第581話 午後は王宮に呼ばれる
皆でお茶を飲みながらおしゃべりをしていたら、そろそろ午後の授業の時間だな。
「マコトはどうするの?」
「特に予定は無いなあ、あ、カロル、今日のノートを見せて、授業を押さえておかないと」
「良いわよ、じゃあ、後でね」
カロルがノートを三冊出して集会室を出ていった。
みなも私に挨拶をした後に出て行く。
わりかし寂しいなあ。
ま、良いか、勉強しよう。
カロルの字は綺麗だな。
やっぱり植物紙のノートはめくりやすい。
やっぱり私も買おうかな。
今日の時間割は、国語、社会、魔物学、美術か。
美術のノートは無いな。
とりあえず、ノートを羊皮紙に書き写そう。
カリカリカリカリ。
ドアがノックされた。
「はあい」
「あ、こんな所にいた、探してしまったよ、キンボールさん」
「王様がお呼びだ、王宮に来い」
入って来たのは王家主従であった。
「ん、なんの用かな」
「明日、ジーン皇国皇太子と第一王女の歓迎パーティがある。警備協力が欲しいとの事だ」
「ああ、そうか、王城が抜かれるかもだからか」
「そうそう、キンボールさんの感知力は凄いから警備計画に参加してほしいって言ってたよ」
「計画しても漏れるとなあ……、あれ?」
なんか引っかかった。
カーチス兄ちゃんはなんか凄い風の魔法で音声を拾う長耳さんで学園一帯を諜報してるよな。
ヴィクターは猫の使い魔とかで諜報してるな……。
甲蟲騎士団にも魔法で諜報してる奴がいるんじゃないか?
トンボ、ハチ……、いや蠅か!
サーチ!
魔力をまとった虫。
カアアアアアン!
ヒット!
この部屋の西の方の壁にいる!
ちくしょう、これで情報を得てやがったか。
脳筋昆虫軍団かと思ったら搦め手キャラもいるのか。
「どうした?」
「いや、なんでも」
蠅に気がついたと奴らに解ったら上手くない。
なんとか、監視蠅が居ない場所に行ってから対処方法を相談しなくては。
「じゃあ、王宮に行こう」
私は立ち上がり、教科書とカロルのノートを収納袋にしまった。
「いつもすまないね、キンボールさん」
「夜中の顛末はマーラー嬢から聞いた。良くやってくれたな」
「よせやい」
ジェラルドの癖に褒めるんじゃないよ。
雨が降るぞよ。
三人で連れ立って集会室を出て施錠をする。
サーチ。
カアアアアン!
部屋の蠅は来てない。
が、外にも何匹かいるな。
蠅は不自然じゃ無い場所だと目立たないから良いな。
今、蠅はちょっと離れている。
「エイダさん、格納庫って虫は入ってくる?」
【虫除け結界を張っていますから、入ってきませんよ】
「了解」
よし、地下道、格納庫はクリアだな。
王宮内はどうかな?
三人でぶらぶらと王宮に向けて歩く。
サーチ。
カアアアン!
……。
ふむ、蠅めは結構いるな。
魔力がある蠅は普通じゃ無いから諜報だろうな。
視界情報と音声なのか、音声だけか?
広範囲に探索できるな。
便利な奴め。
「どうした、キンボール、上の空だな」
「まだキツイの? キンボールさん」
「いや、大丈夫、なに?」
「皇子の面倒を見てもらって悪いなって、また領地いる?」
「領地はお小遣いじゃないんだから、ほいほいやってはいかんよ」
「そうですぞ王子、次は 陞爵ですぞ」
「いらんっ」
王宮門をくぐり、王城までのエントランスを歩く。
「歓迎パーティは昼、夜?」
「夜だね。アップルトンの貴族が集まるよ」
「新入生歓迎ダンスパーティに来て、まだ帰ってない貴族たちだけどな」
「なるほど、それはお得だね」
王城の勝手口から入った。
サーチ!
カアアアアアン!
お、居なくなった。
王宮にも虫除け結界があるのかな?
「ふう」
「どうした?」
「甲蟲騎士に虫を飛ばして諜報する奴がいるっぽい」
「「なに!」」
「魔力を帯びた蠅だから、割と目立たないよ」
「本当か、皇子と王女の居場所が知れたのはそのせいか」
「たぶんね、内通者もいるかもだけどね」
私たちは階段を上がって行く。
二階に入った。
サーチ!
カアアアン!
よし、二階にも蠅はいない。
さらに階段を上がる。
魔導エレベーターは無いのかこの王宮は。
はあはあ。
三階。
カアアアアン!
む、遠くの部屋に一匹いるな。
どこかから結界のほころびから入ったか?
後でメイドさんを送ろう。
四階。
カアアアン!
よし、四階はいない。
私たちは王様の執務室に入った。
「おお、良く来てくれたね、マコト嬢、昨日の顛末はマーラー嬢に聞いたぞ、よくやってくれた、褒美として何か欲しい物は無いかね」
「行きがかり上でやった事ですから、別になにも」
「まったく寡欲よの、それでは申し訳無くて協力を頼めないではないか」
「ではこれで」
「嘘じゃ嘘じゃ、頼むから、皇太子の歓迎パーティの警備に手を貸してくれい」
王様は私を拝み倒した。
んもうー。
「というか、蒼穹の覇者号をテラスに置いておいて、襲撃があったら皇子と皇女を空に逃がしてほしい」
「ああ、それは安全かな」
しかし、甲蟲騎士どもはフィジカルが凄いから、階段を封鎖しても壁を登って入って来そうだな。
「歓迎パーティは中央ホールでですか?」
「そう考えているが」
「ちょっと嫌ですが、飛空艇発着場でガーデンパーティをしたらどうです? 蒼穹の覇者号を真ん中において」
「ああ、それもいいな」
「だが、中央ホールと発着場は隣だ、離しておいた方が良くないか」
「ああ、そうかー、同じか」
とりあえず、城内の図面を見ながら、いろいろとアイデアを出した。
「テラスに飛空艇を置けば良いだろう。あとはヒールボンボンを十箱たのむよ」
「もう無いんですか」
「いや、その新入生歓迎パーティが終わったら、みなパクパク食べてなあ」
「了解しました、あとで女子寮食堂に伝えておきますね」
「たのんだぞ、あと、洋酒ボンボンも千個ほど頼むぞ」
「うえー、明日までにですか?」
ジェラルドが深くうなずいた。
「ボンボンは目新しいからな、皇子や王女もびっくりするだろう」
「まあ、そうだなあ」
メレーさんがまた徹夜だぞ。
よろしかったら、ブックマークとか、感想とか、レビューとかをいただけたら嬉しいです。
また、下の[☆☆☆☆☆]で評価していただくと励みになります。




