第503話 図書館の地下にお養父様(とうさま)を見に行く
ダンスフロアでサーチしたが、特に何も無いようだ。
爆弾も毒ガスもないね。
王家が主催する学園パーティーなので、そういう派手な攻撃は来年からなのかもしれない。
警備がかなり雑だと思ったのだが、この世界は電子機器がないので前世のような監視システムを組める訳でもないと思い直した。
中世後半だからなあ。
根性を出せば王族でも暗殺できるぐらいの世界なのだ。
コワイコワイ。
サーチの魔法があって良かった。
「さて、帰ります」
「ありがとうキンボールさん、助かったよ」
「仕込みが二つ見つかったのは朗報だ、あとはダンスパーティが始まってからのトラブルだな」
「一応、聖女派閥でも気を付けるけど、王家の方で何とかしてね」
「わかった、気を付けよう」
さて、帰ろう帰ろう。
廊下の時計を見ると、もう十時だな。
「偵察にきて良かったわね」
「本当です」
「サーチの魔法が強すぎるよね」
「味方が持っている分には心強いです」
それもそうか。
私たちは階段を下りて、裏口から王城を出た。
何回も入って、結構王城の地理をおぼえたな。
卒業ぐらいには隅々まで覚えそうだな。
門番さんに挨拶をして、王宮門を開けてもらい、学園に戻った。
「さて、お昼までどうしようかな」
「あ、私は錬金してるね」
「んもう、カロルは真面目だなあ」
「私はお針子の監督をしてまいります」
「お針子さんは集会室?」
「そうです、もう働いてますよ」
さすがはマーラー領民、勤勉だなあ。
紡績縫製は毎日ちまちまやらないと成果物が溜まらないからね。
二人が行ってしまった。
私はどうするかなあ。
お昼ご飯までやることが無いな。
だらだらしてるか。
なんだか入学してから、いつもガーっと走ってる感じだしね。
ぼんやりしているかな。
手すりが作りかけの池のほとりで水面に映る日の光をぼんやりと眺める。
日が当たると暖かいな。
「マコトーーーッ!!」
アダベルがどどどと走ってきおった。
「なによ、アダベル、午前は勉強じゃ無いの?」
「日曜日は、休みだーっ!! 遊ぼう遊ぼうっ!!」
おお、アダベルも日曜はお休みか。
あ、そうだ、図書館にお養父様の偵察に行こう。
そろそろ家に帰って着替えてもらわないといけないぞ。
「図書館の地下に行くんだけど、行く?」
「あ、行った事ない、図書館って本がいっぱいある場所だよねっ」
「じゃあ、行こう」
「行こう行こう」
アダベルは無邪気だなあ。
私はアダベルの手を引いて図書館に向かった。
渡り廊下横の階段を使って上にあがり、図書館の中に入った。
ルカっちがカウンターで本を読んでおる。
いつも、本を読んでるなこいつ。
「ルカっち、地下の作業は終わったの?」
「もうちょっとらしいな、邪魔だから上に行けと言われたよ」
それでカウンターで本を読んでるのか。
「お、珍しい、竜人?」
「アダベルだよ、飛空艇に乗ってた時に会わなかったっけ?」
「子供の世話は主にヤツキノに頼んでたからなあ」
「こんちゃーっ!! この前お話聞かせてもらったよっ」
「そうかそうか。こんにちは、ルカだよ」
「ルカーっ!! マコトみたいに呼んでいい?」
「いいよ、アダベル」
「ルカっち! ルカっちっ!」
アダベルは嬉しそうに笑った。
「アダベルトって男性名な感じだけど誰がつけたの?」
「なんか、村人が呼んでた~~」
「一般人に竜の雌雄は解らないからね。アダベルだと女の子の名前っぽくて可愛いね」
「うん、私も好き~~」
意外にルカっちとアダベルの相性は良いみたいだね。
というか、アダベルって竜のくせに人なつっこいよな。
「そいじゃ、またねルカっち。あ、そうだ、ルカっちはダンスパーティに出るの?」
「でないでない。本を読んでたほうがましだ」
「私は出るんだよっ!」
アダベルがふんすという感じにドヤ顔をした。
「へえ、ドレス買ったの?」
「作って貰ったっ、可愛い!」
「アダベルのドレス姿だけ見たいな」
「あとで集会室にこい、すっごい私を見せてやるっ」
「うん、あとで行くよ」
私はアダベルの手を引いて階段を下りた。
「本がすげえたくさん」
「アップルトン王国の英知がここに詰まってるのよ」
「すげえすげえ」
アダベルは興味深そうに本棚を見回した。
ここらへんの本は、まだアダベルには早いかな。
孤児院の蔵書ぐらいがちょうど良いかもね。
地下の入り口を開けて、踊り場から下を見ると、学者さんたちがまだなんかしているな。
お昼までに終わるんじゃ無いのかい。
まだ十時だけど。
「おー、広いなあ、地下凄い。ここからも飛空艇置き場に行けるのか?」
「行けるよ、地下道が繋がってるから」
「凄いなあ、楽しい」
ドラゴンだから洞窟好きなのかね。
螺旋階段を下りると、目の下にクマを作った学者さんばかりだ。
サーヴィス先生まで居る。
「あ、マコトくん、違うんだ、これは」
「言い訳とか良いですから」
奥のテーブルで何かの本を開いていたお養父様が私を見てビクンとした。
「お養父様、お昼には終わりそうですか?」
「お、おわるよ」
「四時から新入生歓迎ダンスパーティーですから、お昼にはお家に帰ってお風呂に入って礼服に着替えてくださいね」
「そ、そうか、む、もう十時か、あと二時間か」
テーブルの上の卓上時計をみてあたふたしている。
見に来て良かったな、これは。
とりあえず、ふらふらな学者さんにヒールを掛けておいた。
ヒールの効果は万能です。
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