第578話 木曜日は寝こける
螺旋階段で二層目に下りる。
あー、なんかふらふらすんな。
「マコトさま、おぶりましょうか」
ダルシーが背中を見せてヘイカモンという感じだが、半裸のメイドに負ぶさるのはちょっとセンシティブ的にどうよ。
帝国のメイドさんがシャワー室に入ってる。
お!
そうだそうだ。
「ダルシー、アメニティの在庫を全部持って来て、やつらに使われるとムカつく」
「はいっ!」
ダルシーはシャワー室に入って飛空艇アメニティを運んで来た。
私はそれを収納袋に入れる。
このアメニティはもの凄く高いらしいからね。
「あ、あのアメニティはどうしたら良いでしょうか」
帝国メイドさんがおずおずと聞いて来た。
「覇軍の直線号から持ってきなさい、そこまでは面倒みきれないわ、皇子や皇女の食糧もね」
「は、はい、おそれいります」
メイドさんはペコペコと頭を下げた。
「エイダさん、執事さんとメイドさんが外に出たいときは通してあげて、皇子と皇女は通しちゃ駄目よ」
【了解いたしました】
皇子と王女を外に出すと甲蟲騎士が攻めてくるからな。
ここなら安心でしょう。
私たちは蒼穹の覇者号を下りた。
なんだかヒルダさんが凄くニマニマしていた。
「なんでニコニコしてますか」
「領袖のオフレコ伝説を目撃できて嬉しいのです。皇子に平手打ち、ジーン皇国最強の剣聖をダルシーと組んで沈めた手腕、良い物を見ましたよ」
「そうですか」
眠いので適当に暴れただけですよ。
ふわああ。
廊下を歩いているとダルシーが消えた。
替えのメイド服はあるのかな。
というか、新しいのを買ってあげたいなあ。
今度一緒にメイド服を見に行くか。
ダルシーは忠臣だから報いてあげないとね。
カツーンカツーンと私とヒルダさんの足音だけが地下通路に響く。
階段を上がり、女子寮にはいる。
「一緒にエレベーターに乗っていきませんか」
「二階だから」
「まあまあ」
ヒルダさんにエレベーターに引っ張り込まれた。
チン。
二階で下りる。
「では、また明日に」
「はい、おやすみなさい」
「おやすみなさいませ」
ヒルダさんはエレベーターで行ってしまった。
205号室にたどり着く。
あー、眠い、だるい。
ドアを開けて、ハシゴを登りベットに潜り込む。
おやすみなさい~~。
すやぁ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
カーテンが引かれた。
あー、もう朝かあ、だるいー。
ハシゴから顔を出したのは制服を着込んだコリンナちゃんであった。
「おはよー」
「ちょっとよれ」
「ん?」
コリンナちゃんは下から板を出して私のベットに設置した。
くんくん、あ、なんか良い匂いがする。
メイド服を着たダルシーが板の上に、ポリッジとサラダとお茶を置いてくれた。
「あ、ありがとう」
「起きてこないから食堂からデリバリーしてやった。食べたら寝てろ」
「え、授業が」
「寝てろ、今日は聖女候補の営業はお休みだ」
「ん、ありがとう」
起きられなかったのか、疲れが溜まっていたっぽい。
あと魔力の使いすぎ。
授業はさぼるか。
カロルがぴょこっと顔を出した。
そして、マジックポーションとなんかのポーションを私の足下に置いた。
「ヒルダさんに話は聞いたわ、がんばったわね。これ栄養剤だから飲んでね」
「ありがとう、うれしい」
私が笑うとつられるようにカロルも微笑んだ。
「わたしらは登校するから、せめて昼まで寝てろ。王家への事情説明はヒルダさんがやってくれるそうだ。元気が回復したらお昼はみんなで食べよう」
「ありがとう、コリンナちゃん、カロル、ダルシー」
「マコトは頑張りすぎよ。週末はホルボス山だけど、延期した方がいいかもね」
「だ、大丈夫、休めば」
「うん、早く元気になってね、マコトが居ないとつまらないわ」
「まったくだ」
ああ、みんなの気遣いが嬉しいな。
二人は手を振って行ってしまった。
ベットでポリッジを食べる。
あー、甘くてふんわりと美味しい。
ベットでの食事って憧れてたんだ。
メイドさんが居ないと出来ない贅沢よね。
ポリッジとサラダを食べてお茶を飲み干す。
具合は、悪い。
魔力切れすれすれだったのでもの凄いけだるい。
魔力は使い果たせば上限が上がる、とか、そいういう単純な物ではないからなあ。
どうも成長につれて量が増えるようだ。
魔法が上手くなれば省エネできるようなるらしい。
無詠唱とか、距離をとって掛けるとヒールでもずいぶん魔力を使う。
まあ、飛空艇とかにごっそり取られるのに比べると誤差ぐらいの差だけどね。
ダルシーが食器とサイドテーブルを片付けてくれる。
「ありがとうね、ダルシー」
「いえいえ、なんでもございません」
「昨日は頑張ってくれてありがとう、お礼じゃ無いけど、新しいメイド服を土曜日に買いに行きましょう」
「あ、ありがとうございます」
ダルシーは赤くなった。
嬉しそうだな。
うんうん。
ふう、少し食べたら眠くなってきた。
「少し寝るわ、リンダさんが来ても通さないでね」
「かしこまりました、命にかえても」
リンダさんと話すと疲れるからなあ。
もうちょっと元気になってからね。
私は毛布を被って横になった。
すやあ。
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