第448話 近衛騎士団女性部部長コロンブ・デュラフォア
私が面会室に行くと、中には近衛騎士団の華麗な衣装を着込んだ巨乳メガネの女性がいた。
おっぱいがバイーンバイーンとなっておるな。
綺麗な金髪のお姉さんだが、しかめっ面をしている。
「こんにちわ、マコト・キンボールです」
「近衛騎士団女性部部長のコロンブ・デュラフォアと申します」
コロンブさんかあ。
「御用はなんでしょうか」
「今すぐマダムエドワルダの身柄をこちらに頂きたくお願いに参りました」
「え、いやですけど、なんでまた」
「マダムエドワルダは女子爵です。貴族を取り締まるのは近衛騎士団の勤めですから」
「近衛は麻薬の捜査なんかしてなかったじゃないですか」
「それは……、たしかにこれまではそうですが……」
近衛騎士団は、なんで人が押さえた容疑者を欲しがるのだ?
「マダムエドワルダをそちらに引き渡したらどうするおつもりですか?」
「密売ルートを吐かせ関係者を逮捕します」
「拷問で?」
「尋問ですが、拷問もするかもしれません」
コロンブさんは仏頂面を崩さない。
まるで貴族の事は全て近衛騎士団に任せて教会は引っ込んでろと言うかのようだ。
「マダムエドワルダは渡せません。近衛騎士団の監獄設備だと事故がおこりかねませんから」
「ですが、我々は近衛騎士団ですっ、貴族の捜査は我々がっ!」
「マダムエドワルダは聖心教の教徒です。大神殿の監獄施設は悲しいですけど、とても本格的です。王城の地下監獄に比べてもね」
コロンブさんはギリと奥歯を噛んだ。
近衛騎士団の女性部という事は武力も相当強いんだろうなあ。
リンダさんとどっちが強いかな。
今度聞いてみよう。
「わかりました、あなたは教皇さまにそう言えと言い含められているのですね。大神殿に直接抗議します」
「自分の考えですよ」
「そうですか」
コロンブさんは見下したような目で私を見た。
侮られているねえ。
まあ、いいけど。
「それではこれで失礼します」
コロンブさんは立ち上がった。
教皇さまにねじ込んでもマダムエドワルダは貰えないのだがなあ。
「ちょっと待ってください」
「おや、心変わりしましたか」
「しません。ちょうど近衛騎士団の協力を得たい案件がありましてね」
「なんでしょうか?」
「麻薬を邸内に持っている貴族の情報とか欲しくはありませんか?」
「は? なんですかそれは」
「今日、神殿聖騎士団と警備騎士団の合同で空から麻薬捜査をしましてね」
「空?」
彼女は、頭がおかしくなったか、という表情で私を見るなあ。
「この前飛空艇をダンジョンから掘り出しまして」
「最近飛んでいる小型の飛空艇ですか?」
「はい、その魔導レーダーで麻薬を探知したんですよ」
「本当の話ですかっ!!」
「ええ、今、それを元に、神殿聖騎士団と警備騎士団が王都内を捕り物に回ってまして。近衛騎士団さんにも、その情報をお渡ししようと思っていたのですよ」
「……」
コロンブさんは疑いの目で私を見ていた。
それはそうだよなあ。
言ってる自分でも嘘くさい話だと思うぐらいだもんなあ。
「とりあえず、見るだけ見てみませんか?」
「わかりました」
仏頂面が直りませんねえ。
コロンブさんを先導して、女子寮の地下から地下道へ抜ける。
最近洗濯場の隣の扉の鍵が開いてるなあ。
ちょくちょく私が通るからかね?
「女子寮の地下に、こんな通路が」
「ビアンカさまのお屋敷の残った部分ですよ」
「希代の悪聖女の……」
すたすたと地下道を歩いて、格納庫まで先導する。
最後の隔壁が開き、蒼穹の覇者号が見えると、コロンブさんは、おおっ、と感嘆の声を上げた。
「エイダさん、ハッチを開けて」
【了解です、マスターマコト】
ウイーーンとハッチが縦に開き、タラップになった。
「どうぞ」
「は、はい……」
コロンブさんはおっかなびっくり飛空艇の中に入ってきた。
私はメイン操縦席に入った。
各種ディスプレイが一斉に灯った。
「なんて豪華な操縦席……」
「作った人が馬鹿で浪費家なので」
実際魔導ディスプレイが壊れたら同等品に取り替えるだけで数百万ドランク掛かるぜ。
ビアンカさまは頭がおかしい。
「エイダさん、麻薬捜査の地図を出して」
【了解です】
航空士席のディスプレイを動かしてコロンブさんに見せた。
「赤い点が覚醒剤、青い点が阿片、緑の点がコカインです」
「な、これは確度の高い情報なのですか?」
「はい、間違いは無いと思いますよ」
コロンブさんは地図に目が釘付けであるよ。
「オーラン伯爵家に……。そんな馬鹿な……」
「この情報を持って帰って、近衛で捜査してください」
「他の騎士団はどうやってこの情報を持ち帰りましたか?」
「王都の大地図にクレヨンで書き込みしていましたよ」
「地図!! 地図を持ってきますっ!!」
「もう、こんな時間なので明日にしてください」
「し、しかしっ!!」
「メモ帳に反応のあった貴族の屋敷の名前を書いておけばいいでしょう。もうすぐ晩餐なんです。私」
コロンブさんの目が迷うように揺らいでいた。
「わ、解りました、今晩はメモで貴族の邸宅を捜査します。麻薬が確認できましたら、明日、地図に写しに来てよろしいでしょうか」
「かまいませんよ」
コロンブさんは目礼した。
そしてメモ帳を取り出して、家名と、舘のどこらへんに光点があるか書き写した。
「今日はここに踏み込みます。貴重な情報を感謝します、聖女候補さま」
「いえ、こちらも近衛騎士団に地図の話を通そうと思っていた所ですから助かりましたよ」
コロンブさんはしばらくの間、頭を下げていた。
うむ、なんか堅物そうだけど、悪い人ではないようだ。
良い関係を築けるといいのだけれどね。
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