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第505話 集会室で女子トークを聞く

 アダベルと一緒に中庭を抜けて集会棟へと向かう。

 集会棟前のベンチで男子どもがのたくたしておるな。

 というか、男子はここのベンチが好きだな。


「おお、マコト、アダベルおはよう」

「おはよう、カーチス、エルマー」

「おはよ……」

「なぜベンチに?」

「中が女の園になってるので入りにくい」

「しかり……」


 ああ、なるほど、確かに女子ばっかりの部屋には入りにくいわな。


「今日はクララのパンワゴンだろ、何を食おうかな」

「クララの……、マヨコーンも……、なかなか」


 男子どもは胃袋に支配されておるようだ。

 ダンスパーティの当日だと言うのに。


「じゃあ、後でね」

「おーう」

「うん……」


 私は女子なので女の園でも抵抗はないぜ。

 ドアを開けるとアダベルがとととと小走りで入っていった。


「こんちは、みんなっ」

「あら、アダベルさま、マコトさま」

「良い天気でようございましたね、ダンスパーティ日和ですわ」


 お洒落組のメリッサさんとマリリンが私とアダベルを迎えてくれる。

 あとは、剣術組のカトレアさんとコイシちゃん、エルザさんもいるな。

 みな、おしゃべりしていたようだ。

 カロルとコリンナちゃんはまだみたいね。

 部屋の奥でヒルダさんがいて、お針子さんが忙しそうにドレスを直していた。

 近寄ると、ヒルダさんがふんわりと目礼してくれた。


「間に合いそうですか」

「はい、十二時には確実に」

「がんばってますよう」

「今が楽しい時間です」


 お針子さん的には根を詰めて運針している時間が楽しいのだろうね。

 私もオタクであったからなんとなくその感じは解る。

 どっかのゾーンに入ると自分が無くなる感じで手だけ動くんだよね。

 なんか、自分より高次の存在と接続してるような不思議な感じ。

 前世の世界には表向き魔法は無かったんだけど、隠されてなにかあったよね。

 芸術とか音楽とか舞踏とかの奥の方になんかが見えた気がしたよ。

 うんうん。


「ああ、今日この日をまっていましたわ」

「そうですわ、女子の本懐を遂げる日なのですわよ、メリッサさま」

「そうね、マリリン、子供の頃からデビュタントを待ち望んでいましたの」

「ですわねですわね、私もですわ」


 うーむ社交系のお嬢様の気持ちは良くわからないなあ。

 わたしゃ基本的にパン屋の娘だからなあ。

 社交系貴族令嬢だと一生に一度の思い出なんだろうね。


「やはり令嬢にとって初夜会はドキドキするものなのか、コイシ」

「北の方だとあまりやらんみょんからなあ。わからんみょん」

「家訓では夜会について言い残しておらんからなあ。初戦はついくさの心得は沢山聞いたのだが」


 武術組の言い草も凄いな。

 こっちはこっちで朴訥すぎはしないか?

 ピッカリン家には女子はいなかったのかね。

 エルザさんはそんな二人をニコニコしながら見ているな。

 ちゃんと教導してやってくださいよ。


 テーブルに着いて聞くとは無しに周囲の会話を聞いていたら、ダルシーが現れてお茶を入れてくれた。

 ありがとうダルシー。


「アダベルさまもお飲みになりますか」

「ありがとっ、くれくれっ」


 ダルシーがアダベルにお茶を入れていた。

 というか、またクッキーを食べておるな。


「アダベル、お昼ご飯入らなくなるよ」

「へーきへーき、クッキーは別腹」


 そんな事はないのだが、まあ、竜だからなあ。

 人よりは沢山食べるようだ。


 かぷりとお茶を飲むと美味しい。

 だんだんとダルシーの腕が上がっているね。

 ニコッと笑ってサムズアップするとダルシーは凄く嬉しそうに笑った。


「マコトさまはさすがに落ち着いておられますね」

「ん、ワクワクしてるよ」

「怖くはありませんの?」

「夜会でしょ、ダンスしてお料理食べてダンスしてって楽しむ物よ」

「さすがですわ、毎年大神殿で年越しのご挨拶を大群衆相手になされるだけはありますわ」


 まあ、毎年クリスマスにあたる聖夜祭とか、大晦日にあたる年越し祭で講話するけどさ。

 ああいうのは教会スタッフがシナリオを先に書いてくれてるので楽なのよね。

 夜なんでテラスからの人混みってよくわからないし。

 大群衆って上から見ると夜の海みたいな感じなんだよね。

 聖女候補はそういう人前でのお話経験値が高いだけだよ。


「とりあえず、お料理ブースが楽しみ、メインの料理を作るのは展望レストランかな」

「黄道亭本体が来たって噂もありましてよ」

「始まらないとわからないのですわ」

「今年は王子さまが入学してるからね、王家も張り切ってるって噂よ」


 ヒルダさんとかは知ってそうだけど、あまりそういう噂っぽい事は話さないのよね。

 さすが諜報のプロって感じ。


「チョコミントボンボンが楽しみですわ」

「早めに行って食べませんと」

「でも一曲はエスコート相手と踊りませんと恥ずかしいですわ」


 ダンスパーティでは、一緒に入場したエスコート相手と一曲踊ってから自由時間となるわけ。

 意中の人をダンスに誘っても良いし、続けてエスコート相手と踊っても言いわけさ。

 ケビン王子は上のテラスで踊るのか、それともホールに下りてきて中央で踊るのかな。

 なんでもそつなくこなすケビン王子だからダンスも上手いだろうね。


 人気のある男女はひっきりなしにダンスを申し込まれて大変らしい。

 私はエルマーの後に、カーチス兄ちゃんと踊ったらご飯を食べにいこう。

 らくちんらくちん。


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[気になる点] 「やはり令嬢にとって初夜会はドキドキするものなのか、コイシ」 初の夜会なのか、初夜の会なのか…… わたくし初め、「初夜」会と言う如何わしい会に勘違いして「御令嬢なのに貞操観念緩い…
[気になる点] もうそろそろ登場人物紹介更新してくれるとありがたいです。 [一言] マコトに気負いがないのは聖女経験値の方が高く作用してるんだろうな。パン屋だって緊張するときはするでしょw
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