第487話 怪しい三人組がメリッサさんに絡む
太物屋さんで普段着やらドロワースやらを買い込んだ。
さすがにブラの良いのは無いなあ。
カマラさんの所のブラは伸縮性があってオーパーツだからなあ。
普通のブラは金具の精度の関係で結構大きくなるので良くないね。
「みんな、買った物は自分で管理するのよ」
「「「はーい」」」
アダベルも学園長に色々買ってもらったようだ。
学園長は甘々爺ちゃんになってるな。
皆、買い物はサービスの麻袋に入れて貰った。
薄い黄色の袋をみんなで持ってお店を出る。
ロイドちゃんも袋を持ってるな。
「ロイド王子もなんか買ったの?」
「部屋着のシャツを買ったよ。木綿は好きなんだ。肌触りが良くてね」
王子のくせに意外に庶民的だな。
皆で麻袋をぶらぶらさせながら街を歩く。
いやあ、高地だから空が青くて高いな。
「やめないか、何をするんだ君たち!」
広場近くでケビン王子の大声が響いた。
なんぞ。
急ぎ足で近づいてみると、ジャックさんが三人ほどの人相の悪いオヤジをひねりあげていた。
「どうしたの?」
「ああ、マコトさま、この人達がいきなり訳のわからない事を言ってきて……」
「そうなの?」
「ああ、メリッサくんに酒手をたかってきたんだ」
あら、マーラータウンにもゴロツキはいるのね。
「あなたたち、旅人ね、どこの街の人間かしら」
ヒルダさんの声が冷たいぞ。
「う、うるせえっ、良いだろう酒手をたかってもよおっ、おまえらの街は儲かってんだろっ!」
「そうだそうだ、関税をごまかして儲けてんだろ」
「ちったあこっちにも回せってんだ」
なんだこのチンピラ?
「俺たちは王都の人間なのだがな」
ジャックさんはチンピラの一人をひねり上げながら言った。
「そ、そうなのか」
「君達はマーラータウンの人間に恨みでもあるのかい」
「い、いや、その旦那、それは」
「ヒルムガルドの人間だったりして」
「「「……」」」
あれ?
「ち、ちがうちがう、ヒルムガルドの人間じゃ無いっ!」
「そうじゃないそうじゃない、お、俺たちはその、そう、ゲルドゲートの人間だ、うん」
「そうだそうだ」
「ゲルドゲートってどこよ?」
「あら~~、私の領民なの~~? 駄目よ~~、余所の街でやんちゃしては~~」
「「「えっ!!」」」
「ジュリちゃんの領なの?」
「そうよ~~。ここから遠いのにどうしたの~? 何をやってる人~~?」
「え? その?」
「え? りょ、領主関係のお方ですか?」
「ジュリエット・キャンベルよ~、知らないの~~?」
「い、いえその」
「わ、わしらは身分が低い物で、申し訳ないお姫様」
「申し訳ない」
三人組はへどもどし始めた。
怪しいという他は無いな。
「紡績ダコがありますわね、繊維関係者ですわね」
ぎょっとして三人組が右手を押さえた。
「近場の紡績都市はウエリントンかしら」
三人組はヒルダさんの指摘で、顔色が変わった。
「まあ、良いわ、この三人を尋問しなさい」
「「「はっ」」」
物陰から平民の服を着てるけど目付きが鋭い三人が現れてチンピラたちを縛った。
「ちょ、ちょっとまってくれ、尋問ってっ!!」
「大丈夫、手か足が欠けて紡績は出来なくなるけど、生きてはいけるわ」
「や、やめてくれ、喋る、喋るから」
「あなたね、今から喋っても拷問して裏取りしないといけないのよ。暗闘の家の領都マーラータウンで騒ぐという事は、もちろんそういう事も折り込み済なのよね」
ヒルダさんの口調は柔らかくて丁寧なんだけど、非情に温度が低くて怖い。
縛られた三人組は真っ青になった。
「や、やめてくれーっ! た、助けてくれ、俺たちはウエリントンの人間だ、マーラータウンで騒ぎを起こして評判を下げられれば、ヒルムガルドの十五倍の関税を免除してくれると聞いてここに来た」
「そうなの、さあ、この人達を拷問倉に、情報の裏取りを」
「やめてくれー、助けてくれーっ!!」
「俺たちが悪かったーっ!!」
なんだよ、また命令さんちの悪さかよ。
「だいたい、十五倍の関税はもう解けたぞ」
ジェラルドがリーダーくさい人にそういった。
「え、なんだって!!」
マーラータウンあたりだと、情報がまだ入って来てないのかな。
運の無い人達だな。
「ホルスト卿にも困ったものだね、ヒルダさん、今回だけは勘弁してあげてくれないか」
「そうですか、ケビン王子がおっしゃられるなら」
「ケ、ケビン王子? い、いったいこれはっ」
「そ、そんなまさか、こんな所で王子様が? 視察の情報など入ってないっ」
「ひいいっ、ご慈悲をご慈悲をっ」
なんというか、酷い集団だよな、私たちは。
ウエリントンの三人は縄を解かれた。
「君たちも自分の街に帰って仕事に励みなさい、人の街に来て暴れてはいけないよ」
「はい、ごめんなさい」
「お許し下さい、王子様」
「もう、こんな事はしません」
「では、行きなさい。道中気をつけてね」
「あ、ありがとうございます」
「ご恩は一生わすれません」
「御巡幸のおりには全市を挙げて歓迎いたします」
三人は全速力で街の門に向けて走って逃げて行った。
「ジェラルド、事の顛末をホルスト卿に伝え、反省を求めてくれ」
「かしこまりました。まったく、見苦しい工作をするものですな」
「関税解除を餌に、他の街の人間を嫌がらせに行かせるとは、まったく良くないね」
「あんな家、取り潰してしまえばいいのだわ」
「そうは言っても、大きい街だからね、交通の要衝はなかなか潰せないんだよ」
「行政的にはやり手ですからな、ホルスト卿は」
ふむ、命令父さんは意外にやり手なのか。
活気ある街だったしね。
一度ヒルムガルドにも行って見たい物だが。
飛空艇は降ろさせてもらえないだろうなあ。
よろしかったら、ブックマークとか、感想とか、レビューとかをいただけたら嬉しいです。
また、下の[☆☆☆☆☆]で評価していただくと励みになります。




