表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

543/1527

第538話 お互い赤面して言い訳しあいをする

「おい、ヘタレ! 起きろ、朝だぞ」


 コリンナちゃんの下品な下町なまりで起こされましたよ。

 昨日は部屋に飛びこんでパジャマに着替えてベットに潜り込んで羞恥でバタバタしてましたからねえ。


「ヘタレ言うな」

「あれをヘタレと言わずしてなんというのだ」

「……カロル怒ってた?」

「いや、なんか固まってたよ」


 もう、転校しよう。


「私は神学校へ転校するから。カロルに合わす顔がない」

「やーめーろー。カロルが傷つくぞ。早く起きろ」

「ぐぬぬ」


 私はハシゴを下りて洗顔にいった。

 あー、あー、なんだか気まずい。

 初キッスだったのになあ。

 なんだか怖くなって逃げてしまった。

 カロル怒ってないかなあ。

 あ、鼻の奥がツーンとなった。

 しくしく。


 用を済ませて応接セットに座るとダルシーがケトルを持って入って来た。

 なんだか嬉しそうなのはなぜなんだ。


 お茶を飲む。

 美味しい。


「しかし、いつもお下劣な事を言ってるから、ああいうの大丈夫だと思っていたのだが」

「うん、私も頭の中で解っているから大丈夫だと確信していたのだけれども、実際にやられると恥ずかしくて逃げた。現実は過酷だ」

「まったく、おぼこ娘め。今日の予定は」

「特にない~、カロルに謝る~~」

「まあ、お互い好きなんだから、ちゃんと話し合えば大丈夫だ、がんばれ」

「ありがとう~~、ひーん」


 コリンナちゃんの暖かい言葉が心の琴線にふれるぜ。

 涙がにじむ。

 コリンナちゃんがパンパンと私の肩を叩く。


「泣くな泣くな」

「うん、ひーん」


 しくしく。

 ごくごく。


「ダンパは大成功だったな。今週からの仕事は何かあるかい」

「うーん、義兄様おにいさまを任地に送っていくのは水曜の放課後だし、あんまり無いね。中間テストに備えて勉強会ぐらいかな」

「了解、まあ、のんびりしろ」

「わかった」


 秘密の作戦は一つあるけど、それは木曜日かな。

 派閥員の親はゴールデンウイークを王都で過ごして、派閥父兄会に出て帰るから船を出すのはまた後だな。

 ダンパまで忙しかったから、ちょっとのんびりと過ごそう。


 205号室を施錠して、コリンナちゃんに手を引かれて階段を下りる。

 うう、カロルと顔を合わせるのが面はゆい。

 転校しちゃ駄目ですか、そうですか。


 いつものエレベーターホールに行くとカロルがいて、目を合わせると頭を下げてきた。


「えー、えーと、そのごめんなさい、お酒で盛りあがっちゃって、その、ごめんね」

「え、あ、その、こっちこそごめんね、その、びっくりしちゃって」


 ゆりゆり先輩の目がギラリと光った。


「何があったんですの。コリンナさまっ」

「えー、そのー、まあ、甘酸っぱい事がありましたね」

「くわしくっ!」


 コリンナちゃんがゆりゆり先輩に耳打ちした。


「ま、まあっ! なんてことっ! なんで私は、その現場に居て、目撃できなかったのかしら、くやしーっ!」

「そういう風だから目撃できないんだと思いますよ」


 ははははは。

 カロルと目を合わせて笑った。

 頬が熱い。

 カロルの頬も真っ赤であるよ。


「で、でも、その、言った事は本当。お酒のせいじゃないのっ」

「あ、ありがとう、その、私もそうだよっ」

「ほ、本当、よ、よかった!」

「う、うん、私も安心したわっ!」


 なんだかギクシャク会話であるなあ。

 でも、お互いの想いは本物であったようだ。

 それは嬉しいな。


「ちょ、ちょっと、その、急ぎすぎたわ、マ、マコトが、その、気持ちが決まるまで、ま、待つから、ずっとでも待つから」

「う、うん、そそそ、そんなにお待たせしないと思いますので気長にお待ち下さると幸いです」

「あ、はいっ!」


 お互いテンパって言動が変だな。

 でも、良かった。

 喋って、気持ちを確認したら、ほっとした。

 冷たい対応をされたら、どうしようかと思ったよ。


 私の頬がゆるむと、カロルもふんわりと笑った。

 目と目が合う。


「じゃあ、仲直りね」

「喧嘩はしてないけどね」

「ちょっとした行き違いに」

「うんっ」


 私たちは手を握り合った。

 そして、そのまま、手を取り合って食堂へと入った。

 ゆりゆり先輩の眼力がいぜん強い。


 この手はいつはなせば良いのかな。


「いやあ、ダンスパーティ盛会だったね、お疲れ様」

「なんでクララはゲッソリ?」

「ダンパが終わった後、飲んだから」


 しゃーないな。

 私はクララの腕に手を当ててヒールをかけた。


「お、おおおっ! わ、すごくすっきりした。メレーさん、メレーさん」

「うるさい、大声はやめておくれ」


 メレーさんも盛大にしょぼくれていた。

 カウンターから手を伸ばして、彼女の額に手を置き『ヒール』。


「おおおおっ! すばらしいっ!! 深酒しても、マコトがいれば大丈夫だね」

「いや、深酒はやめなさいよ」


 クララとメレーさんは手を取り合って喜んでいた。

 まあ、食堂スタッフがしょぼくれてるよりは良いか。


 今日は甘々ポリッジを頼んでテーブルに運ぶ。

 お祭りの後の朝のしらじらしさっぽい空気が朝の女子寮食堂に漂っているね。

よろしかったら、ブックマークとか、感想とか、レビューとかをいただけたら嬉しいです。

また、下の[☆☆☆☆☆]で評価していただくと励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 毎日更新を楽しみに読み続けて来たけど一つ報われた気分 これからも楽しませてもらいます
[一言] マコトが非常にヒロインっぽい カロルに礼服とマコトにドレスを
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ