第495話 晩餐を食べる、礼服の調整を思い出す
あー、お腹が空いた。
皆でどやどやと食堂へと向かう。
いつもとだいたい同じぐらいの時間だね。
食堂を見回すとアイーシャさんがいて、目が合うと手を振ってきた。
カウンターに向かう途中で近くに寄る。
「アイーシャさん、ドレス来ましたよ」
「ありがとうございます、後で集会室に行きますね」
「はい、試着して調整してもらってください」
視線を感じたので上級貴族ブースの方を見るとヘザー先輩が仕切りにもたれてこちらを半目で見ていた。
「そういや、ヘザー先輩もマルゴットさんも来ませんでしたね」
「用事があって遅れたら、船が出た後だったんだよ。マルゴットに責められた」
「責めました、婚約者なんてうっちゃっておけば良かったんですよ」
「そういうなよー、あいつダンパ好きだからさあ」
なんだ、婚約者に引っかかって遅れたのか。
「また、どこか行くとき誘いますよ」
「直近はどこ?」
……。
ポッティンジャー領の麻薬畑を焼くのにヘザー先輩は連れてはいけないね。
「直近はお養父様お養母様とホルボス山の領地見学ですね。行きます?」
「お、いいねえ、それは素敵だ。旅行日近くなったら教えてくれたまえ」
「はい」
みんなも行きたがるだろうから、楽しい旅行になりそうね。
あそこ温泉あるし。
私はクララに挨拶してトレイを取った。
「今日は羊のモモのローストとコンソメスープ、鰊のサラダと黒パンよ」
羊肉かあ、ちょっと臭みがあるけど悪くないね。
イルダさんの調理なら手を加えてあるだろうし。
私はメリサさんからお料理を受け取ってトレイに並べた。
美味しそう~~。
やっぱり肉が出るとテンションが上がるね。
ケトルからカップにお茶をついで私はいつものテーブルに座った。
そういや、私の礼服の試着と調整があるね。
忘れていたよ。
カロルにばれてはならないので、最後にやって貰おうかな。
皆が席についたので、食前のご挨拶だ。
「いただきます」
「「「「「日々の粮を女神に感謝します」」」」」
ぱくり。
ん~~~、羊肉が柔らかくて美味しい。
ぜんぜん臭みが無いね、美味しい美味しい。
鰊のマリネサラダも美味しい。
北海からくる塩漬け鰊なんだけど、良い感じに塩抜きがしてあるね。
タマネギの辛みと相まって美味しい美味しい。
コンソメスープを一さじすくって飲む。
うむ、飲む宝石みたいな味わいだなあ。
野菜の美味しさが全部スープに出てる。
イルダさんのコンソメスープは芸術だなあ。
黒パンをむしって食べる。
うん、鰊にも羊肉にも良く合う感じ。
あー、ご飯がおいしいと一日が充実してしまうね。
イルダさんさまさまであるよ。
うまいうまい。
「明日はダンスパーティね」
「カロルはやっぱり出ないの?」
「う、うん……」
「終わったら、パーティーのご飯持って来てあげるよ」
ナイスコリンナちゃん。
「あ、それは嬉しいわ」
「チョコボンボンを早めに確保しないといけないね」
「メレーさんに頼もうか」
「それは悪いわよ」
「カロルは堅いなあ」
私が笑うと、カロルもふんわりと笑った。
デリバリー用の容器を先に用意しとかないと。
収納袋に入れておくかな。
ダンパの後はカロルに出前しよう。
うんうん。
食べ終わったので、食器を返却口まで持って行った。
帰るとダルシーがお茶をついでくれていたのでありがたくいただく。
「今日はマーラー領へご来訪ありがとうございました。領主として感謝いたします」
ヒルダさんがちょっと頭を下げた。
いやいや、お礼を言うのはこっちなんやで。
モスラも見れたし。
もう二度とマーラー領で鱒は食べないけどね。
「諜報報告をします。今日は特に聖女派閥への攻撃はありませんでした。敵が動くのはダンスパーティ本番かと思われます。戦闘力が無い派閥員はなるべくまとまって行動をしてください。何か変な事があったらまず悲鳴を上げ、逃げてください」
「なにかありそうなの?」
「解りません。ポッティンジャー派閥の動きはありませんが、何が起こるかは不明です。せっかくの新入生歓迎ダンスパーティです、嫌な思いをしないよう慎重に先読み行動でおねがいします」
そうだね。
お洒落組は戦闘力が無いので、何かあったらビアンカバリア宝石とか使って逃げてほしいところ。
新入生歓迎ダンスパーティは夕方から、九時ごろまで行われるのだ。
その間にエスコート相手と入場、ダンス、立食パーティーと続くのだな。
とりあえず、剣術組のカーチス兄ちゃんと、カトレアさん、コイシちゃん、エルザさんは強いので遅れを取る事はないだろう。
コリンナちゃんはジェラルドにまかしといて大丈夫かね?
あいつひ弱そうだが。
とりあえず、まとまって行動するのが無難だな。
王宮のパーティーというと、あの近衛ハゲも出てくるだろうし。
「明日は朝から聖女の湯があります。そして派閥員はお昼までに飛空艇に行ってシャワーをあびてください、飛空艇アメニティがあります」
派閥員が飛空艇アメニティと聞いてほぉとため息をついた。
あれはめちゃくちゃ綺麗になるからなあ。
チートシャンプーリンスであるよ。
「聖女の湯と飛空艇アメニティで聖女派閥員は無敵ですわねっ」
「集合は講堂に午後四時ですわね」
「それまでに着換えて、集会室でお茶でもしてましょう」
「着換える前にお昼を食べませんと」
私はカウンターの方を見た。
クララが笑ってボードを手にした。
『明日、お昼、クララのパンワゴン営業! 腹が減ってはダンスパーティは出来ないよ』
と、ボードには書かれていた。
言い得て妙。
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