第520話 エルマーとダンスをする、ダンスホールを観察する
エルマーと向かい合ってお互いにお辞儀をする。
肩と肩が寄り添い、え、というぐらい密着する。
ちょっと恥ずかしいね。
腰に手を置かれる。
リズムをとって、ステップ開始。
お。
お。
お。
意外にエルマーはダンスが上手いな。
くるりくるりと回される。
しなやかで綺麗な動き。
うん、楽しい。
くるくる回されてスカートがふわりと広がる。
「上手いね~」
「マコトの……、為に……、練習したよ……」
きゃーっ!
なんだか凄く嬉しいなあ。
というか、ダンスって恋愛を進める儀式なんだなあ。
実感したよ。
エルマーが微笑む。
私も微笑む。
なんだか幸福感でいっぱいだ。
ダンスの競技ではないから、難しい動きとかはない。
体を寄せ合って、ステップを踏んでいくだけだ。
それでも楽しいね。
異性の体と接しているだけで、こんなにも楽しい。
テンションが上がるなあ。
「マコトは……、踊りやすい……」
「エルマーは誰と練習したの?」
「主に……、カーチス……」
ぷっと吹き出してしまった。
それは踊り難そうだ。
ダンスと言うよりも柔道じゃないのかね。
この世界、柔道は無いけどね。
くるくると回される、
いやあ、ダンスは楽しい楽しい。
ふと見ると、ホールの中心にケビン王子とビビアンさまが踊っていた。
私なんかも真ん中よりだけど、ダンスに自信が無い人はホールの端っこによっていくみたいね。
ケビン王子もビビアンさまも堂々としていて上手いな。
華麗にくるくる踊ってらっしゃる。
さすがは公爵家でC組であるよ。
ダンスはみっちりやってるねえ。
動きに切れがある。
C組の子たちは、学園だと出来んぼでお荷物なんだけど、ダンパになると強いね。
まんなか辺りに残ってる女の子は軒並み知らない子だ。
ダンス部とかもあったはず。
ゆりゆり先輩とエステルさまも真ん中近くに残っていて華麗に踊ってらっしゃる。
さすがに三年生はこなれているね。
実に優美で素敵。
ホールの端っこで、ひときわでっかくオーバンさんが見えて、ふところにコイシちゃんが仕舞われて踊っておった。
あまりの身長差なので、オーバンさんは中腰で踊っているな。
それでもなんとかダンスにはなっているようだ。
お隣では、カトレアさんが黒騎士の卵のナゼールさんの脛にキックを打ち込む仕事をしていた。
「カトレア、お前はダンスが下手すぎる」
「うう、すいません先輩」
「これは組打ちの一種だと思え」
「はいっ!」
なんだか、あの一角だけダンパじゃないな。
ケビン王子とビビアン様を挟んで反対側で、学園長とアダベルが踊っていた。
おお、なにげにアダベルがちゃんと踊っているな。
あの子は飲み込みが早いから、もうダンスのステップを覚えたっぽい。
さすがはドラゴン、高スペックであるね。
ジェラルドとコリンナちゃんもそつなく踊っている。
あんまり面白い感じのダンスじゃないけど、目立った欠点も無い。
実務家同士らしい堅実なダンスだな。
でも、ジェラルドもコリンナちゃんも時折微笑みを浮かべているから、楽しんでいるのだろう。
何よりだね。
私たちの横を、ロイドちゃんとジュリエットさんの組が通り過ぎる。
ロイドちゃんも、ジュリエットさんも上手い。
さすが。
そして厨二ドレスは目立つ。
とびきり目立つね。
くるりくるりと回るとフリフリが広がりとっても派手。
聖女派閥の人はみな光るリボンを付けてるので目で探しやすいね。
ヒルダさんが隙の無い動きで男性とダンスをしていた。
というか、彼女のパートナーを紹介されてないな。
マーラー領関係者かな。
なんとなく動きが精密だし。
真っ黒い闇のようなドレスで超絶な美貌のヒルダさんか格好いいなあ。
くるくると、毒蜘蛛令嬢は踊る。
カーチス兄ちゃんとエルザさんのコンビがすこし向こうで踊っている。
運動神経が良いからか、結構堂々と踊っているな。
エルザさんもしなやかな感じでとても良い感じ。
やっぱり、身分が高いと踊りもちゃんとやらないといけないから上手い人が多い。
綺麗だなあ。
私の視線に気がついたのか、カーチス兄ちゃんがドヤ顔でこちらを見た。
マリリンとカーター部長と、メリッサさんとセシルさんの姿も見える。
お洒落組は夜会が縄張りみたいな物だから綺麗に踊るね。
ちょっとセシルさんがぎこちないかな。
陰キャの生徒は二年生でもデビュタントだからね。
マリリンのマーメードドレスは異彩を放ってすごく目立つね。
みんなが注目している。
彼女はゴツイ体つきなのだけど、マーメードの魔力でそれが魅力に変わってとてもかっこ良く素敵だ。
ライアンくんと、婚約者のキトリーさんも問題無く踊ってるな。
秋にはキトリーさんのドレスを作らないか誘ってもいいね。
みな、ダンスパーティを楽しんでいるようでなによりだ。
「マコトは……」
「うん?」
「いつも皆を見て……、気を配って……、そういう……、所も……、素敵だ」
もー、やめろよー、エルマー。
まったく口が上手いなあ。
頬が緩んでしまうよ。
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