第571話 お風呂を出てお義姉様(ねえさま)を校門まで送る
洗いたての制服を着てさっぱりした。
やっぱお風呂はいいね。
大浴場を出ると、黒い甲冑を着た大女の騎士が立っていた。
甲胄の様式がジーン皇国だから王女の護衛さんかな。
すごく強そう。
「さっぱりしたわねー、マコトちゃん」
「そうですね、さっぱりしました」
さて、お義姉様を送っていこう。
アダベルもなんか付いてきたよ。
王女はメイドと護衛と一緒にエレベーターに乗った。
……?
なんでよ?
「女子寮に泊まってるのかな」
「ありうるわね、最上階のスイート室は空きがちだし」
「グレーテはなかなか良い奴だな」
アダベルはちょろいなあー。
とはいえ、通信装置ごしのキツイ物言いは実体で話すと少々和らぐね。
ほら、前世でも電話だと凄い口のききかたをする人とかいたからね。
実際に会うと違うのかもしれないな。
まあ、あまりお友達にはなりたくないですが。
アダベル、君に任せた!
階段を上がり、女子寮の玄関から外に出ると空は真っ赤であった。
綺麗な夕焼けだなあ。
「じゃあ、またね、マコトちゃん。メリッサちゃんとマリリンちゃんに予習をしておくように言ってね」
「解りました、次は週末ですか?」
「そうね、ホルボス山に行く時に会いましょう」
ジャンヌお義姉様は手を振って校門から出ていった。
「わたしも帰る~~、マコトまたなー」
「うん、アダベル」
最近のアダベルは大神殿の孤児院に行ってる事が多くて、ちょっと寂しいけど、彼女の世間が広がっているのは良い事だと思うんだ。
さてさて、夕食まで部屋でごろごろ読書とかするかな。
差し迫った問題は無いし。
懸念は中間テストと、派閥大会だね。
っても、派閥大会は大人の行事だからジョンおじさんだよりだね。
お養父様とお養母様に礼服ドレスは作ったので宴会をやってもみっともない事は無いだろう。
私はそんな事を考えながらぶらぶらと女子寮の階段をあがり205号室に入った。
「お、帰って来たかマコト」
「コリンナちゃん、あんたんち相場をやるお金はある?」
「そんな金は一ドランクも無い」
「そうかあ、王都で火魔石と風魔石が値上がりしそうなんだけど」
コリンナちゃんは、むうと言って考え込んだ。
「確実な話しか?」
「グラウンドにでっかい飛空艇があるでしょ、あれ、今、魔石の備蓄が無いのよ」
コリンナちゃんは立ち上がって窓によった。
「あれはどこの船だ、上部構造がぼこぼこにされてるぞ」
そいつは、その、私だ。
と、思ったが喋るほどでもない。
「ジーン皇国の覇軍の直線号よ。トラブルがあって魔石切れで不時着してるの」
「あのクラスの船の魔石庫が空かあ、それはそれは、魔石相場が高騰しそうだな」
「カロルとヒルダさんが買い占めに走ってるわ」
「ふーーむ」
コリンナちゃんは腕組みをして唸った。
「相場をしたければ、お金を貸すよ」
「……。相場は嫌いだ、あんな物は博打だからね。やらない」
そう言うと思ったよ。
私の友達は堅実だからね。
「火と風の魔石が高騰か、庶民が大変になりそうだな」
「ひよこ堂にも備蓄するように言った方がいいかな」
「そうだな。あと、女子寮食堂にも」
たしかに。
しかし、魔石の高騰はいろんな所に被害があるな。
「今は春だから暖房用の需要が低いのが救いだな。真冬だと人死にがでかねないよ」
「それもそうだなあ」
大神殿にも一報しておこうか。
「ダルシー」
「はい、マコトさま」
「教皇様に事の次第を伝えて来て、教会も一週間ぐらい分の備蓄をしていた方がいいわね」
「買い占めはおすすめしないのですか?」
「教会があまり物資の買い占めはかっこ悪いわね。あ、あとひよこ堂にも火の魔石を備蓄するように言ってね」
「かしこまりました」
ダルシーは窓を開けてポーンと跳んでいった。
「あいかわらずダルシーは便利だな」
「もう、彼女が居ない頃にもどれないねえ」
「わかる」
真面目にダルシーがいない生活は考えられないね。
一家に一人ダルシーは必要だ。
私はハシゴを登ってベットに入り込んだ。
本を読もう読もう。
と、思ったら未読の本が無い。
あー、図書館行ってくればよかった。
しょうが無いので王都付近のダンジョンガイドを開いた。
またどこかのダンジョンに行こうかな。
ガドラガの魔物図鑑を見直そうか。
カロルと一週間かあ、ううむ、Hな関係になるのはやぶさかでは無いのだが、うむ、なんか照れくさいなあ。
のんびり関係を詰めて行きたい感じがあるね。
……。
すやあ。
「おい、マコト」
「あ?」
「晩餐の時間だ」
「あれ、寝てた?」
「寝言を言ってた、死ねいジーン皇国、だそうだ」
うは、なんという寝言を。
まあ、寝言に同感ではあるのだが。
私はんーと伸びをしてからハシゴを下りた。
「眠いなら、何か持ってくるぞ」
「いや、大丈夫、寝たらすっきりした」
「ならばよし」
私たちは連れだって廊下に出て、205号室を施錠した。
「あー、今日の晩餐は何かなあ」
「匂い的にはフライな感じだな」
「何のフライだろう、楽しみ楽しみ」
階段をぱたぱたと下りる。
窓の外はもう真っ暗だね。
エレベーターホールでは聖女派閥のみんなが集まっていた。
「あ、マコト来たわね」
「来たよー、さあ入ろう」
みんなで女子寮食堂に行くと、上級食ブースにグレーテ王女が居た。
やっぱり女子寮に泊まっているのか。
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