第533話 だらだらと帰って着替える
新入生歓迎ダンスパーティは終わった。
先生の誘導で男女共に学園に向けてぞろぞろと歩いて帰る。
なんかに似てるなあ、と思ったら、コミケ帰りの雰囲気だ。
夕暮れの下で祭が終わった高揚感でぞろぞろと駅に向かって帰る感じ、ちょうどあんな感じでみな王宮を後にする。
「上手くいって良かったな」
「ほんとね、嫌がらせとか少なくて良かった。秘密結社以外は」
「二三ありましたが、なんとか回避できましたわ」
「ほんと、ヒルダさん、ありがとう」
「私の勤めですのよ」
そうかそうか、ヒルダさんが未然に防いでくれたりしたのか。
暗闘の家は安心感あるね。
あー、楽しかったなあ。
秋にもあるのか、楽しみだ。
「メリーは、来年学園に行くのか」
「そうだよ、アダベルちゃんは再来年?」
「いや、私も来年入るーっ」
「じゃあ、勉強頑張らないとね、私、A組めざしてるんだ」
メリーちゃんは来年高等部に入学かあ。
結構優秀なのね。
アダベルは勉強を相当頑張らないとC組にしか入れないぞ。
派閥の皆と王宮門をくぐる。
非日常と日常の境目だねえ。
頭の上をファンファンと音を立てて蒼穹の覇者号が横切り、グラウンドに着陸した。
そういや、みんなの制服は船の中だったな。
「エイダさんありがとう」
【いえいえ】
エイダさんは飛空艇AIなのに気が利くなあ。
助かる。
聖女派閥員が第三グラウンドへと向かう。
「では、私たちはこのへんで、ありがとうございました」
「本当になんとお礼を言っていいか」
「ありがとうございました、聖女様」
人質さんたちは別れて馬車で帰るようだ。
ジャコブさんのお母さんがみんなを連れて行ってくれるらしい。
一応念のため近衛騎士さんが三人護衛で付いてくれるようだね。
「お気を付けて」
「はい、聖女さまもごきげんよう」
暗殺役の三人の男子生徒は近衛騎士団で事情聴取されているとの事。
無関係なのに気の毒な事であるよ。
人質さんたちは馬車溜まりの方に歩いて行く。
何もなければ良いのだけれどね。
リンダさんに今日中に潰せと言うべきだったか。
だが、まあ、それは無理だしなあ。
三日でも割と無茶ぶりだよね。
私たちはタラップを上がり船内に入った。
【格納は私がやりますので、マスターはお着替えをどうぞ】
「ありがとう、おねがいします」
蒼穹の覇者号の自動操縦も便利だなあ。
私とコリンナちゃんとアダベルがスイートに入ると、カロルは居なくて部屋が綺麗になっていた。
アンヌさんがお掃除したかな。
きっちりした人だ。
ダルシーが現れて私のドレスを脱がしてくれた。
はー、ドレスを脱ぐとすっきりするな。
結った髪をほどいてラクチンラクチン。
「マコトさま、次は礼服をお召しになりますか?」
「おねがいね、ダルシー」
「かしこまりました」
飛空艇はフォンフォンと音を立てて空中に浮かび上がった。
アダベルはコリンナちゃんに手伝って貰ってドレスを脱ぎ、下着を脱ぎ飛ばして全裸になり、鱗服をまとった。
下着も鱗でできてるのか。
「ふー、ドレス姿は窮屈だな、すっきりしたよ」
「同感ね」
私に礼服をざっと着せると、ダルシーはコリンナちゃんのドレスを脱ぐのを手伝った。
背中がチャックじゃなくて、組紐だから、人手がないと脱げないのよね。
チャックみたいな物は近代工業力が無いと量産できないからね。
ダルシーが再び私の礼服を整えてくれて、ピシっと決まった。
姿見を見るとすんげえ美少年がおる。
「うお、マコト、格好いい」
「凄いなあ、なんだかマコトなのにドキドキするよ」
「ふふ、ありがとう、コリンナ、アダベル」
宝塚っぽく言うと、コリンナちゃんもアダベルも、ポッと赤面した。
効果は抜群だ。
「格好いい格好いい」
「すげえなこれ」
「コリンナくん、僕は君を心から愛しているよ」
「や、やめろいっ」
コリンナちゃんが赤くなってよろよろした。
ダルシーもよろよろした。
すげえ効き目だ。
「マコトさま、抱きしめても良いですか」
「駄目です」
何を言うのかダルシーよ。
「僕は何時もダルシーの事を思っているんだぜ」
「ほわわわ~~」
ダルシーの腰が抜けおった。
鏡の中を見ると、イケショタで、美貌がすげえなあ。
よし、カロルにも効くかな。
けけけけ。
ダルシーが持ち直して、コリンナちゃんとアダベルと私のドレスを畳んだ。
「こちらは洗濯をして待合室に仕舞ってよろしいですか」
「おねがーいっ、ダルシー」
「あ、お願いできるかな、洗濯屋に頼むと高いから」
「お任せください、アダベルさま、コリンナさま」
良いドレスの洗濯は技術も要るし、高いのよね。
実際はカリーナさんに教えて貰ってダルシーが洗濯するかな?
「コリンナちゃんはドレスのままでも良かったんじゃない?」
「やだよ、マコトが主役なんだから私は下働きだから制服でいいだろ」
「どっか行くの~~? ふわぁ~~」
「ちょっとカロルの所にね、アダベルは学園長の家に帰って寝なさい」
「わかったー、カロルによろしくなー」
飛空艇は降下をはじめた。
さて、カロルの所に行って後夜祭をはじめよう。
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