第543話 月曜日は聖女の湯を作る
お針子さんガイダンスが終わり、ジャンヌお義姉様の採寸も終わった。
「ありがとう、できあがりはいつ頃かしら」
「最速なら二週間ほどですが、デザインの件もありますし、どうしましょう」
「水曜日にお義兄様を任地に送りますから、飛空艇で打ち合わせをしましょうか」
「あら、良いわね。親戚に聖女候補さんがいると色々と不思議な経験ができるわ」
離陸だけ私がやって、任地へは自動操縦にすれば時間が作れるね。
お義兄様の意見も聞かないとだし。
「ジャンヌお義姉様はしばらく王都ですか?」
「そうね、領に帰ってもやることは無いから、王都のタウンハウスでぶらぶらしてるわよ。時々勉強をみに来てあげましょうか」
「「お願いしますっ」」
お洒落組はジャンヌお義姉様に懐いたね。
なによりだ。
ゆりゆり先輩がドアをドーンと開けて入って来た。
「本日は聖女の湯ですわねっ!」
「そ、そうですが……」
「行きましょう行きましょう!」
なんでこの人はテンパっているのだ?
「もちろんカロルさんとも進展があったので一緒に入るのですよねっ!」
ああ……。
なるほど……。
解りやすい。
「ゆりゆり先輩は大浴場出禁になってませんでしたか」
「良いんですのよっ!! 聖女の湯投入時は聖女派閥専用なんですから、なんら問題はございませんわっ」
どんだけ本能に忠実な人なのか。
「マコトちゃん、聖女の湯ってなに?」
「あ、ちょうど良いですね、ジャンヌお義姉様もお風呂入って行きましょう」
「マコトさま、こちらは?」
「ブラッドお義兄様の婚約者のジャンヌお義姉様です。お義姉様、こちらはユリーシャ先輩です」
「あらまあ……、アップルビー家の……」
「まあまあ、マコトさまのお義姉様ですか、お見知りおきを。ユリーシャと申します」
「こちらこそ、よろしくおねがいいたします。ユリーシャさま」
なんだろうな、聖女派閥だと身分の法則が乱れるね。
「みんな、お風呂行く?」
「いきますわ」
「いきますわ」
「お針子さんもいかが?」
「わ、良いんですか?」
「ええ、もちろん」
お針子さんは新入生歓迎ダンスパーティの影の立役者だからね。
みなで外にでて、集会室を施錠した。
カロルは大浴場前かな。
「ダルシー、カロルに知らせてきて」
「かしこまりました」
ダルシーはポーンと跳び上がると女子寮方向に消えた。
「マコトちゃん、不思議なメイドさんなのね」
「諜報メイドさんなのですよ」
「ああ、それで消えるのね」
まあ、視界から外れているだけで消えてはいないらしいけど、消えてるようにしかみえないよね。
ぞろぞろと皆を引き連れて女子寮に行く。
地下に下りると大浴場前でカロルが待っていた。
「あ、来た」
「う、うん来た」
お互い、なんか赤面してしまう。
なんだか、妙な空気が発生するな。
そして、ゆりゆり先輩は目をうるうるさせておる。
「あっはっは、そうなんだー、うんうん、マコトちゃん、あるある」
「え、あー、まあ、お義兄様にはご内密に」
「うんうん、女子同士の秘密だから言わない言わない」
魔法学園では良くある事なのかね。
まあ、良いか。
脱衣所で服を脱ぐ。
なんかドキドキしてカロルの方を見れないなあ。
一緒にお風呂に入れるようになったら、今度は心理的に見れないとは。
人の意識は複雑である。
まだ三時ぐらいなので、入ってる生徒はいないね。
ダルシーに聖女の湯の元を出して貰って、お湯に入れる。
最初白濁して広がって色が消えるのよね。
ふんわりお花の匂いが広がる。
友鳴り花を採取したら入浴剤にも使ってみようかな。
あれも良い匂いだしね。
かけ湯をして湯船にはいる。
ああああああっ。
お湯がしみるね~~。
「あ”あ”あ”あ”、これは凄いわね」
「効きますわよねお義姉様」
「お肌もつるつるになりますのよお義姉様」
カロルも入って来て、私の近くぐらいの距離で肩まで浸かった。
んー、曖昧な距離感が新鮮であるなあ。
うひひ。
はあ、あったまるなあ。
お風呂大好き。
洗い場に出てダルシーに洗ってもらう。
いつもありがとうね。
ショワショワ。
隣でカロルもアンヌさんに洗ってもらっている。
目があったので慌ててそらす。
ああ、カロル大好きっ。
髪の毛が洗い終わったので、バスタオルを巻いてもらって、また湯船に。
「ダルシー、お義姉様を洗ってあげて」
「い、良いわよ、生まれてこのかた他人に体を洗って貰った事なんか無いわ」
「まあまあ、良いじゃ無いですか」
男爵家ぐらいだとお世話のメイドさんは居ないからね。
お義姉様はダルシーに洗われてくすぐったそうにしていた。
洗髪は気持ち良さそうにしているな。
髪は美容室でも洗って貰うからね。
湯船で暖まってから、脱衣所へと出た。
下着を付けたらダルシーにドライヤーをかけてもらう。
「あ、ドライヤーだ、流行ってるのよね。さすがはマコトちゃん流行に敏感ね」
「あ、私が作りました。一枚、簡易型を持って行きますか」
「マコトちゃんが作ったの? すっごーいっ!!」
なんとなく、お義姉様はサーバルちゃん風味があるな。
「何時も売り切れで困ってたの、嬉しいわ」
下着姿のお義姉様は簡易型ドライヤーを抱いてそう言った。
売れてるのかー。
聖女派閥だとみんな持っていて、ブインブインいわせてるからなあ。
さて、髪も乾いてキラキラ。
洗い立ての制服に着替えてリフレッシュであるよ。
さっぱりさっぱり。
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