第572話 晩餐の席で命令さんが馬鹿王女にすりよっているぞ
敵国の人間だから敬遠されるかなと思っていたが、意外と皆さん友好的にグレーテ王女に接していた。
なんか命令さんが揉み手をするようにすり寄っておるな。
グレーテ王女もまんざらでもないのかにこやかな表情だ。
なんか、トラブルの予感がする。
が、手は打てないなあ。
愛国心はないのか命令さん。
まあいいや。
カウンターに行くとクララがにっこり笑った。
「いやあ、酷い飛空艇を見たよ。どうしたらああなるのかな」
「さあね、悪天候とかじゃない?」
「噂だとあんたがボコったと聞いたけど」
「ノーコメントだよ」
「そうかい」
さて、トレイを貰って、今日の晩餐は何かな。
チキンカツ、コールスローサラダ、コーンスープに黒パンだね。
湯気が立っているチキンカツが美味しそうだなあ。
トレイに乗せていって、最後にケトルからお茶をつぐ。
チキンカツにかかっているのはマスタードソースかな、ちょっと酸っぱい匂いがする。
テーブルに持っていって、皆が来るのを待つ。
と、思ったら上級貴族ブースの仕切りにエステル先輩が来て、こちらを呼んだ。
「なんですか?」
「学園長からの伝言だよ。飛空艇の機能が復活するまでグレーテ第一王女は女子寮のスイートに、ディーマー皇太子は男子寮のスイートに泊まる事になった。ついては喧嘩して国際紛争を起こさないでくれ、だそうだ」
「こちらからは仕掛ける事はありませんが、向こうから何かしてきたら撃退するかもしれませんよ」
「ま、まあ、それは仕方が無いね、でも、ほどほどにね」
「わかりました」
女子寮の舎監も大変な仕事だなあ。
仮想敵国のお偉いさんが泊まるなんて、心が安まらないだろうに。
席に戻るとみんなが揃っていた。
「いただきます」
「「「「「日々の粮を女神に感謝します」」」」」
ぱくり。
さくり、さくり。
わあ、外側がさっくり、中はジューシーで美味しい。
マスタードソースも良い感じ。
美味しいねえ。
「マコトは美味しそうに食べるわね」
「カロルだって」
「うふふふ」
いやあ、美味しい物を一緒に食べるのはいいね。
気持ちがふわふわするよ。
コールスローサラダのマヨネーズの塩梅とか美味いなあ。
キャベツのシャキシャキ感がいい。
コーンスープも甘くて美味しいね。
今日の黒パンも美味しいなあ。
「魔石の買い付けはできた?」
「うん、手を打ったわ、商人はめざといわね、もう魔石が値上がりしてたわ」
「ほんとに?」
「あのサイズの飛空艇が不時着したってニュースを聞いて走った商人がいるわね。明日の相場は大荒れでしょうね」
商人の感知能力は怖いなあ。
「うちでも買い占めましたわ、オルブライトとマーラーが動いた事により市場が加速してますわね」
ヒルダさんもか。
「これで高い魔石を買うしかなくなってざまあみろだわね」
……。
「それって、いつまでもあいつらが居座る事にならない?」
「「……」」
「そのときはそのとき」
コリンナちゃんが話を締めてくれた。
うんうん。
あー、美味しかった。
私は食器を返却口に戻した。
「クララ、火の魔石を備蓄するようにイルダさんに言って」
「お、値上がりするの」
「する。だから早めに」
食堂で火魔石が使えないと事だからなあ。
冷たい晩餐はいやだ。
「そう、最近パンも焼いてるから火魔石の消費が激しいので、情報は助かるわ」
「早い内に手をうつように言ってね。しばらく値下がりはないわ」
「了解」
私は席に戻った。
ダルシーが現れてお茶を入れてくれる。
うん、美味しい。
ヒルダさんが立ち上がった。
「諜報部報告です。ジーン皇国の飛空艇がやってきましたが、派閥員のみなさんは軽挙妄動せずに遠巻きで見ていましょう。関わってもあまり良い事はありません。王都の麻薬禍は完全に撲滅できたようです。どこの社会層でも麻薬の流通は途絶しました。学園内の麻薬患者は撲滅しましたが市中にはまだ居るかも知れませんので外を歩く時にはご注意下さい」
ああ、まだ麻薬患者がいて暴れる危険性はあるのね。
騎士団に頑張ってもらわないと。
ヒルダさんが座ったので、私は立ち上がった。
「さて、そろそろ中間試験ですので、みなさんお勉強を頑張りましょう。放課後の集会室で、私と、カロルと、コリンナちゃんが勉強を見ますのでお気軽に声を掛けてくださいね」
「はい……」
「がんばりますわ」
メリッサさんとマリリンがしょんぼりして言った。
「カトレアさんとか大丈夫なの?」
「大丈夫、私は勉強家だ」
「わっしも頑張るみょん」
まあ、一学期の最初は中等舎の振り返りが多いから、まだね。
なんとか、みんなには良い成績を取ってもらって、二年生になったらA組で集まりたいものだなあ。
しばらくは学生っぽい事をしたいなあ。
戦争の火種にはなりたくないなあ。
だが、馬鹿皇子はぶっとばしたいなあ。
王女はまあ、いいけど。
ジーン皇国の人は早く帰ってくれないかな。
グレーテ王女が食事が終わったのか、つんと澄まして食堂を出て行く。
お付きの人がぞろぞろといるな。
メイドが三人、護衛が二人か。
まあ、スイートの部屋ならそれくらい泊まれるね。
というか、王宮で晩餐会とか無いのか?
歓迎行事は?
王家にもハブられてんじゃないでしょうね。
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