第444話 孤児たちは船舷から下界に手をふる
ルカっちとヤツキノさんが居るテーブルに移る。
「クッキー食べる?」
私は収納袋からクッキー缶を出した。
「いただこう」
「ひよこ堂の高い方のクッキーは嬉しいね」
図書館委員がどうやって選ばれるかは解らないが、この二人は本のプロって感じでいいね。
「飛空艇はどう?」
「良い感じだね。王都を空から眺めるのは心が躍る」
「迷宮実習の時はすぐ学園に降りちゃうからね。周回はとても良いよ」
「そういえば、子供達に面白いお話をしてくれたみたいで、ありがとうね」
「子供はお話を沢山聞くべきだからね」
「心が豊かになンのさ」
やあ、読書家らしい良い意見だね。
「じゃあ、ゆっくり楽しんでいってね」
「ありがとう、マコト艇長」
「次の遊覧飛行の機会があったら教えてねン」
「わかったわ」
私は図書館コンビのテーブルから立ち上がった。
よしよし、みんな楽しんでいるようだね。
子供達は船舷に鈴なりになって地上を見ている。
一緒になって下を見る。
今は西の商業街上空だね。
「すっごいねー、みんな働いてるねー」
「衣服街だねー、荷馬車が行き来してるよー」
道を歩いていた子供がこちらを見て手を振った。
「「「わーー」」」
孤児院の子供達も手を振り返す。
うん、みんなを連れてきて良かったな。
また何かあったら孤児のみんなを乗せてあげよう。
キルギスは仏頂面でテーブルに座ってお茶を飲んでいる。
「なによ、不満?」
「不満はねえけどさ。早く聖騎士になって斬り込みに行きてえ」
「キルギスは、まだまだ子供だからさ、練習して強くなってからね」
「王都の中のガキって何にもしらないんだな、びっくりしたよ」
「スラムだと早く大人にならなきゃだしね」
「ああ、なんか他のガキがうらやましいというか、なんか、なあ……」
スラムの友達や仲間を置いてきた気になるのかもね。
世界の不公平はなかなか是正されないんだよ。
文明が進んだ前世でも理不尽な目にあう人は沢山いて、理不尽に恵まれた人もいた。
難しい事だね。
「スラムへの炊き出しとかを手伝えば良いよ」
「ああ、そうする。スラム教会の手伝いもしてえ」
「うんうん、がんばれがんばれ」
キルギスは顔をしかめて紅茶を飲み干した。
さて、メイン操縦室に戻るかな。
アダベルが寄って来た。
「マコトクッキーくれ」
「あんたはもう、幾つ食べるのよっ」
「いっぱい」
「んもう」
私は収納袋からクッキー缶を出して開けた。
もう少ししか残って無いな。
アダベルに一枚渡すと、奴めは一口でかみ砕きおった。
「うまいうまい」
気がつくとアダベルの後ろに孤児たちがならんでおる。
「一枚ずつね」
「「「「はーいっ」」」」
子供達にクッキーを配ったら、あと二枚しか無くなった。
アダベルが物欲しそうに缶をのぞき込んでいた。
まったく。
彼女の口にもう一枚放り込み、最後の一枚は私の口の中に消えた。
「クッキーはおしまい」
「ひよこ堂のクッキーは美味い」
「おいしいよねーっ、アダちゃんっ、パンも美味しいんだよっ」
「しってるよー、厚切りベーコンパンが美味い」
「ガツンとしたの好きなんだねー」
「肉好き!」
アダベルはドラゴンだからね。
食いしん坊ドラゴンであるな。
空の缶を収納袋に収めて、ラウンジに入る。
学者さんたちが何やら難しい話で盛り上がってるな。
「あ、マコトさん、今回の飛行は、どこまで行ったら終点かね?」
「くるっと一回りして、大神殿まで行きますよ。そこで子供達を下ろして学園に帰投します」
「そうかー、この楽しいクルーズももう終わりなのか」
「そうですね、西門上空ですのでもうすぐ終わりです」
「今日は前より早く回っているね、マコト」
「はいお養父様、今日は上空からの麻薬捜査なので、クルーズよりは早めに飛んでいます」
「ああ、やっぱりね。ホルボス山基地を調査に行く時も乗せていってくれますか?」
「はい、しばらく後になりそうですが、その時は飛空艇でお送りしますよ」
「それは楽しみですね」
若い学者さんは良い顔で笑った。
早めにホルボス山基地を調べて欲しいけど、登記して、領主の挨拶をしてからだから、まだしばらく掛かるね。
泊まるのは村長家なのかねえ。
教会でもかまわないけどね。
……日帰りできるな。
よく考えたら。
まあ、あとあとと、考えながらラウンジを出て階段を降りる。
廊下を歩いてメイン操縦席に入る。
相変わらず、航法士席でリンダさんとギヨーム団長が場所を取り合っているな。
「カロル、離席中になにかあった?」
「特に無いわね、良い感じに走査できてるわ」
私はディスプレイの中のマップをのぞき込んだ。
「わ、西も多いね」
「たぶん、通商街に拠点があるっぽいわね、行商人たちも不安が多いから薬の需要が高いわ」
「エイダさん、反応が沢山ある場所は解る?」
【ここの商家と王都外の倉庫に大量の反応があります】
反応が強い場所の光点が大きくなった。
「ここか、早速帰ったら強襲しよう」
ギヨーム団長が力強く言った。
「そうですね、早めに押さえましょう」
アルマン副団長が地図にクレヨンでマークを書き入れた。
どうも、大きい商会のようだね。
「貴族街の反応はどうしますか、団長?」
「近衛に教えてやっても良いが、あいつらとわしらは仲が悪いしなあ」
「解りました、こちらでなんとか近衛騎士団に伝えますよ」
「申し訳ない聖女様」
「騎士団が多くて横の繋がりが薄いのが良くないな」
「聖女さまのお陰で神殿騎士団とは繋がりが出来て助かる」
「王都の治安は聖女さまの望みであるからな」
本当は近衛騎士団とも連携して動きたいのだけれどなあ。
いまだに近衛騎士団長さんの名前もしらないよ。
なんとも困ったね。
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