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第471話 大聖堂に行くと孤児達にまとわりつかれる

 警備騎士団監獄での治療が終わったので王家の馬車に乗り込む。

 ギヨーム団長がぺこぺこと感謝の言葉を並べて送ってくれたのだった。


 馬車は走り出す。

 目的地は大神殿だな。


「警備騎士団の監獄は合理的だったね」

「そうですな、王宮では長期になると『タワー』の監獄に移送しますが、日と風通しは一考の余地があります」


 王家主従が王宮地下牢の改善案を出し合っている。


「そういえば『タワー』の地下牢の患者は治療しないの? マコトっち?」

「『タワー』の地下牢なんか行きたくも無い」

「そ、それは解るな」

「患者がいるなら神殿にでも移送してくれば治療するよ」

「わかった、コベット長官にはそのむねを知らせておくよ」

「おねがいね、ロイド王子」


 『タワー』の地下は怖いからね。

 そんな所へ行く必要を感じないのだ。


 そんな事を考えていたら大神殿についた。

 大階段前の馬車溜まりに馬車は止まった。


 アンドレがやってきて戸を開け、ステップを下げてくれた。


「ありがとう、アンドレ」

「おや、聖女さま、お帰りなさい」

「リンダさんはいるかな?」

「ちょうどさっき帰ってきましたよ。聖騎士団本部に居るんじゃないですかね」

「ありがとう」


 ダルシーがすっと現れた。


「呼んでまいります」

「お願いね、治療に来たと伝えてね」


 王子二人とジェラルド、そして麻薬捜査チームで大階段を歩いて上る。


「やっぱり大神殿は大きいわね」

「聖心教の大陸の根拠地だからね」


 歴史と伝統は総本山だけど、実務と繁栄は大神殿なのよね。

 聖心教の中心地が大神殿だから、私はまだ総本山に挨拶に行ってないんだな。

 往復四ヶ月とかかかる馬車旅なんかしてられないと断ったのだ。

 蒼穹の覇者号が手に入ったので、偽イタリアにある総本山でも三時間コースで行けるから、そのうち行って挨拶するつもりであるよ。


 階段を上がりきると孤児達が私を見つけて駆けてきた。

 先頭はアダベルであった。


「マコト~~!!」

「マコ姉ちゃん!!」

「今日はどうしたのっ!」

「今日は牢の方へ治療だよ」

「わー大変! 悪い奴らを治すの?」

「治す治す、色々調べるのに治療しないといけないからね」

「そうなんだーっ」


 というか、なんで孤児に混じってアダベルもひっついてくるのだ。


「いや、なんとなくだー」

「アダベルは今日はどうだった?」

「午前中はみんなでガクエンチョの家で勉強して、ご飯をみんなでここで食べて、午後はみんなで遊んだ、楽しかったっ」

「それは良かった」


 私がぐりぐりと頭を撫でると、アダベルは嬉しそうに目を細めた。

 やっぱり子供同士で遊ぶと楽しいよね。


「お呼びですかっ!! 聖女さまっ!!」


 リンダさんがダッシュで駆けよってきた。

 なんで、こんなに嬉しそうかな、このお姉さんは。


「王宮地下牢と警備騎士団の監獄で麻薬中毒者の治療をしたので、大神殿でもと思ってやってきたよ。患者は何人ぐらいいます?」

「必要無いです」

「は?」

「麻薬患者なぞに聖女様のご慈悲をかける事はありません」

「いや、でも禁断症状とか……」

「わめきだしたら牢の一番奥に突っ込んでおけば治ります。狂乱しますが、三日もすれば症状は抜けるようです」

「は?」


 ら、乱暴じゃない?

 リンダさんはニコニコしておる。


「聖騎士団の管轄はヤクザとスラムなので、人権なぞ要りません。ほっとけば良いんですよ」

「そ、それは乱暴な、尋問とかできないのではないかね、リンダ師」

「錯乱してたら別の奴を取り調べれば良いんですよ、ジェラルド卿」

「ち、ちなみに何人ほど捕まえてますか」

「十五人です、ケビン王子」


 少なくないか?

 ここのところの取り締まりで減ったのかな。


「ずいぶん少ない……」

「チンピラや、頭が悪そうな奴は現場で斬り殺してますので、ロイド王子」


 みんな一斉に沈黙した。

 これはヤバン。

 『タワー』とも違う大雑把なヤバンだな。


「事情を知っていそうな奴、金庫番、組長などを逮捕収監しております」

「そうなんだ、じゃあ、今は治療が必要な患者はいないのね」

「牢にはおりません、ただ、治療院に女子供の患者がおりますので、そちらの治療をおねがいできますか?」

「女子供……」

「ヤクザは馬鹿ですからね、妻や子供に薬を与えて中毒になった例が五件ほどあります」


 さすがのリンダさんも女子供は処分できなかったか。


「解りました、治療院の患者を治療します」

「ありがとうございます、聖女さま」


 リンダさんが勢い良く頭を下げた。


「なんの参考にもならないなあ」

「まったくです」

「リ、リンダ師は特別だからさ、ヤクザ相手だしね」


 王子たちとジェラルドががっかりしておるなあ。

 聖騎士団がやってるのは捜査じゃなくて基本的に殴り込みだからねえ。

 物理で情報をはかせる。

 舐められたら殺す。

 なんともシンプルであるよ。

 鎌倉武士かおまえらは。


 しょうが無いので治療院に行って姐さんや子供の治療をした。

 禁断症状の姐さんとかがいて来てよかったね。


 さてさて、仕事も終わったので帰るか。


「アダベルは明日の午後、マーラー領に行くからね」

「えー、なんで?」

「ドレス作ったでしょ」

「ああ、そうかそうか、飛空艇だな、たのしみだなあ」

「えー、アダちゃん遠くに行くの?」

「山の向こうの街に行くんだよ。服の街だよ」

「いいなあー」

「いいなあー、服の街~~」


 うむ、お子様のいいなあ攻撃には弱いな。


「あなたたちも行く?」

「いくいく~~!!」

「わあいっ、飛空艇飛空艇~~!!」

「おでかけおでかけーっ!!」


 子供達がわいわいと喜びの踊りを踊った。

 

 あとは、保母の女官さんに話を通しておかないとね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 誤チェストしそうでごわす
[良い点] 作者さん、最近の投稿はお疲れ様です! 寧ろリンダさんの所のやり方の方が普通だと思います。殺しに掛って来るヤクザや前科持ちは容赦しない、その代りに女子供は窮屈な牢獄に放り込まない。リンダさん…
[一言] 『麻薬に関わる奴らは真っ二つにしてやるのが慈悲』有言実行のリンダさん。
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