第532話 輪舞を踊ってダンパも終わり
ジェラルドがやってきて手を上げた。
「いや、すまない、パートナーを放っておいて悪かったね」
「い、いえ、ジェラルドさまもお忙しいのですから……」
「ジェラルド、ご飯は食べた?」
「テラスの上で頂いた、あっ、コリンナさんも食べるべきだったか」
「い、いえ……」
「そうするべきだったね」
「そうか、それは申し訳無かった、僕もダンスパーティは初めてでね、次は気をつけるよ、コリンナさん」
「は、はいっ!」
なんだー、秋のダンパもコリンナちゃんを連れ回すつもりかー、貴様ー。
と、ジェラルドを睨んでいたら、コリンナちゃんにお腹をつねられた。
解せん。
「そろそろダンスパーティも終わりだね」
「そうだ、輪舞曲が入り、最後のワルツでダンスパーティは終了する」
「最後のワルツぐらいコリンナちゃんと踊ってあげなさいな」
「そうだな。コリンナ嬢、最後のワルツをご一緒にいかがかな?」
「喜んでお受けいたしますわ」
コリンナちゃんの頬が赤らんで可愛いな。
ジェラルドもにやけおって、こやつめが。
おっと、アダベルをお養母様に引き合わせないと。
ついでに輪舞曲をみんなで踊るかな。
「アダベル、ホールの方に行きましょう、お養母様が会いたいっていってたわ」
「そうかー、マコトのお父ちゃんは二人居るんだよな、パン屋のお母ちゃんには会ったぞ」
「男爵の方のお養母様よ」
「人間の親子関係は複雑だなあ」
まあ、そうやね。
とりあえずアダベル確保である。
「そろそろ輪舞曲だから、みんなで踊ろうよ」
私が声を掛けると、派閥員がぞろぞろとやってきた。
メリーちゃんが私を見ている。
「メリーちゃんも踊ろう」
「い、良いのですか?」
「みんなで踊るのが輪舞だから堅いことは言わないでしょ」
「うんっ!! アダベルちゃん一緒に踊ろうっ!」
「踊ろう踊ろう」
うんうん、ダンスは楽しいからね。
みんなでぞろぞろと、大ホールに戻る。
聖女派閥溜まりのお養母様にアダベルを連れていく。
「お養母様」
「まー、あなたがアダベルちゃんねっ、噂通り可愛いわ。私はマコトちゃんのお母さんよっ」
「マコトのお母さんっ、綺麗だねっ」
「まあ、嬉しいわねっ」
お養母様はアダベルをぎゅっと抱きしめた。
微笑ましい光景である。
お養父様はうらやましそうである。
「お養父様もお養母様も、輪舞をしませんか? 義兄様も、お義姉様も」
「次は輪舞か、よし、踊ろう」
「ダンスなんか、しばらくぶりね」
「よし、ジャンヌ踊ろう」
「そうね、ブラッド」
ちょうど曲が終わったので、みんなでホールに出て列を作る。
今度の曲は大小の人の輪を作って踊る奴であった。
みんなで手を繋ぐ。
アップテンポの曲が響き渡りダンスが始まる。
ああ、ダンスは楽しいな。
中の輪に外側の輪が縮まり広がり、ホールにお花のように広がる。
新入生歓迎ダンスパーティも次のワルツで終わりだ。
凄く楽しかったなあ。
暗殺騒ぎで中座したのが勿体なかった。
まったく竜の顎め、必ず殲滅してやる。
主にリンダさんと、ローランさんが。
踊っている皆は笑顔だ。
コリンナちゃんも、ジェラルドも、コイシちゃんも、オーバンさんも。
メリーちゃんも、アダベルも。
ああ、やっぱり、カロルが居ないのが寂しいよ。
次のダンパには誘いたい。
学生時代は思い出を作ってなんぼなんだからね。
中の輪が小さくなり、外の輪がとても大きくなって曲が終わった。
やっぱり踊りやすい曲が挟まるのはいいね。
カトレアさんも怒られなくて済むし。
みんな笑い合いながら輪を壊し、ホールの端のたまり場に戻る。
私の前に、エルマーがやってきた。
「最後の……、一曲を……、踊って……、いただけませんか……」
「ありがとうございます。謹んでお受けいたしますわ」
見れば、エスコート役の人とペアを組んでホールに出る人が多いね。
カトレアさんも硬い表情でナゼールさんと組んでいる。
コリンナちゃんも、ジェラルドと組んでいるね。
ぶんちゃっちゃと曲が始まり、私たちは寄り添い踊り始める。
「今日は……」
「うん」
「楽しかった……、ありがとう……」
「エルマーもありがとうね、私も楽しかったよ」
私が笑顔を向けるとエルマーははにかんで笑った。
「秋も……、エスコートを……、しても……、いいかな……」
「そうね、秋も一緒に出ましょうか」
「ダンスを……、練習する……、ダンスは……、楽しい……」
「ダンスは楽しいね」
異性同士でこんなに密着する事は無いからなあ。
なかなか官能的だ。
上手い人と踊ると凄く楽しいし、気持ちが寄り添い合う気がするね。
舞踏会なんかって舐めてたけど、良い文化だよね。
恋の華が咲いちゃうわけだよなあ。
最後の曲が終わり、拍手が鳴り響いた。
こうして私のデビュタントである、新入生歓迎ダンスパーティは終わった。
さて、礼服に着替えて、もう一つのミニダンスパーティに行くぜ。
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