表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

588/1517

第583話 馬鹿兄妹を連れて大神殿へ参拝へ向かう

 蒼穹の覇者号がふわりと発着場に着陸した。

 ウイーンと胴体のハッチが開きタラップになった。


「じゃあ、皇子どもを参拝に連れて行くから、またね」

「まて、キンボール、我々も行こう」

「そうだね、マーラーさんに聞いた昨日の状況だと一緒にすると危ないよ」


 むう、ヒルダさんは全部しゃべったのか。

 まあ、一応、話は通しておかないと後で困るか。


「しょうが無い、一緒にいこう」

「これ以上の暴力沙汰はまずい」

「話を聞いて痛快だったけど、あまり良くないよね」


 別に好きで皇子をひっぱたいた訳ではないよ。

 さすがに人死にが出ているのに、軽くすんだみたいな事を言われたからさ。


 私たちは船内に乗り込んだ。

 足早にラウンジまで上がる。


「よし、来たか聖女候補、やはりこの船の乗り心地はいいな」


 皇子は皇帝のようにソファーにふんぞり返って私たちを迎えた。


「ケビン王子と文官も来たか、では我と一緒に大神殿に参拝する栄誉を与えようではないか」


 そう言うと皇子はワインをくいっと飲んだ。


 挨拶を始めた王家主従をほっといて私はミニキッチンの方に行った。

 コックさんが三人、調理器具を確認していた。


「どうですか、なんとかなります?」

「あ、これは聖女さま、こんにちは。少々型が古いですが、とても良い設備ですね」

「それは良かったです」


 女子寮食堂から食事を運ぶ手もあったけど、奴らにイルダさんの料理は勿体ない。


「食器などはどうしますか、こちらの物を使っても?」

「申し訳ありませんが、それは飛空艇に備え付けの物なので、王宮の物を使っていただけますか?」


 馬鹿兄妹に飛空艇什器を使わせる気は毛頭ないのだ。

 ワイングラスや茶器も使うなと言いたいぐらいだ。


「かしこまりました」

「ごめんなさいね、備え付けの物は文化財クラスの物なので」


 ビアンカさまの什器の水準が高すぎて普段使い出来ないんだよね。

 派閥のみんなとかが船でお茶を飲むときは市販の安い奴を使ってるぐらいだ。

 


「参拝の帰りに王城によりますか?」

「ええ、ケビン王子を降ろさないといけないので」

「では、我々は下りて、食材や食器をまとめておきましょう」

「よろしくおねがいいたします」

「いえいえ」


 王宮コックさんは良い人みたいだね。

 外交班の人なのかな。

 味を見てみたいが、皇子たちと一緒に食べるのは勘弁だな。


 コックさん達の下船を見送っているとグレーテ王女が寄ってきおった。


「はあ、素晴らしい船ね。内装や家具も超一流だわ」

「作った人が馬鹿だったんでね」

「悪の聖女のビアンカね。よほど稼いでいたのね」

「光の回復魔法はめちゃくちゃだからね、蘇生も出来たっていうから死ぬほど儲かったんでしょ」

「あんたは蘇生できないの?」

「ぜんぜん、光魔法は中級までしか使えないよ」

「まあ、さぼっているのね、英雄の属性なのに」

「私なんかまだまだだよ」


 ビアンカさまは回復系と予知とか凄いからな。

 マリアさまは攻撃魔法がすごいし。

 あ、飛空艇が手に入ったから、総本山へマリアさまの秘本を読みにいこうかな。

 上級魔法や、奥義の本が残ってるって噂だしね。

 ゴールデンウイークに行けないかな?

 ちょっと計画しとこうか。

 まあ、夏休みでも良いんだけどね。


 ラウンジでは、皇子とケビン王子が和やかに談笑していた。

 さすがは王子、アレと和やかに会話出来るのがすげえ。


「さて、大神殿にいくよ」

「うむ、やってくれ」


 まったく偉そうだなディーマー皇子は。


 私はサブ操縦席のドアを開けた。


「エイダさん、サブ操縦室、メイン操縦席を使います」

【了解、コントロールをつなぎます】

「ほう、ここからでも操縦できるのか」


 おい、皇子、なんで勝手にサブ操縦席に座ってやがる。

 まったく傍若無人だな。


 私は子狐丸を抜いて穴に差した。


【子狐丸確認、魔力のチャージはどうしますか?】


 私は魔力ゲージを見た。

 四分の一ぐらいはあるな。


「今回は無しで」

【了解しました】


「この船……、魔石で動いているのではないのか?」

「光魔法を溜めて飛んでるんだよ。ジーン皇国に持っていっても、私が居ないと動かないぞ」

「なんという……。き、貴様、この船は燃費が只なのか!!」

「そうだよ、私が動力だからね」

「これは……、お前ごとジーン皇国につれて行かねばならないな。どうだ、侯爵位と広大な領地を用意する、ジーン皇国に来い」

「えっへん、こまりますね、ディーマー皇子。そう堂々と聖女マコトをスカウトされては」

「いいではないかケビン、だいたいがアップルトンばかり三代続いて聖女が現れるのが不公平なのだ。他の国も今度こそはと大望しているというのに、ずるいぞ、何か秘法でもあるのか?」

「ありませんね、女神様の思し召しでしょう」


 しかし、なんでアップルトンにばかり聖女が出るのかね?

 考えて見ると不思議だな。

 なんだろうか。

 だいたいゲームの状況がこの世界に反映されているのもおかしいし、乙女ゲームそのまんまの清潔中世だ、自然にこうなったとは考えにくい。

 女神さんがなんかしてるのかね。

 無限に広がる平行宇宙の中でたまたま、乙女ゲームと酷似した世界が現れたのか。

 うーんわからん。


 まあ、いいや。

 私は黄色の伝声管の蓋を開けた。


「こちら蒼穹の覇者号、コールサイン547498、王宮管制室応答ねがいます」

【こちらは王宮管制室、コールサイン335685、離陸しますか?】

「はい、ディーマー皇子とグレーテ王女を連れて大神殿で参拝、教皇様とご挨拶後にまた王宮に立ち寄ります」

【了解しました。よいフライトを】

「ありがとう」


 私は伝声管の蓋を閉めた。

 こら、ディーマー皇子、勝手にサブ操縦席の伝声管をいじるなよ。


「む、これが通信機か、覇軍の直線号と同じだな。通信できないのか?」

「そっちの席は操縦権どころか起動もしてないからな」

「我にも操縦させよ!」

「ざけんなっ」


 子供か、おまえはっ。

よろしかったら、ブックマークとか、感想とか、レビューとかをいただけたら嬉しいです。

また、下の[☆☆☆☆☆]で評価していただくと励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] この章皇子出てくる所を読むだけでも滅茶苦茶キツイな… 今までのを帳消しにするぐらい馬鹿なキャラはなかなか居ないぞ
[一言] ジーン皇国に聖女現れないのはきっとあちらに清らかな心をしていないからでしょうw
[良い点] バカ皇子がどこまでもバカな回でしたね。 こんなやつ、担ぎやすいだろうなぁ・・・。 軽い神輿ほどいいってね。なんて言い過ぎですかね(笑 王宮コックさんたちがいい人でよかったです。 まぁ、アッ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ