表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

443/1531

第439話 麻薬密輸馬車を臨検したら東門の門番に怒られる

 リンダさんとキルギスを連れて馬車に近づいた。

 向こうも三人のむさい男が馬車の前に出てきた。


「聖心教会として、この馬車を臨検いたします」

「な、何かのお間違えではないかと、われわれは近隣の村から野菜を運んで来た行商人でございまして、ははっ」


 三人の中で一番人相が悪い男が卑屈な笑いを浮かべながらそう言った。


 私は手を後ろに回してサーチした。


 カーン。


「懐の銃を出せ」


 右の大男にフリントロック銃を向ける。

 男は私にぎらぎらとした目を向けた。

 奴は舌打ちをして、道に銃を投げ捨てた。


 三人とも顔がすっげー怖い。

 ヤクザ者だな。


 三人を銃で牽制しながら近づき銃を拾った。


 左の小男が無言で短剣を抜いて私に斬りかかってきた。

 キルギスがふわりと間に入ってきて、小男の腕を短刀でサクリと斬り飛ばした。

 絶叫が響き渡った。


「聖女、殺すか?」

「馬鹿ね、殺したら情報が取れないわよ」

「そうか。面倒だな」


 リンダさんが紐で手早く三人を縛り上げた。

 私は切断された手首を持って小男に近づき、ハイヒールでくっつけた。


「な、なんで? 俺は……」

「手が無いと困るでしょ、ありがたいと思うなら全部吐きなさいね」

「……あ、ああ」


 小男は困ったような顔で地面を見つめた。


 馬車の中をあらためた。

 新鮮な野菜が入った貨物室の床の下に大きなスペースがあり、木箱の中に麻薬や銃が入っていた。


 あれ、臨検して見事発見したけど、こいつをどうしよう?

 飛空艇に詰め替えて運ぶのもだるいな。


「おい、門番の兵が来たぞ」

「おお、気が利くなあ、門番さん」


 門番さんが歩兵を引き連れて馬でやってきた。

 やあ、門から目と鼻の先だから、兵隊さんと確認に来たのかな。


「困りますよ、聖女さん、門を飛び越しちゃ」

「あ」

「冒険者カードを拝見します、持って無い人は税金を払ってください」

「は、はい、この子は連れよ」


 私は引きつりながらキルギスを前に出した。


「君、冒険者カードは?」

「持って無い……」

「そいつは聖騎士団の騎士見習いだ。問題無い」

「そうなのよ、大丈夫、大丈夫、飛空艇には他の人は居ないわ」


 門番さんは飛空艇を見上げた。

 船舷にアダベルと子供の顔が鈴なりになっていた。

 あちゃあ。


「麻薬の密輸馬車を見つけて、とっさに王都外に出て臨検してしまいました、ごめんなさい」


 私は門番さんに頭を下げた。


「麻薬の密輸馬車ですか、こいつらですか?」

「そう、東門の衛兵さんのお手柄にしていいから、通行税は負けてくれない?」


 門番さんは苦い顔で私を見て、密輸馬車を見て、飛空艇の船舷に鈴なりの子供の顔を見た。


「あれは孤児達ですか?」

「そう、大神殿の孤児院の子供。社会科学習で飛行してたのよ」

「ふう、そういう事なら、しょうがありませんね。容疑者はこちらに引き渡して貰えるなら目をつぶりましょう」

「ありがとう門番さん。いつもありがとう」

「容疑者は引き渡す、だが、警備騎士団に連行してくれないか」


 リンダさんが門番さんに話しかけた。


「わかりました、聖騎士団の方には要りませんか?」

「市中の案件ではないから、警備騎士団が筋だろう」

「確かにそうですね。荷馬車の中身はまるごと頂いて良いのですか?」


 おっと、銃だけはこっちで押さえないと。


「ちょっと貰いたい物があるわ。それ以外は持って行ってください」

「わかりました」


 私はリンダさんと一緒に馬車の荷台から銃の入った箱を取り出した。

 木箱の中におがくずと共に十丁ぐらい入っていた。

 これと、黒色火薬の樽を引っ張り出した。

 弾を作るハサミみたいな工具が入った箱があったが、これは単体だと意味がないので持って行ってもらおう。


「リンダさん、これお願いします」

「わかりました」


 リンダさんが魔剣で箱の中の銃をバラバラに切り裂いた。


「リンダの剣はすごいな」

「上司を呼び捨てにするやつがあるか」


 リンダさんはキルギスの頭をぽかりと叩いた。


「リンダ師」

「うむ」


「ダルシー」

「はい、マコトさま」

「この箱と樽を飛空艇に運んで」

「かしこまりました」

「おい、女には重い……」


 ダルシーは箱と樽を一発ずつ叩くとヒョイと持ち上げて飛空艇に運んでいった。


「力持ちなのか、あのメイドは」

「重拳よ」

「重さを操作するやつか、そんな奴もいるんだな」


 キルギスくんはしみじみと言った。


「それでは、麻薬と御者たちをお願いしますね」

「わかりました、聖女さん。次はちゃんと門の事務所を通してくださいね」

「わかりました-」


 門番さんは御者たちを連行していった。

 密輸馬車は兵隊さんが乗っていった。


「東門という事はポッティンジャー領から来たのかな」

「そうですね、王都に入るような動きでしたので、マダムエドワルダへの荷でしょうね」

「まだ捕まった事を知らないみたいね。ポッティンジャー領への情報が届いてないのか」

「ポッティンジャー領は馬で三日の位置にありますから」


 ついつい前世の情報伝播力で考えてしまうけど、この世界だとなかなか情報は広がらないのよね。

 高速通信網が整っていないのだな。

 遠くとの情報のやりとりは腕木信号なんかでやっているらしい。

 悠長な感じがするが、無い物は仕方が無いね。

よろしかったら、ブックマークとか、感想とか、レビューとかをいただけたら嬉しいです。

また、下の[☆☆☆☆☆]で評価していただくと励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 情報伝達が遅いかぁ。 そして、向こう側はもう銃を量産化済みの感じですね。
[良い点] 東の門番さんは仕事熱心。 でも、情はある。 [一言] マダムの収監翌日だから出発した荷馬車は止めようがないね。鳩とか鳥飛ばして連絡しても間に合わないだろうし。
[一言] 不法に街を出た事を見逃す賄賂に麻薬密輸犯逮捕の手柄貰ってもどう報告するつもりだろう どうやって気付いたのかとか色々問い詰められて賄賂の件がバレた挙げ句に追徴金が贈賄でマコトが捕まるだけじゃね…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ