第462話 お洒落組とお風呂に入る
さて、完成されたドレスは完璧だったので脱いで畳んでもらう。
次に着るのは日曜日のお風呂に入ったあと、飛空艇アメニティをシャワーで使った後であるな。
名残惜しいが晴れ着を汚してはならないのだ。
カロルと一緒に試着スペースで制服に着替えるのである。
「制服に着替えるとほっとするわね」
「そうだねえ」
制服はラクチンで良いね。
毎日ドレスで授業を受けてるC組の生徒はおかしいのではないか。
お腹が締め付けられるので苦しいのだが。
まあ、人の趣味だからあまり文句は言わないけどね。
「さーて、お風呂に行ってこよう」
「あら、そう」
「もー、カロルも行こうよう」
「私は自室で入るわ、大浴場は落ち着かないの」
「もーもー、つれないなあ」
「また聖女の湯の時にね」
くっそう、カロルのけちーっ!
しょうがない、一人で行くか。
と、思ったら、メリッサさんとマリリンが試着スペースに入ってきた。
「お風呂、お付き合いしますわ、マコトさま」
「是非とも」
「ええ、行きましょう」
だから、さっさと着換えよお洒落組よ。
カポーン。
で、いつもの午後お風呂であるよ。
お洒落組と一緒である。
あー、あったまるなあ。
「麻薬捜査も一段落ですわね」
「お疲れ様ですわ」
「いやいや、麻薬は教会がらみでもあるからね。褒められる事ではないよ」
「王都の信徒を守る為に、地上でも高空でも大活躍でしたわ」
「おなじ派閥員としてとても誇らしいですわ」
飛空艇レーダーに物質感知が乗って助かったなあ。
あれが無かったらまだ結構掛かっていたろうね。
空中。
地上。
地下は?
下水道網の方にも何かありそうな感じだが。
ううむ、地中は感知できないんだよなあ。
あとでコリンナちゃんに意見を聞いてみよう。
たぶん王都外に繋がる抜け道とか、悪漢のアジトとかが在りそうだけどな。
まあ、なんか在りそうだったら捜査するのは警備騎士団と下水道局だから良いか。
地中に教会の手はおよばんのだ。
しかし、麻薬禍にひっかかって、廃嫡された生徒とかには何とかしてあげたいな。
ホルボス山ヘルスセンターの職員とかに雇うかな。
土地の登記が済むのは来週ぐらいかな。
ブリス先輩を連れて村長に挨拶にいかないと。
私が領主だからねえ。
うっしっし。
あたたまったのでダルシーに洗って貰う。
「洗剤はいかがいたしますか?」
「普通ので」
さすがに飛空艇アメニティを使うには人が居すぎであるよ。
私がだいたい三時ぐらいに入るので、一緒に入ろうという生徒さんが多いのだ。
上手くすると聖女の湯の時があるからね。
何時ものボディシャンプー、シャンプー、リンスで洗ってもらう。
やっぱり香りがちがうね。
洗い上がりの肌の感じも結構ちがう。
髪のしっとり感も違うのであるよ。
贅沢をするといかんね。
元の水準に戻れなくなるよ。
カロルと一緒に友鳴花をつんで、飛空艇アメニティを再現する実験しようかな。
そのまま市場に流した方が巨万の富を生み出しそうだけど、そんなに儲けてもねえ。
「やっぱり、良いアメニティを使うと、物足りませんわね」
「そうですわねー、でも凄い物はハレの日に使う物ですわ」
お洒落組も物足りないようだね。
でも、しょうが無い。
また、お風呂に入り直して、あたたまってから、脱衣所へ出た。
ダルシーに体と髪を拭いて貰い、下着を着けたあと、ドライヤーで髪を乾かしてもらう。
ブイーーンとね。
「そういえば静かと思いましたが、アダベルさまが居ませんわね」
「そうですわね」
「神殿の孤児院で遊んでるんじゃないかな? 最近仲良しになったみたいだから」
「そうですの、ちょっとさみしいですわ」
「でも、アダベルさまも同じぐらいの年頃のお友達は貴重ですわね」
「ああやって、子供はどんどん自分の世界を広げて行かないとね」
子供たちと勉強したり、遊んだりして人間の世界の事をいろいろ学んでいって欲しいね。
アダベルは良い奴だから、楽しい未来が待っていてほしいよ。
冒険者に狩られたりしたら嫌だな。
髪が乾いた。
飛空艇アメニティを使った時ほどじゃないけど、結構つやつやピカピカだね。
「それでは、また晩餐で」
「はい、お疲れ様ですわ」
「またあとでお目にかかりましょう」
さて、久々に空いた時間だな。
ベットで本でも読むかな。
などと、思いながら205号室に向かった。
階段から見る空がだんだん暗くなってきているな。
今日の晩餐はなんだろう。
一階にさしかかると食堂からお料理の匂いが漂ってきてお腹がすくな。
今日は、上級か下級でシチューがあるようだ。
タマネギが煮える良い匂いがした。
たのしみたのしみ。
205号室に入ると、コリンナちゃんが勉強をしておった。
何時でも勉強してるね、この子は。
「おかえりマコト」
「ただいま、コリンナちゃん。コリンナちゃんのドレスは完成した?」
「完成したよ。すごい出来で大満足だよ。マコトのお陰だ、ありがとう」
「コリンナちゃんが労働で手に入れたドレスだよ。私のせいじゃないさ」
「お前がいなければ出来なかった伝手だからなあ。感謝だよ」
「よせやい、くすぐってえ」
ああ、コリンナちゃんと下町なまりで語り合うのは良いなあ。
「そういや、気になったんだが、下水道に麻薬の悪漢潜んでないか?」
ガターンとコリンナちゃんがペンを落とした。
振り返ってハシゴに取り付いた私の顔を見た。
「ありうる」
「王都外に繋がる抜け道とかは?」
「結構あるそうだ。見つけるたびに埋めるそうだけど、いたちごっこだって」
そういや、王都の下水システムの基本はどうなってるのかね?
やっぱり後期魔導文明の遺産かな?
文明レベルにしてはちゃんとした下水処理システムであるが。
「親父がヤバイな。マコトは感知できるのかい?」
「地下はなあ。光が届く範囲なら感知できるんだけど、閉鎖されて光が漏れない扉があるとそこから先は感知できないよ」
「地下は弱点なのか。何カ所か倉庫などがあっても不思議じゃないな」
「もうすぐ地上の麻薬を一掃するから、それにつられて地下に施設があったら動くね」
「ちょっと、明日親父に話してくるよ」
「おねがいね。なにか出来る事があったら協力するし、武力が必要なら聖騎士団をうごかすよ」
「なかなか麻薬禍はおわらないなあ」
「そういうもんだって、来年度まで進んでなくてラッキーだったと考えないと」
「それもそうだ。良い方に考えるか」
コリンナちゃんはそう言うと、床に落ちたペンを拾って勉強に戻った。
まったく、麻薬には飽き飽きだよ。
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