第501回 ダンパ会場の偵察にいく
ブイイイイインとダルシーにドライヤーを掛けてもらう。
暖かくて気持ちが良いね。
さて、下着を着替えて制服を着て、お風呂完了だ!
「では、聖女派閥員はお昼まで自由行動、時間になったら集会室にきてね」
「はーい。マコトさまは午前は何をしてらっしゃいますの?」
「王宮のパーティー会場の偵察に行ってくるよ。なにか仕掛けられて無いか調べるよ」
「私も行こうか?」
「うん、いいねカロル、コリンナちゃんは?」
「特に役に立ちそうも無いので部屋にいるよ」
そりゃ残念。
「私もご一緒しましょう」
「ヒルダさんが来てくれると安心だね」
カロルとヒルダさんとで偵察に行ってくるか。
「ダルシー、ケビン王子かジェラルドがどこに居るか解る?」
「……ケビン王子とジェラルド様は共に王宮の三階にいらっしゃいます」
「パーティー会場か、ロイド王子は?」
「……ロイド王子は集会棟前の中庭で女生徒と歓談中です」
ジュリエットさんが憤然とした表情で駆けだした。
やばい。
カロルとヒルダさんを見ると共にうなずいた。
私たちも急ごう。
修羅場の前に要求を通さねば。
私たち三人はジュリエットさんを追っかけた。
幸いな事に彼女はあまり足が速くない。
すぐに追いついて併走する。
「とめるおつもりですか、マコトさま」
「いや、修羅場の前に王宮に入る許可を貰って行くよ。その後は好きにして」
「わかりましたわっ」
ジュリエットさんの顔が悪鬼になっておる。
というか、婚約者が焼き餅焼きと解っているのに、なぜ別の子に手を出すかな、あの遊び人王子は。
私たち四人が、中庭にどどどと入っていくと、ロイドちゃんは目を丸くして話していた子を押して距離を取った。
「ど、どうしたんですかあ、王子さまあ」
あ、脳みそが蜂蜜タイプだ、こりゃあ揉めるぞ。
「ロイド王子、王宮への立ち入り許可をください、パーティー会場の偵察に行きます」
「あ、ああ、そう……」
ロイドちゃんは冷や汗を浮かべながらポケットから羊皮紙を出してサインを入れた。
「は、はい、これで門番さんは通してくれるよ。で、その、だから助けてマコトっち」
「やなこったでございますっ」
私はロイドちゃんから羊皮紙をひったくると王宮門の方に歩き出した。
「ロイドさまああああっ!!」
「ち、ちが、ジュリエット、これは誤解だ」
ジュリエットさんの金切り声とどたばたとした物音と、蜂蜜の掛かったような悲鳴が聞こえたが、当方はいっさい興味が無い。
そのまま早足で歩いて王宮門着である。
門番さんにロイドちゃんのサインを見せると笑顔で通してくれた。
そのまま外苑道を歩いて裏口から王宮へと入る。
「こら、なんだ、貴様ら」
いきなり王国で一番会いたくないハゲに出会った。
「聖女一行だ、まかり通る!」
「む、ケビン王子に呼ばれたのか」
「呼ばれてない、これから交渉だ」
「むう、それでは王宮の通行を許可する訳にはいかん、これは近衛騎士団団長の私、フランソワが許さんっ!」
うるせえ、通せハゲ。
「ぶっころす?」
カロルの隣にチェーン君が立ち上がった。
うーむ。
「あら、どうなさったの、マコトさま」
「あ、これは王妃様、王宮に用がありましたが、近衛騎士団長が通してくれません」
「そうなのフランソワ?」
「い、いやその、なにやら曖昧な事を言いますので」
「良いじゃないの、聖女さまが王家を害するわけがありませんわよ」
「いたしません」
「わ、解った、王妃さまに免じて今回だけは見逃す、いいな」
そう言うとハゲは去っていった。
まったく、無駄に立ち塞がるなよ。
王妃様も肩をすくめた。
「フランソワは頭が固いから」
「ありがとうございます王妃様」
「良いのよ、昨日パーティー用の大事なチョコボンボンを食べてしまったから、そのお詫びよ」
「チョコボンボンの新作がありますが、少し試してみますか?」
「あらっ」
王妃さまは私が差し出したお酒ボンボンをつまんで口に入れ、目を細めた。
「お酒とは考えましたね、素晴らしい味だわ。これはどこに注文すれば良いのかしら」
「女子寮食堂で作っていますよ。今日は大車輪で料理を作ってますので、ダンスパーティ終わってから注文してくださいませ」
「そうね、お食事ブースにもチョコミントボンボンが来るようだし、明日頼んでみましょうね。ありがとう、教えてくれて」
「いえいえ」
そう言うと王妃さまはもう一個つまみ口にポイっと入れて去っていった。
くそう、十個しかないのに。
残り八個だな。
「いいなあ」
「いいなあ」
「八個しかないから駄目。強いお酒が入ってるからダンパの後でね」
カロルもヒルダさんも物欲しそうな顔だ。
でも、駄目ったら駄目。
階段を歩いて、三階まで上がる。
廊下の向こうにケビン王子とジェラルドがいた。
「おや、なんだね、キンボール」
「ダンスパーティ会場を偵察に来た。爆弾とか、毒ガスとか、無いとは思うけど」
「そうか、それは助かる、お前の感知魔法はすばらしいからな」
「助かるよキンボールさん、オルブライトさんも、マーラーさんも助かります」
「とりあえず、生徒が入ってくる順路と、会場をサーチしよう」
「そうだな、生徒は王宮門前でグループ分けされ、控え室まで誘導される。控え室は上級用、中級用、下級用の三カ所、それぞれの控え室の前にホールがあり、そこでエスコート役とカップルを組んで入場だ」
「それでは、王宮門まで戻って一緒にたどろうか」
「そうしよう」
私たちは王家主従を交えて階段を下りた。
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