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第45話 カーチスは意外にセクハラチャラ男ムーブでゲスい

 カトレア嬢とコイシちゃんは意気投合して、更衣室でもイチャイチャしておった。


「おい、キンボール、お前も私たちと一緒に剣術部に入らないか」


 うるさいな、私は今、カロルの生着替えを横目で見るのに忙しいんだ。


「なんでまた」

「マコトしゃんは剣の才能があるみょん」

「われら三人で力を合わせて武道大会での優勝をもぎ取るのだ」


 いや、剣術大会は個人戦で、チーム戦ではないぞ。


「優勝ねえ、でも、剣術部にはカーチスがいるしなあ」

「なにっ! カーチスさまは剣術部なのかっ」

「カカカ、カーチスしゃまっ」


 カーチス兄ちゃんの名前を出したとたん、二人の目の色がピンク色に変わった。

 これは、乙女の攻撃色だ。


「なによ、カーチスの奴はそんなに人気なの」

「何を言ってるんだっ!!」

「なにを言ってるみょんっ!!」


 うわ、二人にえらい勢いで詰め寄られたぞ。


「おまえはカーチスさまと仲良くしてもらってるというのがどんなに幸福か解ってないっ!」

「カーチスしゃまは、男らしくて、かっこ良くて、理想の騎士だみょん」

「へ、へえ」

「剣術部に入れば、カーチスさまの目にとまるかもしれぬ」

「ああ、憧れるみょん」

「あいつ、婚約者さんいるんだけど」

「馬鹿めっ! 正妻なぞ、おこがましいっ!!」

「妾みょんっ、愛人みょんっ!!」

「良いの、妾で愛人で」

「カーチス様のお子を孕む可能性があるならっ、妾でも愛人でも一夜かぎりでもっ!!」

「ああ、カーチスしゃまあ」


 なるほど、こんな感じに異様に女子にモテていたなら、カーチス兄ちゃんが女嫌いになるのもうなずけるな。


「カトレアさんはともかく、コイシちゃんはカーチスに声を掛けると、派閥に入れられちゃうよ、あいつ強い女の子大好きだから」

「ななな、なんで私は駄目なのだっ!」

「あんた、ポッティンジャー公爵派閥じゃん」

「あっ」


 すっかり忘れておったな、この残念剣戟令嬢は。


「う、うちはー、北方なので、派閥にさそわれるはずがないんだみょん」

「え、なんで?」

「北方は三十年前に王国入りした占領地だみょん。いまだに北方貴族だけで固まった派閥にしかはいれないみょん」


 あー、北方の大部分は前の戦争で隣国から分捕った領土なんだよね。

 そこの貴族と、王国生粋の貴族とだと線引きがあるのか。


「あいつ、そういうの気にしない、それどころか、金脈をみつけたぞ、マコト、とか言ってくる」

「本当かみょん?」

「いいなあ、いいなあ、カーチス様に誘われるのはいいなあー」

「本当だったらいいみょんなあ」

「まあ、期待しないで待ってて」


 カトレア嬢を聖女派閥に誘ってもいいんだけど、もれなくマイクーが付いてくるのがなあ。


(もうちょっと様子を見ましょう)

(はっ、脳内ご老公)


 あ、目を離しているうちにカロルの着替えが終わってるー。


「なんで、マコトは世界が破滅したみたいな顔をしているの?」

「してないもんっ」


 ちえーっ。


 カロルと並んでA組に歩いて帰る。

 後ろでは、カトレア嬢とコイシちゃんが剣術談義で盛り上がっている。


「マコト、お昼はどうするの?」

「ん? コリンナちゃんと仕入れの立ち会いするから女子寮食堂に行かなきゃだわ」

「そうなんだ、私も行ってもいい?」

「カロルが来てくれると助かるよー」


 カーチスとエルマー? 男どもはどこへでも行って適当に食べてろですよ。


 教室に戻って体操着などをロッカーに放り込んだりしてると、カーチスがまたA組にやってきおった。満面の笑顔だ。


「金脈を見つけたぞ、マコト、北方は盲点だった、入れ食いだな」

「あんたの所の諜者だれよ?」


 また更衣室の情報がカーチスに漏れてる。

 A組の女子に奴の諜者がいるな。


「秘密だ、おい、コケシ、聖女派閥に入らないか、俺はお前が欲しい」

「カーチス、あんた、女の子の名前をちゃんと覚える気がないわね」


 コイシちゃんは、カーチスに声を掛けられて、真っ赤になって、はわわとなっている。

 カトレア嬢は悔しそうだ。


「彼女はコイシちゃんよ」

「コケシというのは、俺がつけた彼女の愛称だ、蓬莱の愛らしい木彫り人形の事だな」

「コ、コケシに改名するみょんですう」

「よしよし良い子だ、妾の件はもうちょっと体が育ってからだな、将来、俺が抱いて孕ませてやっから」

「ふわああいっ、うれしいれすーっ」


 カーチスはコイシちゃんの頭をなでなでしながら口説いてやがる。

 なんだ、この腐れセクハラチャラ男ムーブは。

 後ろからぶん殴るぞ。


「俺んちが寄親になってやるから、親父に相談してこいよ」

「わ、わかりましたみょん、なんでもカーチスさまのおっしゃる通りにするみょん」


 カトレア嬢が非常に悔しそうであるな。


「カトレアも嫁に貰ってやりたいが、まだ派閥がな」

「そそそ、そんなっ、恐れ多いっ!! お声を掛けていただいただけで望外の喜びでありますっ!」

「マイケル卿まで引き抜くと、もう戦争行為だからさ、ちょっとだけ我慢しておけ、時期がきたら、引っ張ってやるからよ」

「はははは、はいーっ、お待ちしておりますーっ!!」


 身分差が二段階とかあると、女の子抱き放題、ハーレム作り放題なのかー。すげー。

 妾で良いからってなると、さらに孕ませ放題かよー、なんだこのエロゲー状態。


「マコト……、また、ひよこ堂に行こう……」


 体操服をロッカーにしまったエルマーが寄ってきた。


「そうだな、コケシも派閥に入る事だし、歓迎会がわりによ」

「ごめんなー、お昼は女子寮の食堂で仕入れの立ち会いだわ」

「ああ、女子寮食堂の責任者になったんだっけ。マコトは毎日なんかしてんな」

「なんだかもめ事が向こうから寄ってくるんだよ、困っちゃうよね」

「それは……、ざんねんだ」


 わるいね、エルマー。


「よし、じゃあ上級のレストランにいこうぜ。友達になった記念にコケシとカトレアにもおごってやるよ」

「ほほほほ、ほんとうでしゅかみょん」

「うううう、お友達なんて、晴れがましくて嬉しいですカーチスさまあ」

「しかたがない……か」


 エルマーがため息をついた。


「カーチス、あんたエルザさんも呼んであげなさいよっ」

「え、ええっ、未来の妾候補と楽しく食事だぞ、エルザとか呼んで何するんだ?」

「エルザさんが喜ぶじゃん」

「いや、そりゃそうだが、俺の利益はなんかあるのか?」

「あんたの利益は無いけど、派閥の利益は高いわ」

「ぐぬぬ」

「まだ……エルザ嬢を派閥に誘っていないのか? カーチス」

「まだだ。めんどくせえなあ……」


 コイシちゃんとカトレア嬢は笑顔が引きつっておるが、まあ、世の中とはそういうものだ。

 妾で愛人は、正妻と上手く付き合う方法を確立するのだ。


「そいじゃ、また後で」

「おう、またなー」

「午後はまた……、光魔法の実験をしよう、父も来ている」

「解ったー、コイシちゃんとカトレアさんもまたね」

「ありがとみょん」

「またな、マコト、カロリーヌ」

「またね、みんな」


 みんなに挨拶して、カロルと一緒にクラスを出て行く。


「さて、食堂の仕入れ先を替えないといけないなあ」

「そうね、なにか伝手はあるの?」

「大神殿出入りの業者なら呼べるけど、うーん」

「私も領地なら伝手があるんだけど」

「とりあえず、喧嘩して業者を追い出そう」

「とりあえずで喧嘩するのね」


 校舎を出て、女子寮に向けて歩く。

 コリンナちゃんはもう行ってるかな。


 護衛女騎士ドミトリーガードの詰め所に手を振って玄関に入る。

 廊下を歩いて、食堂のロッカールームのドアを開けて入る。


「マコトさん、ご足労ありがとうございます」

「きたねー、マコト、カロル」

「こんにちわ、コリンナ」

「ちゃーす」

「マコトはゆるゆるね」

「オルブライトさまもいらっしゃられましたか」


 メリサさんは、厨房のドアを開けた。


「もう一食追加ね、オルブライトさまに来ていただけたわ」

「了解だよー」

「あれ、お邪魔でしたか?」

「いえ、そんな事はありませんよ、いえ、マコトさんとコリンナさんの立ち会いのお礼に、まかないのお昼ご飯を出そうと思いまして、オルブライト様の分も追加しましたから大丈夫です」

「わ、まかない付くの、やったあ」

「ええ、スタッフでお昼に入る人には出してますので」


 女子寮の食堂は、基本的にお昼はやってないんだけど、体調が悪くて休んでいる生徒などに、有料でお昼を作ったりしてるのね。


 あと、放課後には、お茶とお茶菓子を出す喫茶スペースもやっているのだ。

 メイドさんたちがお茶を飲んだり、部屋で勉強がしづらい生徒が利用したりしている。


「なんだか悪いわ」

「大丈夫大丈夫、伯爵令嬢の地位の人が居るだけで、庶民はビビるから、地位料よ」

「そんなに豪華な物は出しませんので、お気になさらずに」


 まかないのお昼をジョイアさんが持ってきてくれた。

 おお、というか、おとといの豚肉シチューだな、まずいやつ。

 あとは、サラダに、白パンか。


「おとといのかー」

「まあ、食べてくださいよ」


 一口シチューを口に含むと、ぱああっと、美味しい肉汁の味が広がった。


「上級貴族食の余りの肉で作り直したのよ」

「これは美味しい、本来はこんな味なのね」

「どうしても素材が悪いとね、どうにもならないのよ」

「肉が入ってるー、うれしい」


 コリンナちゃんが歓声を上げた。


「おとといのは肉なかったしねえ」

「これまでの肉から腐ってる所をそぎ落とすと、本当に、肉味の汁にしかならないのよ」

「そんなに酷かったんですか、あ、美味しい」


 カロルがシチューを食べて、目を見張った。

 不味い方を食べてないカロルには、我々の感動はわかるまいよー。


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― 新着の感想 ―
[良い点] やっぱ主人公はバイセクシャルではあるんだなぁ……普通に行動がやべぇのだ!
[良い点] 題名どおり カーチス兄ちゃん! 意外に……でした(笑 でも一層好きになりました☆ 雄々しくて良い(*^^*) カトレア嬢とコイシちゃんもね意外 剣豪でも乙女ぇで可愛いです エルマーが癒…
[良い点] 作者さん、速い投稿はありがとうございます!お疲れ様です! カーチスさんの情報が早過ぎる!?一体どれほど恐ろしい間者ですかね。 というか、他の女の子達にここまでセクハラ露骨的な口説きを出来る…
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