第499話 そしてダンパの朝は明ける
マルゴットさんとカリーナさんがごそごそ着替えをする音で目を覚ました。
くああ、やっぱ飛空艇で遠出をした次の日はだるーい。
枕元に掛けた収納袋からマジックポーションを出して飲む。
すっぺーっ。
メイドさんたちが出て行ったので、ハシゴを降りて、洗顔して歯を磨き、用を足して、制服に着替えた。
コリンナちゃんも起きてきて着替えをしている。
ダルシーがケトルを持ってきてお茶を入れてくれる。
いつもの朝の風景だな。
ちょっとだけ違うのは、
「今日はダンスパーティだな」
と、いうところだね。
「うむ、やっと到達したね。色々大変だった、主に飛空艇を掘り出すのが」
「ドレスの関税の為に飛空艇を掘り出したのは前代未聞だと思う」
「なんでも最初はある」
「まあな」
コリンナちゃんはニヒルに決めて、お茶をすすった。
今日も良い天気でダンパ日和だね。
良い一日になれば良いけど。
「現場でなにか妨害が起こるだろうか?」
「わかんないね、ワインをぶっかけられるぐらいは起きそうだけど」
「マコトは障壁があるから大丈夫だな。私もジェラルドさまガチ勢からなんかされそう」
「なるべくジェラルドから離れないようにしなさいな」
「……しょ、食事中も一緒は恥ずかしいよ」
ああ、想い人の前でバクバク食べるのは恥ずかしいか。
あと、食事ブースには酒とかソースとか危険物が多いしなあ。
「食事は剣術組と組んで行きなさいな」
「コイシちゃんと行くかあ、カトレアさんだと騒ぎを大きくしそう、エッケザックスを抜くぜ、きっと」
「抜くな、カーチスに止めてもらわないと」
なにげに聖女派閥員は目立つからなあ。
王子さま二人と仲が良いし。
ポッティンジャー派とは停戦してるが、下っ端は気を利かせてなんかしてきそう。
あとは命令さんがうっとうしい事を言ってきそう。
ハゲ近衛も出そうだし。
いろいろと頭が痛い。
「だが、色々とありそうだけど、楽しそう」
「そうだね、楽しむのが大事だね」
広範囲の爆弾とか、猛毒ガスとかは無いと思うが、一度、お昼に会場をサーチしておいた方がいいね。
あとでケビン王子と警備について聞いてみようか。
コリンナちゃんと一緒に部屋を出て施錠する。
そういや日曜日の朝食って初めてだな。
いつも土曜日は男爵家に泊まるからね。
お養父様とお養母様とはダンスパーティ会場で交流するのだ。
階段を降りてエレベーターホールに行く。
みんながもう揃っていておしゃべりとかしてるね。
「おはようみんなー」
「おはようございますマコトさま」
「おはようございます領袖」
「良い天気ねマコト」
みんなが口々に挨拶をしてくれる。
なんとなく雰囲気がウキウキしてる感じ。
初めての大きい学校イベントだしね。
みんなでぞろぞろと食堂に入る。
日曜日なので割と空いてるね。
クララがひどい顔をしてるな。
「どうしたの?」
「いやあ、メレーさんと朝まで飲んじゃって、はは」
そりゃあ、目の下にクマもでるよな。
今日のパンワゴンは大丈夫なのか。
とりあえず、肩に手を置いて、
『ヒール』
じゃ。
後でメレーさんにも掛けよう。
「わっ、すっとした、凄い」
「ヒールは万病に効くので」
まあ、傷とか具合悪いのとかなんでも効くがな。
本格的な毒とか病気だと専門魔法だけど。
回復魔法界の葛根湯と言えよう。
「助かったよー」
「お昼のパンはよろしくね」
「解った解った」
クララがにこやかに言った。
さて、メリサさんに甘々ポリッジを頼んで受け取る。
ケトルからお茶をカップについでトレイにのせる。
席に着いて皆を待つ。
「朝から聖女の湯ですって?」
「薬液を入れてから一時間しないと効き目が薄いそうですから、ちょっとしてからいきましょうよ」
「ですわね、でも混みそうですわ」
「聖女の湯でつるつるになってダンパにでませんといけませんわ」
「そうですわそうですわ」
聞くとはなしにまわりのおしゃべりを聞く。
うんうん、入れてすぐだと成分が落ち着かないのさ。
上手い事デマが広まっていて助かるね。
皆が来たのでご挨拶。
「いただきます」
「「「「「日々の粮を女神に感謝します」」」」」
ぱくぱく。
あー、甘々ポリッジは甘い。
美味しい。
つぶつぶがほんのり残ってるのがいいね。
つぶつぶ。
食べ終わったので返却口に食器を返す。
席に戻るとダルシーがお茶を入れてくれていた。
いつもすまないねえ。
「本日は新入生歓迎ダンスパーティです。これから大浴場で聖女の湯がありますので、派閥員の方は早めに入って下さい。その後、お昼まで自由時間です。お昼は聖女派閥としてクララのパンワゴンで買い込み済ませる予定です。食べ終わりましたら希望者は飛空艇でシャワーをあびてから集会室でドレスに着替えてください」
ヒルダさんが今日の予定を教えてくれた。
さすがに把握してるね。
「皆様のご協力で綺麗なドレスを着ての新入生歓迎ダンスパーティとなりました。ありがとうございます」
私がそういうと、そんなあ、とか、マコトさまがいたからこそ、とか言われた。
そうじゃないんだよ、みんなが前を向いて頑張ったからこの日が来たのだ。
これは我々の勝利なんだよ。
「なにか問題が起こったら、近くの派閥員を頼りましょう。私と、カロルと、コリンナちゃん、あと、ヒルダさんに相談してください。さあ、楽しい新入生歓迎ダンスパーティをはじめましょう」
「「「「はいっ」」」」
朝の食堂に元気な派閥員の声が響いたのであった。
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