第531話 食事ホールで派閥員の様子をみる
「お義兄様はいつ頃国境砦に戻られますか?」
「ん、明日には出発しないと間に合わないけど、どうしてだい?」
「飛空艇でお送りしようかと思いましたの」
「おおっ!」
ブラッドお義兄様の所属部隊は国境の砦なんで、王都から行くには馬で三日とかかかるんだよね。
飛空艇で行けば、数時間なので、その間は実家でのんびりしたり、ジャンヌさんとデートしたりできるわけさ。
「それはありがたいが良いのかい? 飛空艇を私用に使っても」
「あれは私の魔力で動いている私の飛空艇ですので、なんら問題はありませんよ」
「ブラッド、そうしなさいな、そうすればもう少しゆっくりできるわ」
「そうね、ブラッドはいつもとんぼ帰りだから、もうすこし一緒に居たいわ」
「そうだね、マコトに甘えようかな」
北方砦はジーン皇国との国境に接してるから、いろいろときな臭いのだ。
戦争が起こったら一番最初に攻められる場所だ。
「北方砦なら片道三時間という所ですわね。水曜日のお昼から行きましょうか」
「授業は良いのかい?」
「午後の魔法実習はやることがありませんから、結構自由にうごけますよ」
「わかった、水曜日のお昼に学園に来るよ。お昼は僕とジャンヌと一緒に食べるかい?」
「いいですね、お義兄様」
そうか、ジャンヌさんも飛空艇に乗せればいいね。
どうせ、王都に帰ってくるんだし。
さて、お養父様とお養母様に挨拶もしたし、聖女派閥の皆の顔を見てから、誰かと踊るかな。
「それでは、お養父様、お養母様、派閥員の様子を見てきますね」
「うむ、行ってきなさい」
「あの可愛い竜人のアダベルちゃんを紹介して頂戴」
「あら、お養母様はアダベルと初対面でしたか」
「ええ、お父さんがアダベルちゃんの自慢をするから悔しくって」
「はっはっは、アダベルちゃんは可愛いからな」
お養父様も何をしているのか。
アダベルめは食事ブースに張り付いているだろう。
何曲か後に円舞曲があるので誘ってみるかな。
聖女派閥溜まりから出て、食事ホールに行ってみる。
途中、また、カトレアさんがナゼール先輩に捕まって説教されているようだが、見なかった事にしよう。
こっちを見る目が助けてーと言っているが知らぬ。
自己責任であるよ。
食事ホールはだいぶ人が少なくなり、アダベルがお皿を持ってお料理を運搬していた。
「また食べてるの?」
「これで、お料理は完全制覇だよっ、やっぱりミニステーキが美味しかったね」
なんだかアダベルなのにグルメさんみたいな事を言うなあ。
食事卓にメリーちゃんとナタン君、ジャコブくんとお母さん、マルスランくんとお姉さんがいてご飯を食べていた。
なんだか、みんな仲良くなったみたいでいいね。
同じ不幸にあうと仲間意識のような物が芽生えるっぽい。
コイシちゃんとオーバンさんがいて、事件の関係者と話していた。
「あ、マコトしゃんがきたみょん」
「わあ、聖女さまっ」
メリーちゃんが駆けよって来た。
うんうん、可愛いね。
「メリーちゃん、ご飯食べた?」
「食べました、アダベルちゃんが美味しい物を教えてくれてすっごく楽しかったっ」
「私のセレクションに間違いは無いっ」
アダベルセレクションか。
食いしん坊だから、たしかに信頼はできるかもしれないね。
「コイシちゃんはオーバンさんとずっと一緒なの?」
そう言うと、コイシちゃんははにかんで「うん」と言った。
気があったんだなあ。
「武道の話とかもできるみょん。出会えて嬉しかったみょんよ」
オーバンさんは、頭をかきながら、はははと笑った。
「僕はこのガタイの大きさなんで、なかなか女の子とダンスの機会なんか無かったんですが、こうしてコイシ嬢とご一緒できて、とても嬉しかったですよ」
「今度、一緒にどこかに行こうみょんよ」
「良いですね、槍試合とか興味はありますか」
「見たいみょん、見たいみょん」
コイシちゃんはコケシみたいに可愛いからなあ。
なかなか良い出会いだったようだ。
ちなみに槍試合というのは、トーナメントの事だ。
腕自慢の騎士達が馬に乗ってすれ違いざまに槍を使って相手を落とす競技だね。
日曜日とかに、国営競技場とかでやっている。
騎士系の生徒のデートコースだね。
ゲームでは、カーチス兄ちゃんとか、ケビン王子とかと一緒に行くと好感度が上がる。
カトレアさんもナゼール先輩と出会ったようだし、ダンスパーティとは本当に男女の出会いに良い行事なんだなあ。
少子化の前世日本でもやれば良いのに、男女で密着するダンスと、強制的にパートナーを作らないと参加できない縛りがあるんで、出会いに良いよね。
コリンナちゃんが食事卓でお茶を飲んでいた。
「お帰り、マコト」
「あれ、ジェラルドは?」
「テラスに上がったままだね」
ふわー、それは寂しい。
「誰かにダンスを誘われたりしなかったの」
「カーター部長とか、セシルさんと踊ったよ。あと、ライアンさんだな」
ペンティア部人脈と派閥員かあ。
やっぱぐりぐり丸眼鏡が男避けになってるかなあ。
「人質の人から事件の顛末は聞いたよ、秘密結社を潰すんだって?」
「うん、リンダさんとローランさんがね」
「ローラン? ああ、『塔』の諜報の人」
「そうそう、あっちに丸投げで私は特に何もしないよ」
「そうか、それがいいよ、マコトは働きすぎだ」
「ダンパが終わったらのんびりするよ」
「それが良い」
麻薬畑を焼いて山高帽を何とかしたらね。
と、思ったがコリンナちゃんには黙っていた。
あれは転生者である私が一人で片付けるから。
凄いチート持ちで生まれてきて、凄く素敵な人たちと知り合えた恩返しを、この世界にしないとね。
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