第477話 チョコヒールボンボンという正義のお菓子
「砂糖ボンボンだと、外側が弱いですわね」
「やっぱりチョコでコートした方が良いかもね」
などと語りながら、ヒールボンボンをみんなでつまんでいた。
というか、ミント味のボンボンだから、チョココートすると、チョコミントだなあ。
ネーレさんがチョコを湯煎しはじめたぞ。
残りのボンボンにコートして冷却魔法をかけおった。
「チョココートすると堅くなるね」
「コストが高くない?」
「ヒールポーション入ってるお菓子なんだから、コストなんかどれだけかけても大丈夫だよ」
そりゃそうだが。
しかし、ここの食堂はチョコレートを常備してるのか。
「ぬおっ、これ、美味しい!」
「あら、味の組み合わせが面白いわね」
チョココートしたボンボンを手に取って見た。
おお、結構カッチリするな。
食堂スタッフがチョココートボンボンを食べて盛り上がってるな。
「わあああっ、なんですかこの幸せな味~~!! おいしい~~!」
ナタリーちゃんがチョコボンボンを食べて頬を押さえてしゃがみ込んだ。
「これ、お菓子の味として凄いわね」
カロルも目を閉じて味わっているな。
私も食べて見る。
カリッ、ジュワアア。
チョコミントの味。
うわ、懐かしい感じ。
前世だ~~~~。
「これはお菓子としてダンスパーティにも出せますね」
「薬効なしの奴を作ってもいいね」
「ミントの味とチョコが良い組み合わせだわ。ちょっと癖がある感じだけれども、私は好きな味ね」
まあ、前世では定番の組み合わせですからな。
イルダさんが気に入ってもおかしくはない。
「ダンスパーティまでにどれくらい作れるかな?」
「たいした手間じゃないから沢山作れるよ。逆にヒールポーションはどれくらいあるの?」
「一釜」
「ど、どれくらい?」
「その瓶の三十本ぐらいかな」
「四分の一でこれだけ出来るから、三十本あると、すごく沢山だな」
「ダンパあわせで二百個もあれば良いかな?」
「わかった作っておくよ」
「材料のヒールポーションは、後で私のメイドに運ばせますね」
「了解」
「手間賃や契約は後でコリンナが来ますから」
「あら、ただでも良いのに」
「そうはいきませんよ」
「マコトさんも、カロリーヌさんも律儀ね」
イルダさんはニッコリと笑った。
いや、コリンナちゃんを挟まないと彼女の時給が発生しないのでね。
無理にでも噛ませないと。
「できあがった物は王家に高値で売るわ」
「一個一銀貨ぐらい?」
「半金貨よ」
うはあ、オルブライト商会はがめつい。
「他に無い薬効付きだからね、金貨一枚でも行けると思うよ」
「そんなに?」
「効き目があって美味しい。素晴らしいお菓子だ」
一ダースずつ木箱に入れて納品するかな。
お菓子は見た目が大事だしね。
食堂をおいとまして、バックドアから出た。
「ふー、食堂なんか入ったのは初めてでした。活気がありますね」
「私も、マコトの付き添いで入ったのが最初だったわ」
「ちょっと前まで食堂でバイトをしていたのだ」
「凄いですね、私も大きくなったらバイトしたいです」
「ナタリーは大人になったらオルブライト領で錬金の仕事で忙しくなるわよ」
「そうでした。えへへへ」
んもう、ナタリーちゃんは可愛いなあ。
「私たちは錬金作業に戻るわ、マコトはどうするの?」
「お風呂行ってくるよ」
「そう、じゃあ、行きましょうナタリー」
「はい、カロリーヌ先生!」
二人がエレベーターに乗って行ってしまうのを見送ってから、階段を降りて地下大浴場へと向かった。
脱衣室でちゃっちゃと脱いで浴室に入る。
かけ湯をして湯船にはいってのんびりする。
ああ、お風呂は良いねえ。
暖まったら洗い場に出て、ダルシーに洗って貰う。
あわあわであるね。
体を隅々まで洗って貰って、次は髪だ。
ダルシーの指使いは官能的でうっとりしちゃうね。
バスタオルを頭に巻いて貰って、再び湯船に。
今日はお洒落組来ないね。
ちょっと早めなのかな。
ほかほかになって浴槽を出る。
ダルシーがバスタオルで全身を拭いてくれて、その後はドライヤーだ。
ブイーーーン。
「いつもすまないねえ」
「なにをおっしゃいますやら」
下着をはいて、新しい制服に着換える。
あー、さっぱりした。
地下大浴場での唯一の欠点は出入り口で牛乳が売ってない事だよなあ。
コーヒー牛乳が飲みたい。
階段を上がって、205号室に入る。
なかではいつものようにコリンナちゃんが勉強していたぞ。
「コリンナちゃん、新しい商材が出来た」
「む、なんだ?」
「例の酔い覚ましヒールポーション」
「ああ、ケビン王子が言ってたやつね、出来たの?」
「を使ったお菓子」
チョコヒールボンボンを収納袋から出して一個テーブルに置いた。
コリンナちゃんが眉間にシワを寄せてマジマジと観察している。
「菓子?」
「そう、ヒールポーションが少量入ったお菓子」
「あ、そうか酔い覚ましなら少量で良いからか」
「そうそう、で、お菓子の形にしておけば便利じゃないかって」
「へー、それは面白いね。食べていいの?」
「良いよ、どうぞどうぞ」
コリンナちゃんがチョコヒールボンボンをパクリと口に入れた。
「うおっ、甘っ!! で、美味!!」
「良いでしょ。新入生歓迎ダンスパーティ用に二百個頼んだ。あとで食堂へ手間賃と材料費の契約をしてきてね」
「わかった、二百個か……」
「多いかな?」
「美味いのですぐ無くなりそうだ。なんだこの味」
「ああ、薬効がない奴も作るとかメレーさん言ってたよ」
「薬効が無い奴も作るのか、確かにこれは人気が出そうだね」
そう、チョコミントは正義なのだ。




