第579話 ちょっと回復したのでみんなでお昼ご飯
なんか外が騒がしいので目を覚ました。
時計を見るともうすぐお昼だな。
寝たら大分、体調は良くなった。
カロルの差し入れのマジックポーションと栄養剤をクピリと飲む。
マジックポーションといってもMPを無条件に回復する物じゃ無いのだな。
だいたいゲージとか数値とか解らないしね。
魔力を作る器官に作用してMPの回復力を増やしている薬らしい。
栄養剤は甘草みたいな味がした。
ハシゴを下りて窓から外を見ると、女子寮の前で、ナーダンさんとリンダさんが木剣で闘っておった。
なにしてんだろうか?
私が知ってる最強の剣士はリンダさんなんだけど、ナーダンさんはさらに強いっぽい。
リンダさんがいなされておるぞ。
よく昨日は勝てたなあ。
ゾンビ戦法なら剣術の常識を越えて攻撃できるからかね。
動きが速すぎ、そして技量が高すぎで何をやってるかいまいちわからないなあ。
すげえや。
くううっと伸びをした。
まあ、昨日の朝ぐらいまでは回復したかな。
制服に着替えていると、コリンナちゃんとカロルがやってきた。
「お、起きてるな」
「うん、顔色もいいわね、良かった」
「ありがとう、ごめんね心配かけて」
「まあ、マコトが悪い訳じゃないからな」
「ディーマー皇子が酷いわね」
「本当に、早く帰ってくれないかなあ」
カロルが苦い顔をした。
「魔石が高騰していて、買い付けが難航してるらしいわ。いい気味だけど困ったわね」
「火と風の魔石が三倍ぐらいに値上がりしてて、みんな困ってるぜ」
「そんなに!」
「王家も買い付けしたらしいから、みんな盛りあがってるらしいわ」
そりゃ相場もあがるよなあ。
「そろそろ利益確保で売ろうかしら、長く続く相場じゃないだろうし」
「もうちょっとは続きそうだけどな」
「コリンナも買い付ければ良かったのに」
「私は相場とかしないよ」
「堅実よね」
さて、着替え終わったので行こうかな。
「みんなは?」
「女子寮の前よ。クララのパンワゴンが出てるし」
「ああ、じゃあ、パンワゴンで買って集会室で食べようか」
「良いわね」
三人で部屋を出て施錠する。
階段から見る今日の空は良く晴れて暖かそうだね。
女子寮を出ると派閥のみんながわっと寄って来た。
「もう大丈夫ですの、マコト様」
「うん、大丈夫大丈夫」
「心配しましたわー」
「顔色は良いみたいだな」
「元気になってなによりだみょん」
「心配掛けてごめんねえ」
「今週は事件が起こりすぎですからね、無理もありません」
カーチス兄ちゃんとエルマーがやってきた。
「おお、治ったみたいだな」
「元気出たか……」
「魔力切れで病気じゃないからね。休めば回復するよ」
「無理すんなよ」
リンダさんがドドドとやってきた。
「マコトさま、大丈夫でしたか!」
「もう回復したよ」
「まったくディーマー皇子は困りものですな。たたき切りますか?」
「これこれ、リンダ師、そのような事は言わんでくだされ。聖女さま、こんにちわ」
「ナーダンさんはどうしたのですか?」
「食糧を取りにいくメイドに付き合って外に出たらリンダ師と出会いましてな」
「久しぶりなので稽古を付けてもらったのです」
「お知り合いだったんですか?」
「大陸の強い奴はだいたい知り合いですよ」
剣豪つながりかあ。
「……、えと、失礼ですがナーダン師ではありませんか」
「はい、そうですよ」
カーチス兄ちゃんが顔を輝かせた。
「一手ご指導くださいっ、あなたは俺の目標なんです」
「これはこれは、しばらくこちらに居るので、時間があったらよろしいですよ」
「わ、私もっ!!」
「わっしもみょんよ!!」
ナーダン師は剣術部に大人気だなあ。
もみくちゃにされておる。
温厚で良いおっちゃんだからな。
アダベルは居ないが、孤児院に行ったかな。
クロはちゃんと帰ったのだろうか。
心配だな。
んで、当然のように王家主従もいる。
「ふむ、元気そうだな、キンボール」
「ああ、まあね」
「ディーマー皇子の事をまかせっきりですまないね、キンボールさん」
「王家で警備もしろよなあ」
「すまない、当初は王宮に泊めるつもりだったのだが、彼らのたっての希望でね」
「あいつら、襲撃を予想してたぞ……」
「やはりか……」
「王宮の警備を抜けて暗殺をされていたら大変な事になるところだった。本当にありがとう、キンボールさん」
甲蟲騎士が全員で攻めてきたら王宮でも抜けてた気がするな。
金色だとハゲも負けそうだし。
リックさん、ジャックさんが居るけど彼らは王子の護衛なわけだから、皇子側には手をさけなかったろうしね。
「あと、どっかから情報がジーン皇国に漏れてるね」
「そうですわね、確実に皇子と皇女の居場所を掴んでましたわ」
ヒルダさんが話に入ってきた。
「王女を狙ってきた。皇子の方はナーダンさんが居るから、王女を捕らえて人質にする計画だったんだろうね」
玄関を抜いたら一気にスイートまで駆け上がっていたしね。
「そうだな、彼らの宿泊場所を詳しく知っている人間から漏れているな。これは洗い出さないと」
「今は彼らは蒼穹の覇者号かい?」
「ああ、あそこにぶち込んでおけば、誰も入れないしね」
「正直助かる。早めに行事を終えて帰って貰いたいものだね」
「王家の買い付けた魔石を与えて、覇軍の直線号を起動させてそちらに移ってもらうべきですかな」
「やめとけ、グラウンドに停泊している飛空艇だと抜かれる。かといって空中にいられるほど燃費が良くない」
「そうか、だったら申し訳無いが、しばらく蒼穹の覇者号へ置いておいてもらえるか」
「迷惑だなあ、早く行事を済ませて帰ってもらえよ」
「それが、訪問が早まったせいで準備がな」
「早く来やがったのかあいつら」
「二週間ほど早く来た。準備におおわらわだ」
「くっそ迷惑な」
「キンボールさん、早くパンを買わないと売りきれるよ」
「わっ!」
ケビン王子の指摘で私はクララのワゴンに駈け寄った。
あんま残ってないなあ。
「聖女マリアパンをください」
「そんだけでいいの?」
「あんま食欲が無いんだよ」
「聖女さまも大変ね。クッキーをオマケにつけてあげるよ」
「わ、クララありがとうっ」
クッキーと、聖女マリアパンと、レモンスカッシュを買って私はワゴンを離れた。
みんなはもう買ってたみたいね。
さあ、集会室で食べよう。
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