンダントなんて。

 だが、話が進まないので取って収納袋に収めた。


「お兄さまはあなたに現し身を持っていて欲しいのよ」

「いや、それは、少しだ少し」


 頬を赤らめんな、中学生かお前は。


「やはり外に出てはいけませんの?」

「悪いが危ない。買い物中に襲撃されたら守れないし」

「せっかくのアップルトン王都なのに残念ね」

「テロリストを連れてくる奴が悪い」

「ふーむ、アップルトン国立美術館に行き、絵を見たいのだが、かなわぬか」

「絵が好きなの?」

「ああ、皇国一の画家に習っている」

「結構上手いのよ、お兄さま。私は音楽よ、ピアノをやってるわ」


 皇族は趣味がハイソでいいな。

 

「どうしても行きたい場所があるなら、ケビン王子に申請してみたら、警備をきちんとすれば行けなくはないだろうよ」

「そうだな、グレーテも行きたい場所を考えよ」

「そうね、お兄さま」


 まあ、蒼穹の覇者号と私が警備協力させられるだろうけどなあ。

 絵描き仲間としては気持ちは解るからな。

 趣味は大事だ。


「あと、週末にホルボス山の領地の視察に行くので飛空艇を使うんだ。一緒に来ても良いし、王都に居るなら王城の塔かどっか警備の良い場所に移ってくれ」

「行く」

「行くわ、ピクニックとか楽しそうね」


 やっぱ付いてくるか。

 甲蟲騎士が追ってきたら困るが、明日の歓迎レセプションしだいだな。

 場所が変わるのだから、いっそおびき出して一網打尽にするか?

 ホルボス山のテーブル上の台地にでも引き寄せてマジックミサイルでぶっ殺すか……。


「本が読みたかったら図書館まで地下通路が通じてるから、メイドさんでも行かせてくれ」

「あら、図書館に行けるの。行きたいわ」

「ディーマー皇子とグレーテ王女は外に出られると困るから禁止だ。エイダさんに扉を開けないように言っておく」

「ざんねんねえ」

「とりあえず、王都の地図と観光案内を借りてきてもらうか」

「そうね、お兄さま、一カ所か二カ所ぐらいしか行けないけれども楽しみましょう」


 ほんとにジーン皇国人ってのは図々しくていけないよなあ。

 まったくもう。


「そいじゃ、私は帰るよ、何かあったらエイダさんに言って呼んでくれ」

「わかった、色々と世話になるな、感謝している」


 なんだよ、馬鹿皇子のくせに、態度が軟化しおったな。

 聖女たらしこみ計画の第一歩か。


「地下道は女子寮まで通じてるのよね。お風呂を使いに行っては駄目?」

「うーん、避けて欲しいけどなあ」

「また聖女の湯に入りたいの」

「あれは月曜日と水曜日だけだよ。今日はただのお風呂だ」

「あら、残念ね、でも、広いお風呂に入りたいわ、シャワーだけじゃ疲れが取れないのよ」

「我も入りたいが」

「皇子はだめだ、男子寮に地下道が通ってないし」

「ぐぬぬ」


 地上に出ると蠅がいるからな。

 感知されて攻めてこられても困る。


「私はこれからお風呂に行くけど、一緒に行くならいいわ」

「あら、それは嬉しいわ、ありがとう聖女マコト」


 グレーテ王女は顔をほころばせた。

 なんだか態度が軟化してんなあ。

 呼び方も聖女候補から聖女マコトになってやがるし。


 私はグレーテ王女を連れてラウンジを出た。

 王女のメイドさんも一緒だな。


 船のタラップを下りて、地下道を行く。

 足音がカツンカツンと響く。


「テロリストのお陰で窮屈だけど、滅多に入れないような場所に入れて悪い事ばかりではないわね」

「こっちは悪い事ばかりだよ」

「聖女マコトもジーン皇国に遊びに来れば良いわ、今回のお返しに大歓待するわよ。冬は辛い地方だけれども、夏は綺麗な場所や楽しい行事が一杯なのよ」

「まあ、考えておくよ」

「国のトップが仲良く親睦していれば戦争も起こりにくいから、とても良い事よ」

「なんで皇国はひっきりなしに戦争するかな」

「うーん、国が大きいから、ある程度戦争をしないと国内がまとまらないのよ。戦争が起こってない時は内紛が起こってるわ」

「迷惑な国だなあ」

「アップルトンぐらいが国として丁度良い大きさね。歴史もあるし、南だから食糧も豊かだわ」

「そうかもしれないね」


 アップルトンはわりと広くも狭くも無い中ぐらいの国で結構豊かなんだよな。

 歴史もあるし。

 ジーン皇国は偽ドイツだから大きいけれどもその分火種も多いんだ。

 まったく政治は面倒臭い。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 王政の限度やねえ
[気になる点] 最初の聖女襲撃からの態度の軟化が怪しい ひょっとして全部策謀? 来るタイミングが一番怪しい。 [一言] こんなペンダントさっさと処分しないと面倒な事になるよね。 寧ろ目の前に処分す…
[気になる点] ふと思ったのですが、皇子と最初に会った時に言っていた破門の話はどうなったのでしょうか?
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