第539話 月曜日なので壁新聞を読む
朝食を食べた後、皆で一緒に登校である。
なんだかカロルとの距離が近い感じがするが、不快では無いので良いとしよう。
朝からイチャコラしてる感じで面はゆいが。
玄関の正面の壁に人だかりがしていた。
そうか、壁新聞の日か。
人混みの前の方に行くと、今週の魔法学園新報が更新されていた。
今週は新入生歓迎ダンスパーティ特集のようだ。
綺麗なイラストと記事で新入生歓迎ダンスパーティであった事を紹介している。
ケビン王子とビビアンさまのダンスの話題とか、聖女派閥の光るアクセサリーとか。
ちゃっかりヒルダさんがマーラー領ドレスの宣伝もしていた。
ここまでは何時もの魔法学園新報だったが、最後の二枚は書いたばかり感漂うインクの匂いがしそうな壁新聞であった。
人質事件の顛末が書かれているね。
取材もしっかりしていて、事実関係もおかしくない。
「なので、さらに聖女候補さまにお話を聞きたいんですよ」
気がついたら、憔悴したレイラさんがいて私に声を掛けていた。
『ヒール』
「わあっ!! すっきりしました、徹夜なのにっ!」
「それは大変でしたね、徹夜で記事をまとめたの?」
「そうなんですよ、マコトさまが飛空艇で飛んで行ったのを見て、ああっ、同行をお願いするんだったと歯がみしましてね」
「それはタイミングが悪かったですね」
言ってくれれば乗せてあげたのに。
今回は出動まで早かったからね。
「現場で取材したかったですー。それで、竜の顎とは徹底抗戦ですか?」
「当然です、王都に麻薬をはびこらそうという悪の組織に教会は屈する訳にはいきません」
「心強いお言葉です。解決にはどれくらいの期間を見込んでいますか?」
「三日、いえ、一日すぎましたから、あと二日です」
「……はい? あの、相手は秘密結社ですよ?」
「二日で結果を出すように、リンダ師には頼んであります」
「え、リンダ師に頼まれたんですか?」
「彼女が率いる聖騎士団は教会の最大戦力の一つなので」
「これは、派手に血の雨がふりますね……」
レイラさんの顔色が曇った。
なのだが、無関係の人の家族を人質に取りテロを強要するような組織は全力で潰さないと。
相手は一線をもう越えてしまったのだ。
話し合いや交渉の余地はもう無いのさ。
大きい領地を持っていて、取り潰すと平民さんにも被害が及ぶポッティンジャー派閥とは話が違うのだ。
ポ派は戦うにしても自前の兵隊を使うしね。
戦争のルールみたいな物を竜の顎は踏みにじったので、もう、殺るか、殺られるかのフェイズに入ったのだ。
「何か続報がございましたら教えてください」
「リンダ師が勝手に動いてますので、大神殿に取材に行った方がいいですよ」
「そうですか、行ってみます」
レイラさんは頭をぴょこんと下げて去って行った。
「領袖、私も秘密結社退治に混ぜてもらっても良いですか?」
「ヒルダさんもやりたいの?」
「はい、王都貴族関係には色々伝手がありますので、リンダ師のお手伝いが出来ると思います。ローランさんのお手並みも見たいですから」
「それではお願いします」
そうか、ヒルダさんもこの手の暗闘戦は得意分野だしね。
聖騎士団とマーラー黒騎士団の混成作戦というのも厨二心をくすぐるぜ。
壁新聞も読み終わったので、階段を上がって教室に向かう。
A組に入って、席に付く。
ケビン王子とジェラルドがやってきおったぞ。
「やあ、キンボールさん、昨日はおつかれさまでした」
「ケビン王子もジェラルドもお疲れ様、大変だったでしょう」
「大規模イベントは確かに大変だった、コリンナくんを十分にエスコート出来なくて心苦しい。彼女は怒っていなかったかね?」
「コリンナちゃんも忙しいのは解ってるから怒ってはいなかったよ」
「そうか、それは安心だ」
なんだよ、ジェラルドの癖にコリンナちゃんにコナかけようってんじゃ無いでしょうね。
ケビン王子が眉を上げた。
「キンボールさんとオルブライトさんは、なんかあったのか?」
「なんで?」
「なんかぴったりとくっついているし」
お、そういやカロルが近くにいて手の上に手を置いたりしてるな。
「なにもありませんよ、ケビン王子」
「そ、そうか、オルブライトさん」
しれっと言うカロルも凄いなあ。
告白した事で、ちょっとお互いの身体距離が変わったのかもしれない。
わりと密着してても気にならないし。
まあ、それは前からのような気がしないでもない。
なんだか知らないが、王家主従ともずいぶん仲良しになったなあ。
なんだかんだ会話をしていると、人となりも解ってくるしね。
「竜の顎殲滅作戦は進んでいるかね」
「しらん、リンダ師に丸投げじゃ」
「そうだったな、大神殿に聞くか」
「そうだね、ジェラルド。進行状況は掴んでおかないと」
「お前の方の攻撃は何時だ?」
「……」
言うな、馬鹿ジェラルドめ。
やめろ、私にしなだれかかっているカロルにばれるだろうが。
「あ、そうだな。うん。失言だった」
アンソニー先生が来て、王家主従は席に戻った。
カロルも席に戻った。
しかし、麻薬畑を焼きにいくのは何時にするかな。
土日を挟むと楽なんだけど、今週末はホルボス山にお養父様、お養母様を連れていかねばならんし。
来週の土日……。
なんかの音楽会があったような。
めんどくさいな、明日、午後の授業をさぼって焼きに行くか。
水曜日は義兄様を任地に送っていくし。
半日で焼けなきゃ、木曜日にも行くぜ。
まってろ、山高帽。
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