第530話 ホールに下りて男爵家の家族と談笑する
王様にご挨拶をして、私はテラスから下りる。
王妃さまがお食事をしていったらと誘われたが、さっきたらふく食べたから丁寧に辞退したのである。
というか、ロイヤルファミリーの団らんをあまり邪魔するのは心苦しいのだ。
大階段を下りて行くと、近衛ハゲが般若みたいな顔をして立ち塞がった。
「教会は王家とどんな取引をしたのだっ」
「王様に聞きなさいよ」
「私はお前から聞きたい、聖女よっ」
なんだか、さっき口論したから、けんか腰だね。
やれやれ。
「秘密結社竜の顎は聖騎士団が追い詰めます。『塔』とも協力はしますが、近衛騎士団に出番はありませんよ。そちらが掴んでいる構成員を捕まえるのは問題ありません」
「秘密結社退治のような栄光ある仕事は近衛騎士団がやるべきである! 教会がでしゃばるなっ!」
んー、王家が高位貴族相手に捕り物をすると遺恨が残るんで、教会戦力が前にでたほうが良いと思うんだけどね。
「じゃあ、あなたがリンダさんに協力するって近衛騎士団を連れていきなさいよ」
「……リンダは、その、怖いから嫌だ。近衛騎士団だけでやりたい」
ケビン王子が見かねたのか、階段を下りてきた。
「おじさん、あまりキンボールさんに無理を言ってはいけないよ」
「で、ですが、聖騎士団が我々の縄張りを侵そうと……」
「暗殺未遂があったあと、素早く飛空艇を呼び出して人質を救出したのはキンボールさんのお手柄だしね。近衛騎士を動かしていたら、解決は深夜になっていたはずだよ、ダンスパーティの警備から、近衛は外せないからね」
「た、確かに迅速な解決ではありましたが、その、聖女は僭越というか」
まったくもう、人の命よりも面子の方が大事なのかよ。
ハゲは使えないなあ。
教会戦力が得点を挙げたのが気にくわないっぽいね。
ジャックさん、リックさんがどこからか湧いてきた。
「まあまあ、団長」
「まあまあ、団長、ちょっと休みましょうよ」
「お前達は聖騎士団に縄張りを荒らされて平気なのか」
お、コロンブさんも寄って来た。
「まあまあ団長。先任優先の原則が有るじゃ無いですか。秘密結社退治に着手したのは教会なのですから、ここはお手並みを拝見しましょう」
「そ、そうか? だが、俺はどうにも納得できんのだ」
「今日は団長は警備しっぱなしですので、少し休みましょう」
「そうですよ、何か言いたいことがあれば、俺たちが聞きやすよ」
そう言って、近衛騎士の三人は団長を連行して、隅の方へ連れていった。
なんだなあ。
近衛騎士って大変な仕事だなあ。
上司がハゲだと。
だが、助かった。
ありがとう、近衛三勇士。
聖女溜まりに行くと、お洒落組とお養父様、お養母様がおしゃべりをしていた。
「お養父様、お養母様、ごめんなさいね、挨拶も無しに出て行ってしまって」
「おお、マコト、すばらしく可愛いじゃ無いか。素敵だね」
「本当に、素敵なドレスよ、妖精みたいな感じね」
お養父様もお養母様も、事件の事も聞かないでドレスを褒めてくださった。
なんだか嬉しいなあ。
「で、暗殺未遂だって、どうしたんだい?」
「そうそう、噂ばかり流れて来てやきもきしていたのよ」
あ、違った。
単に、褒める挨拶だったようだ。
「とりあえず、悪漢達は捕まえましたし、人質も救出しましたよ」
「さすがは飛空艇の機動力だね。すばらしい」
「怖い事は無かったの? あまり危ない事はしては駄目よ」
「はい、お養母様、大丈夫です」
これからの危ない事は、リンダさんと、ローランさんに任せたから大丈夫。
全部丸投げだよ。
曲が終わると、ブラッド兄さんがジャンヌさんを連れて聖女派閥溜まりに戻ってきた。
ダンスをしていたらしい。
「わあ、マコト、綺麗だねっ。暗殺未遂事件は大丈夫だったのかい?」
「なんら問題ありません、ブラッドお義兄様。ジャンヌお義姉様もご無沙汰です」
「まあっ、素敵なドレスね、マコトちゃん。わあ、やっぱり可愛いわあ」
「ありがとうございます、お義姉様。お義姉様も、とっても素敵ですよ」
「ありがとうっ、うれしいわ、マコトちゃん」
ジャンヌお義姉様はアルエ男爵家の次女さんで、お義兄様とは学園で知り合って婚約した。
明るくて綺麗で良い人だよね。
「このドレス、安いんですよ、男爵グレードで王都価格の半額です」
「えっ、本当!! 詳しく教えてっ!!」
「生糸の産地のマーラー領で作ってるんですよ。飛空艇で運んだから関税が掛からないんです」
「まあ、それは凄いわねっ! ウエディングドレスとかも作れるかしら」
ヒルダさんが足音を立てずにすすすと移動してきた。
「はい、ウエディングドレスも大丈夫ですよ、領袖のお義姉様ですので、お勉強させていただきます」
「まあ、これは素敵だわ、うちの領も色々厳しいから、助かるわ」
ウエディングドレスは女性の実家持ちなんだよね。
まだ結婚してる訳ではないので結婚式に掛かる費用は折半なのだ。
家と家の婚姻だからね。
「マコトさまはドレスのデザインもするんですよ。私のドレスもデザインしてもらいましたのよ」
メリッサさんがドレスを見せて自慢した。
フリフリタイプは自慢の逸品だな。
「まあ、素敵ね、メリッサさま。マコトちゃん、私のもお願いして良いかしら」
「喜んでデザインしますよ」
結婚祝いみたいな物だからね。
とびきりのデザインを作ってあげよう。
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