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第474話 突剣山脈西麓で薬草掘り

 蒼穹の覇者号は空に出た。

 空中を滑るように飛ぶ。

 王都を眼下にして北方へ飛ぶのである。


「最大速力はどれくらいだっけか?」

【時速千キロクレイド出ますが、急加速は光魔力を二十五%余分に使います】

「普通に加速していこう」


 急いでも光魔力を無駄に使うなら急加速はいいや。

 対飛空艇戦闘なんかに使う技術なんだろうな。


 飛空艇はぐんぐん加速して王都を飛び出した。


「うわあ、凄い凄い、山がどんどん近くなるよ」

「明日はあの山を越えた服飾の街に行くよ」

「すごい、ワクワクしますっ」


 ワクワクするであろう、私も二回目なのにわくわくするよ。


 丘陵地帯の上を蒼穹の覇者号は飛んで行く。

 速度計を見ると時速七百クレイドぐらいか。

 徐々に加速していくのだな。


「エイダさん、蒼穹の覇者号は音速を超えられるの?」

【音の壁は少し難しいですね、手前までは行けます】


 そうかー、音速越えるのはロマンなんだけどなあ。


「マコト、音速ってなに?」


 カロルが眉をしかめてこちらを見ている。

 いかんいかん。


「え、ああ、その、速度の単位」

【時速千四百クレイドを越えると音の壁という現象が発生します。音の伝わる速度を超えるためと言われており、衝撃波が発生するため専用の超音速飛空艇以外は音の壁を越えて加速はできません】

「音よりも速く飛べる飛空艇があるんだ!!」


 ナタリーちゃんが感極まった声を出した。


【昔は存在しましたが、現在稼働している超音速飛空艇は無いと思われます】

「マコトは変な事を知っているわね」

「飛空艇の図鑑に載ってたんだ-」


 嘘である。前世の記憶であるが、正直に話すのもなあ。

 まあ、いつかはカロルに話すつもりではあるが、今日では無い。

 うん。


 さすがは飛空艇、速い速い。

 どんどん突剣山脈が大きくなっていく。


「前の採取地はどこ?」

【西麓のこのあたりでした】


 サブディスプレイにマップがでて、赤い矢印で一点が示された。


「夕焼け草はレーダー感知できるかな?」

【見本はございますか】

「乾物でも大丈夫かな?」


 カロルが感知台になんかの根っこを乗せた。


【感知してみます】


 パパッとマップが灰色になりサーチした範囲が色づいた。

 反応無いねえ。

 レーダー範囲が赤い矢印付近をサーチしたがなんの反応もないようだ。


「百五十年ぐらい前と植生も違うでしょうからねえ」

「おおっ?」


 レーダー範囲が西をサーチすると、赤い点が現れた。


「やったわ、西に移動してたのね」

「わあっ、すごい沢山!!」


 西側が真っ赤になるほどの反応があった。

 群生地を見つけられたみたいね。


「エイダさん着陸できる場所はあるかな?」

【草原に平坦な場所があります】

「エイダさん、生物感知して」

【了解しました】


 おお、カロル、気が利くね。

 確かに魔物とかいたら危ない。


【付近に突剣熊が二匹おりますが、接近してきましたら魔導機関銃で追い払います】


 突剣熊は突剣山脈に住む熊だな。

 魔物ではなく、野生動物だ。

 そんなに大きく無いけど、たまに人を襲うのだな。


「じゃあ、安心ね、着陸!」


 私は着陸脚スキッドを展開して、草原の端っこあたりに着陸した。


「さあ、採取して、学園に帰ろう」

「本当に王都の近所に薬草を摘みに行く感じね」

「私、よく薬草摘みの仕事を請け負いましたっ」

「えらいねっ」


 薬草摘みは孤児院の子供のお小遣い稼ぎになるんだよね。

 冒険者ギルドは初心者と困窮者と孤児に仕事を斡旋してるんだな。

 王都周辺の森はそんなに強い魔物は出ないからね。


 カロルが収納袋から、小さいバケツとスコップを出して私とナタリーちゃんに渡した。

 おお、こういうので採取するのか。


「薬草とか、ハーブがあったらついでに摘んでいきましょう」

「夕焼草を根こそぎ取らないの?」

「群生地が解ったから必要分だけ摘むわ。あまり取ってもね、乾燥させるのも大変だし」

「そうなのかー」


 カロルはエコだなあ。


 三人で飛空艇を降り、草原を歩く。

 高度があるからか寒い感じだなあ。

 王都あたりはもう春なのに、山のあたりはまだ冬が残ってる感じ。


 スコップをバケツに入れてガラガラ鳴らしながら夕焼け草の群生地を目指す。


「意外に地味なビジュアルの草ね」

「お花は夕焼け色で綺麗なんだけどね。咲いてないと普通の草よ」


 カロルはナタリーちゃんに夕焼け草の採取方法を教えている。

 私もしっかりと聞く。

 ふむふむ、根っこのまわりを掘って取り出して、土を落とすのか。


 やってみよう、ざくりざくり。

 土の良い匂いがするね。

 青臭い草いきれもする。

 掘り出して、土を落とす。


「これでどう?」

「結構根っこを折っちゃったね、でも良いわ。五本ほどあれば良いから」


 うむむ、カロルのお眼鏡にはかなわなかったか。

 ナタリーちゃんは器用に掘り出してカロルに褒められていた。

 ちきしょー。


「あそこに薬草が生えてるわ、あと、碧鶏草もあるわね」


 言われても、私では区別がつかん。

 ナタリーちゃんはひょいひょいと薬草を摘んでいるね。

 さすがである。


 くそう、私もカロルに褒められたい。


「聖女さま、それは雑草です」

「ぐぬぬ」

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― 新着の感想 ―
[良い点] ええぇ、蒼穹の覇者号は音速を出せるか!?驚きです、ファンタジーなのに性能が凄まじいですね!
[一言] 聖女さまのぐぬぬイイゾー。 誰にでも苦手はあるはずなのだ。
[一言] せっかく有るのだからサーチしようぜ 偽マッハ先生による音速の概念の再発見はまだの模様 まあ19世紀の人だからまだ先だろうけど 超音速飛空艇は空力に配慮した形状だったのかバリアで防いで形状…
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