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第456話 問題は『塔(タワー)』の機能不全とわかる

 コロンブさんが地図に光点を書き写すのを、ジャックさんとフランソワ団長が熱心に見ている。


「シャサーヌ伯爵家に光点がありますね」

「名門の鉱山領の伯爵家がなんという事か」


 さすがに、貴族の情報については詳しいな。


「近衛騎士団に捜査従事騎士は何人ほどいるんですか」


 ジャックさんはフランソワ団長と顔を見あわせた。


「いません」

「は?」

「その時に手が空いている団員が従事する感じですね」

「近衛騎士団は王家の護衛、式典の警備が任務であるので、捜査なぞしないっ」

「じゃあ、なんで今回は出しゃばってるんですか?」

「し、仕方が無いだろう、麻薬禍を断てと国王陛下自らの下知なのだ、万難を排してでも近衛騎士団は努力をするっ!」


 まじか?

 言ってみれば消防署が捜査してるようなもんか。

 なんでまた。


「そこらへんの調査や対処をするのは『タワー』なのですよ。ですが、今回は機能不全になっていまして」

「あー、なるほど」


 そうか、貴族に対する諜報や調査は『タワー』が請け負っている感じなのか。

 麻薬禍で『タワー』がお休みだから近衛騎士団が訳もわからずハッスルして関連団体に迷惑をかけまくっている訳だね。


「ですから、聖女さまからの確度の高い情報はありがたいのです。踏み込んで家捜しするのは近衛でもできますからね」

「そうだ、貴族の家に踏み込むのに、身分の低い警備騎士団では失礼に当たる! 近衛騎士団ならば大丈夫だ!」


 踏み込まれる方にとってはどっちでも迷惑だろうけどなあ。

 面子とか見栄えとかがあるのだろうな。


「今日の午後に『タワー』に行って捜査をする予定なんですよ」

「それは助かります、『タワー』が動かないと王宮の半分が停止しているような物ですからね」

「そうか、では、『タワー』の捜査も、近衛騎士団団長たる私、フランソワ・フラゴナールが立ち会おうではないかっ!!」

「「「「……」」」」


 みな、酢を飲んだような顔になって押し黙った。


「邪魔だから来ないでくださいよ」

「な、なんだと、聖女よ! おまえは私をないがしろにするつもりなのかっ!! その、私は貴族相手には影響力があるぞ!」


 ねえよ、というか、諜報機関相手にハッタリなんざ効かねえよ。


「ジャックさんか、コロンブさんが来てくれませんか」

「そうですね、後でケビン王子に話を通して、私がご同行いたしましょう」

「私は本部で地図を元に、捜査計画を立てます」


 コロンブさんが、地図から目を離さずにそう言った。


「警備騎士団に言って、現場の騎士を回して貰ってノウハウを教えて貰ったら?」

「それは良いですね、ですが、警備騎士団との伝手が……」

「私は最近、ロイド王子と仲が良いから、話してみますよ」

「助かります、各団体との横の繋がりは必要ですね」

「お互いの得意分野は違いますからね」

「高貴な近衛騎士団が、下賎な警備騎士団なぞに学ぶ事なぞ……」

「人を斬るなら剣ですが、木を切るならのこぎりです。身分は低くても効果を発揮する場所はあるのですよ。フランソワ団長」

「ぐぬぬ」


 まったく、近衛の頭の高さなんかしらんよ。

 貴族への取り締まり、お目こぼし、交換条件なんかは、『タワー』が考えて、王家本体が判断してたんだろうなあ。

 王様とか、ケビン王子とか、フランソワ団長は『タワー』が不在なのに、十全に動けると勘違いして、近衛を動かしていたのかあ。

 諜報が無いと、視界が無いみたいな物だからな。

 あと、近衛のトップはハゲだし。


【ロイド王子と護衛のリック様が待合室入り口で入室を求めています】


 お?

 渡りに船だね。

 監視画面に切り替わり、画面の向こうではロイドちゃんとリックさんが立っていた。


「入れてあげて、エイダさん」

【了解しました】


 画面の向こうのロイドちゃんとリックさんが待合室の中に入った。

 メイン操縦室の時計を見上げる。

 ああ、もうそろそろお昼休みも終わりか。


 ほどなくしてロイドちゃんがメイン操縦室にやってきた。


「やあやあ、マコトっち、近衛のみんなもこんにちわ」


 朗らかに挨拶をするロイドちゃんであった。

 リックさんもニッコリ笑っているな。


「リック、来てくれて助かる」

「ユリーシャさまのちいさいメイドが知らせてくれましてね」


 おお、ゆりゆり先輩ありがとう。

 ミーシャさんがレストランへ知らせにいってくれたのか。

 気が利くね。

 ケビン王子はまだビビアンさまに引っかかってるのかな。


「これはロイド王子、ご機嫌うるわしゅう」


 ハゲが直立不動でロイド王子に敬礼した。


「マコトッちを困らせてるんだって? おじさん」

「い、いえその、色々な行き違いはありましたが、今はお互い友好的にやりとりをしておりますっ!」

「聖女さんとの関係は王家としても重大な案件だからね、気を付けようね」

「はっ!! かしこまりましたっ!!」


 なんだなあ、おじさんなんだから、そんなにペコペコしなくても良いのにな。

 フランソワ団長も色々あるんだろうなあ。

 馬鹿だからなあ。

 ちょっと悲しいね。


「とりあえず、ロイド王子、近衛に警備騎士団から捜査のベテランを何人か出向させて、ノウハウを共通化させてよ」

「あ、それは良いね、マコトっち。盲点だったね」

「あと、王様に言っといて、『タワー』が無いと近衛を動かしても捜査の効果は薄いって」

「あ!」


 ロイド王子が虚を突かれたように目を見開いた。


「そうか、そうだね、そういえば」

「想定されてない事をやらせると、空回りするだけみたいよ」

「解った、後で父さんに進言しておくよ、ありがとう」


 うんうん、地頭が良い王族相手だと話が早くていいね。


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― 新着の感想 ―
[一言] いや、まぁ、やっぱり王族があまり働いていないですね。
[一言] うーん、なんちゅうか考える力というか判断力というか、頭脳労働が王家に集約しすぎてやしませんかね? ジェラルド株、秘かに上がる。
[良い点] ナイス!ゆりゆり先輩&ミーシャさん。 ランチデートの最中に連絡が来てもジュリちゃんなら「マコトさまが困っているなら行ってあげて」てロイドちゃんを送り出してくれたんだろうなぁ。 [一言] 近…
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