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第574話 ムカつくけど馬鹿皇太子を助け出す

 蒼穹の覇者号が男子寮の東側に近づくとベランダに皇子めが出ていて、偉そうに手を広げた。

 なんだか金髪の傲慢そうなイケメンだな。

 ドS系俺様ヒーローな感じだな。

 やだやだ。


「お兄さまっ!!」

「グレーテ、無事かっ!!」

「お兄さまも早くっ!!」

「よしっ、行くぞ!!」


 皇子と護衛と執事どもがぽんぽんと甲板に跳び降りてきた。


「聖女候補よ、ごくろうであった」

「ごくろうじゃねえよっ、おまえ、下で生徒が闘ってるって解ってんのか?」

「うむ、アップルトン人民もごくろうであるっ」


 殴ってやろうかなあ。


『やめろ』


 くそう、猫にいさめられるのは屈辱。


「とりあえずこれで全部ね、王女の護衛は?」

「た、倒されたわ、自分が逃げるのが必死で……」

「うむ、護衛とは主人が逃げる時間を作るのが本分だ、問題無い」


 いらっ。


「エイダさん高度二百クレイドまで上昇してホバリングして」

【了解しました】


 蒼穹の覇者号は高度を上げた。

 二百クレイドまで上がってこれるやつはそういないでしょう。


「中に入ると、また素晴らしい船ではないか」

「お兄さま、魔導頭脳で自動操縦も出来るみたいなの」

「なんという装備か、これは頂いて帰らないとな」

「ふざけんな、突き落とすぞ馬鹿皇子」


 さすがに上空は冷えるので私はクロを抱いたままキャビンに入った。

 ジーン皇国の一行も付いてくる。


 私がラウンジの長椅子に座ると、皇子も王女も勝手に座った。


「ダルシー、お茶を入れて」

「わかりました、……こいつらにも?」

「一応」

「かしこまりました」


 皇子はダルシーを見て憮然とした表情を浮かべた。


「おまえのメイドは教育がなっていないのではないか?」

「他国のお偉いさんに丁寧にするほど上級メイドじゃあないんでね」

「それはいけないわ、あなたが聖女になったら国家の首脳部とも挨拶をするのだから格の高いメイドを雇わないと教会が侮られるわよ」


 うるせーよ、ほっとけ。


「さて、事情を説明しろ」

「ふむ、ところで聖女候補、君はどちらの味方かね、アップルトンか、ジーンか、それによって説明が変わるのだが」

「どっちの味方でもないけど、お前達は人の飛空艇を泥棒するというので、割と悪印象を持っているぞ」

「それは誤解だ、飛空艇は国家が持つ物で個人が持つ物では無い、そしてこの船はアップルトンには勿体ない船だ、よって、ジーン皇国が持つ権利があるのだ」

「うるせえ、盗人猛々しいとはお前達の事だ、ジーン皇国め」

「もう、あなたは口が悪いわねえ、私たちは大帝国ジーン皇国の皇族なのよ、お兄さまも私も温厚だから良いけど、本当ならば無礼打ちしているところなのよ、ねえ」


 馬鹿王女が護衛の騎士に話を振った。


「そうですね、聖女どのは少しお口がすぎるかと」

「教会の人間は身分なんか気にやしねえよ、べらぼうめ。女神さまの元、全ての人民は平等で等しく扱われる権利があるんだよ。聖典読めっ」

「そういえばこの船は教会所属なのか?」

「そうだよ」

「アップルトンの物でないならば教会に預けておいてもよいか」

「そうですわね、アップルトン王国と教会は別物ですものね、聖女候補さんに預けておいてもよろしいかと思いますわ、お兄さま」


 まったく尊大な奴らだなあ。

 預けるってなんだよ。


「まあ、この僕が帝位についた暁には大陸を統一するつもりだ、その時はアップルトンも、教会も、ジーン帝国の物だ、それまでは大事に使い給へ」

「大陸統一してからそういう事は言え、狸の皮算用め」


 もしもそんな事になったら友達と一緒に総本山に亡命してやる。


「話を戻そう、今の状況だね」

「そうだ、あの甲蟲騎士はどこの所属だ?」

「五年前に帝国が滅ぼしたサイズ王国の騎士団だ。国を滅ぼされ帝国に占領されたのを恨んでテロ組織となった。帝国には一切関係が無い」

「へえ、でも帝国の主流派じゃない派閥に援助されてる?」

「ふむ、良く見ているな、我が叔父ローマン皇弟の私兵だ」

「おじさまにも困ったものよね」


 つまりだ、こいつらはジーン皇国の内輪もめを他国に持ち込んで暴れたってわけだな。


「なに、同情なぞしてくれるな聖女候補よ、帝国の皇族に生まれるというのはそういう事だ、これで、幾千幾万の陰謀を生き残ってきたこの僕だ、皇帝になる運命が確約されている。だから、僕に味方をしておくと教会も君も得だぞ」

「そうね、聖女候補さんは帝国に利害関係が無いから、お、お友達になってあげてもいいのよ」

「やなこった」


 あ、王女落ち込んだ。

 あれで友情を示したつもりだったのか。

 どんなツンデレキャラだお前は。


「それでは僕はどうだ、お前はまだ体が育ってないが、皇帝の寵姫にふさわしい美貌になりそうだ。お前が私を愛するならば、この世の全ての贅沢や、地位が保証されるぞ。こちらとしても教会とのパイプが出来るのは大きい。どうだ、次代皇帝の僕に人生を賭けて見る気はないか?」

「まっぴらごめんだ、贅沢も地位も興味がねえ。私の望みは私の視界の中の人が笑って幸せに生活することだ。帝国に君臨する馬鹿の隣で愛想笑いをする事じゃねえ」


 馬鹿皇子と馬鹿王女は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。


「おどろいたな、即答の上に悪態をつかれるとは、面白いな、そんな風に僕を振った女は初めてだ」

「これが教会の人なのね、びっくりしたわ」


 お前達はいつもどんなおべんちゃらマンと付き合ってるのだ?

 帝国の宮廷だと、アップルトン王宮よりも、もっと世間離れしてそうだな。

 あと、ジーン皇国だと教会組織はザンブル大教会か、ジーン国人の主教さんだったか。


 ダルシーがお茶を持って来た。


「マコトさま……」

「どうしたの?」

「マルゴットが重傷を負いました、他、二三人のメイドが重傷です」

「そう、地上に下りるわ」


 馬鹿兄妹が驚愕の表情を浮かべた。


「ば、ばかな、お前はたかが侍女の命の為に地上に降りるとでも言うのか?」

「命は誰でも一つしかねえんだよ」

「だ、だって、平民でしょ、べ、べつに良いじゃない」

「あのなあ、私がお前達を救ったのも目の前で死なれるのが嫌だからだ。おまえらとメイドさんたちの価値は一緒、それどころかメイドの方が知り合いだから重要なぐらいだぞ」


 馬鹿兄妹は目を丸くした。


「わ、我らが、帝国の皇族たる我々が、侍女より落ちると……」

「ぶ、侮辱だわっ」

「あー? 女神様の元に命の価値に貴賤はねえよ、ふざけんな馬鹿兄妹。いくよ、ダルシー」

「はいっ!」


 なんで満面の笑顔なの、ダルシー?


「この子の力を使って跳び降りるから、あんた達はこの船のスイート客室でのんびりしてなさい。エイダさん、メイン操縦室、サブ操縦室をロックして。あと帝国のメイドさんにキッチンの使い方を教えてあげて」

【かしこまりました、ご武運をマスターマコト】


 私は甲板に出た。

 ダルシーがかがんで背中を出してきたのでそこにおぶさった。


「障壁で足場を出す?」

「いえ、大丈夫です、しっかり捕まってください」


 私を背負ったダルシーが、ポーンと船舷を飛び越した。

 私たちは真っ暗な空を落下していく。

 眼下に魔法学園が見える。

 あちこちの窓に灯がともっている。

 甲蟲騎士はまだいるのか。


 みんな私がすぐ治すから、死なないでいてね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 流石に皇子達を馬鹿にデザインし過ぎじゃない? 国としての体裁すら取れないのは強国だとしてもありえんぞ。
[良い点] ちょっと話が物騒になってきましたね。 マルゴットさん、大丈夫でしょうか・・・。 [一言] マコト様のかっこいいところ、また出てきましたね。 女神の元、平等ってすごくいいです。 でも貴族主…
[一言] マコトちゃんは男らしくて、ほんと好きですわ。 一応理性的なのが絶妙なバランス。 皇子はよぶん殴って欲しいw
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