表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

545/1527

第540話 チェーン君にお姫様抱っこで運ばれる

 月曜日の授業はサクッと終わり、お昼休みである。

 さて、どうしようかな。


「今日はどうしようか」

「ひよこ堂に行かない?」

「そうしようか」


 なんか、カロル近い近い。


「なんか、マコトとカロルがべたべたしてんな」

「なにか進展があったみたいみょん」

「進展って、女同士じゃないか、何言ってんだコイシ」

「カトレアしゃんには想像も出来ない世界があるみょんよー」

「何言ってるかわからん」


 うむ、解らないままのカトレアさんでいてくれ。


「おーう、今日はどうする」


 カーチス兄ちゃんを筆頭にB組勢がやってきた。


「ひよこ堂になりそう」

「そうかそうか……。あー、そうかそうか」

「なんだよ」

「うん、まあ、仲が良いことは良い事だ」


 そうだなあ。

 ちょっと暑いけどね。


「今日はひよこ堂か、久しぶりな感じだな」

「そうだね、ジェラルド」


 王家主従も付いてくる気まんまんだな。


 みなでぞろぞろと校舎を出て、ひよこ堂へ行く。


 そういや、実家の家族にドレス姿を見せた方がいいが、どうやって機会をつくろうか。

 ああ、派閥の父兄会に呼ぼうか。

 平民だけど、礼服を着せれば父ちゃんも兄ちゃんもパリッとするだろう。

 そうしようか。


 本当は新入生歓迎ダンスパーティにも呼びたかったんだけど、あっちは平民お断りだしなあ。

 身分社会は辛いぜ。

 派閥の父兄集会なら実家の家族も問題はあるまい。


 道すがら、アダベルが来るかなと思っていたのだがこなかった。

 大神殿で孤児と遊んでるのかな。

 ちょっと寂しいけど、アダベルにはアダベルの生活があるしね。


 ひよこ堂でパンを買って、自然公園に行く。

 今日は晴れていて気持ちがいいね。


 カロルの引いてくれた敷布に座って皆でパンを食べる。

 

 私の座る横にカロルがいて、もたれかかってくる。

 うむ、イチャイチャすると心がぽかぽかするなあ。

 もぐもぐ。


 良い天気だ。

 目を閉じると日差しがまぶたに赤い。


 ポッティンジャー領は王都から東に二時間、夜間飛行になるけど、晩餐には帰ってこれるかな。

 畑を焼き尽くすには聖女ビーム砲を使うべきか。

 だが、最大に魔力をタンクに溜めても四発だなあ。

 帰りのエネルギーもいるから二発ぐらいしか撃てないか。

 ううむ。

 武器の相性が良くないな。

 焼夷弾があればいいんだが。


 うん?

 頭を誰かに撫でられてる?

 目を薄く開けると、私は寝ていて、カロルの膝枕で頭を撫でられていた。


「寝てていいよ」

「うん」


 カロルの手の感触が心地良いなあ。

 ありがとう、カロル。


 すやあ。


 遠く小さくカロルの声が聞こえてくる。


「マコトは無理しすぎだから……」

「スイッチ入ると突っ走るからな、こいつ……」

「マコトが走らない世界が良いのだけれど、どうしてもマコトじゃないと解決しない事が多くて可哀想よ……」

「たった一ヶ月半でどれだけの事件が起こったのか、聖女の宿命かね……」

「何にも無い時間が必要よ……」


 チャリチャリ。

 なんだか誰かに抱きかかえられて運ばれている感じ。

 薄目を開ける。

 ああ、チェーン君にお姫様抱っこされて運ばれてるのか。


「ありがとうね、チェーン君……」


 私がそういうと、チェーン君は頭部を少し動かしてお辞儀をした感じがした。

 やっぱ、この子、自我あるよね。


 お姫様だっこはラクチンだ。

 私は再び目を閉じた。


 トンと、降ろされた感覚がして、目を開けてあたりを見回すと錬金実習教室であった。

 ああ、今日は月曜日か、唯一の午後授業がある日だ。


 チャリチャリとチェーン君が分解されてカロルのスカートの中に消えていった。


「ありがとう、カロル」

「なんでも無いわ、マコト」


 カロルはふわっと笑った。


 ふわああ、よく寝た。

 ちょっとすっきりしたよ。


 収納袋から作りかけの魔導具セットを出す。

 いやあ、みんなと授業を受けるのはここぐらいだからなあ。


 サーヴィス先生がやってきた。


「やあ、諸君、昨日のダンパは楽しかったかね。だが、錬金の授業はそんな事にかかわりなく進むのだ。今日も魔導具キットの作成だ。私が回って見るから、解らない事があったら質問したまえ」


 先生は日曜日にじっくり休んだようで、結構元気だな。

 今度、鍛冶部と一緒に、サーヴィス先生の馬車を直してあげようかな。

 木材にヒールが掛かるか試したいし。


 魔導インクの独特の匂いに包まれながら、魔法陣を書き書きである。

 制御回路とか、スイッチ回路、魔力タンクと、色々な回路をかき分ける。

 前世の電子回路と似ているなあ。

 やっぱり人の脳からでる発想だから、同じような感じになるんだろうね。


 カロルは専門家なので、すごい細かいアレンジ回路を入れた魔法陣を書いておる。

 なんだあれ?


「水魔石で湿気を含んだ風を出して髪を傷めずに乾かせないか試しているのよ」

「さいですか」


 それはお値段以上の魔導具をお作りになられる。

 コリンナちゃんはベーシックに書いてるな。


「魔法陣は面白い。なんか新しい物作りたいな」

「魔導アバカスでも作りなよ」

「アバカスは玉が動くから良いんだよ、魔法陣で作っても……」

「数字を押したら自動的に数字を返すようにしたら良いじゃん」


 あ、これは電卓だな。


「う? でかい桁はどうするんだ?」

「八桁ぐらいの表示枠を作って、十個のボタンで入力して、その数を計算して返せばいいよ」

「え? 可能なのか?」


 あ、いけねえ、電卓が作れるならコンピューターまですぐそこだな。

 だけど、エイダさんみたいなAIもあるからなあ。

 古代の超魔導文明にはあったんだろうな。


「そんな味気ない魔導具を作ってはだめだ。計算はアバカス、そう決まっているのだ」


 コリンナちゃんは紅色の玉のアバカスを掲げて、そう言った。

 まあ、便利だけど、庶民の暗算能力は落ちるからやめといた方が良いかな。

よろしかったら、ブックマークとか、感想とか、レビューとかをいただけたら嬉しいです。

また、下の[☆☆☆☆☆]で評価していただくと励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 想像以上に甘々になっていて大満足でございます。
[一言] コリンナちゃんに、表計算ソフトを見せつけて 「アバカスなんてカスだったあぁぁ!!!」 と叫ばせたい
[一言] コリンナちゃんのアバカス愛よ。微笑ましいね。 大きくなって財務省に入ったら案外魔導アバカス賛成派になるんじゃないかなあ。他の人間が皆アバカス達人ってわけじゃないし、他の役人や庶民の店舗関係者…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ