第534話 錬金室に向かって移動する
礼服って背筋が伸びるな。
面白い面白い。
ずしんとちょっと揺れた。
外を見ると格納庫へ着いたようだ。
【待合室入り口に学園長様がいらっしゃっていますが、ドアを開いても良いでしょうか】
「アダベルを迎えに来たのね」
「ガクエンチョ来た!」
アダベルがドアを開いて走り去って行った。
まったくあの子は気ままだなあ。
コリンナちゃんと顔を見あわせて笑った。
「ハッチを開けてあげて」
【了解しました】
遠くからハッチが下りる音がした。
さて、私たちも降りるか。
廊下に出ると、派閥員で一杯であった。
まあ、スイートは一番端だから外には出やすいのだけどね。
そそくさとドアを開けて、ハッチに向かい、飛空艇を下りた。
みな、ぞくぞくと下りてくる。
なんか一言言う雰囲気だな。
「な、なんでマコトは礼服きてんだ?」
「ああ、気にすんなカーチス」
「似合ってる……」
「ありがとう、エルマー」
メリッサさんと、ジュリエットさんが胸の前で指を組んで熱い視線で私を見ているな。
「素敵です、マコトさまっ!!」
「きゃーっ!! マコトさまの男装っ!! 素敵ですわーっ!!」
あー、うるさい。
「皆さんの努力の甲斐があって新入生歓迎ダンスパーティも大成功を収めました。領袖として感謝いたします。次の行事は中間試験、そのあとゴールデンウイークの父母集会です。とくに来年の派閥員全員のA組への昇級を目指して学業をがんばりましょう」
カーチス兄ちゃんとか、メリッサさんとかの表情が曇った。
あんたたち、勉強しなさいよね。
「聖女派閥では、放課後の勉強会を主催します。勉強が得意な派閥員は先生役をやってください。一年は、私と、カロルと、コリンナちゃんでお勉強を見ますから、よろしくね」
しかし、C組のメリッサさんとか、マリリンとかは勉強の仕方から教えないとなあ。
脳筋のはずの剣術部の一年女子がA組なのが救いか。
なんで、カトレアさんはA組に入れたのだろうか。
「いま、私の方を見て、何でだ? という顔をしたな、マコト」
「いや、不思議で」
「私は勉強も出来るんだっ!」
不思議だよなあ。
「それでは明日からもがんばりましょう」
「「「はいっ!!」」」
みなが良い返事で答えてくれた。
さあ、解散。
と、思ったのだが、私のまわりに人がまとわりついて解散しねえ。
ヒルダさんまで顔を赤くして私を見てる。
「な、なんですか」
「はあ……。凄く好みの顔です、領袖」
ヒルダさんもかよっ。
「素敵ですよね素敵ですよねっ」
「白と青のツートンでカラーリングされて要所要所に金が入った聖女カラーの礼服、震えが来るほど格好いいですわあ」
「マコトさま、幾ら金貨を払うと、愛をささやいてもらえますかっ」
「ささやきませんっ、ゆりゆり先輩っ、コイシちゃんもお財布を出すのをやめてっ」
「全財産を払うみょんっ」
超モテモテだが、あまり嬉しくないなあ。
もう知らん、カロルの元へ急ごう。
私は女子寮に続く通路を歩いた。
女子達が私を追ってくるよう。
「んじゃ俺たちはこれで」
「楽しかった……、マコトありがとう……」
「うん、また明日ね、カーチス、エルマー」
男子達は待合室に入っていった。
「エイダさん、アダベルは学園長と帰ったの?」
【はい、先ほど合流して帰りました】
それならよし。
ああもう、立ち止まるとゆりゆり先輩が私の顔を見てため息をつくのでウザイ。
「ユリーシャ、愛してるぜと言ってみてください」
「やです」
「ああ、つれない、でもそれがいい」
地下通路をまっすぐ歩いて、階段を上がって女子寮にはいった。
てくてく歩いてエレベーターホールへ。
下級貴族のメリッサさんと、カトレアさん、コイシちゃん、マリリンとはここでお別れである。
私たちは、エレベーターで……。
あ、私とコリンナちゃんだと乗れないか。
階段か、階段を五階まで上がるのか。
「何しに行くのか白状なさったらっ、私の付き添いという事でエレベーターを使わせてあげてもよくってよ」
ゆりゆり先輩がニヤニヤ笑いながらそう言うのである。
「階段を行きます」
「五階まで上がると礼服が汗まみれになってしまうわよ~」
解ってるのだろう、この人はもう。
「カロルと後夜祭をやりに行きます」
ゆりゆり先輩はふんわり笑った。
「良く出来ました。では乗ってもいいですわ」
「ユリーシャさまは意地悪ですわ、解っていらっしゃったくせにーっ」
「ほほほ、ジュリエットさま、こういうのは言葉にするからロマンチックなのですわ。ああ、ダンスパーティに出られなかったお友達の為に男装をして会いに行く、なんて素敵なのかしらっ」
「あの男装は卑怯ですわよね、必ずくらっとしてしまいますわっ」
うう、なんだかもう。
いろいろ台無しだなあ。
そしてエレベーターが来たので乗り込むのだ。
ミーシャさんが背伸びをしてレバーを倒してくれた。
「五かいですね。マコトさま」
「はい、お願いします」
ゆりゆり先輩とミーシャさんと、ジュリエットさんと、メイドのクレアさんと、私と、コリンナちゃんで、結構エレベーターは一杯であるな。
クレアさんは隠行出来ないからね。
ダルシーはどうやって移動してるのかな。
見えない所で重拳で飛び上がっているのかもしれん。
チン、と音がなってエレベーターは五階で止まった。
「では、がんばってくださいね、マコトさま」
「お楽しみあれーっ」
ゆりゆり先輩とジュリエットさんに激励されて、私とコリンナちゃんはエレベーターを降りた。
悔しいので振り返って投げキッスを送ると、ゆりゆり先輩とジュリエットさんは真っ赤になってキャーキャー言って、ドアが閉まった。
さて、錬金室に行こうではないか。
ないか。
「どうした」
「いや、なんかドキドキしてきた」
「しっかりしろ」
うん、そうだね。
すうはあ。すうはあ。
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