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第426話 風属性実習室は王子がいるので面倒臭い

 気を取り直して、次の反応の実習教室へ行く。

 次は風属性だね。

 教室の前でサーチ。


 カーーーン。


「この教室に二人います。男子が二人、席が隣り合ってますから友人同士かな?」

「ありがとうキンボールさん。サーチの魔法は凄いですね」

「やたらに便利ですよ」


 レーダーにもなるしね。

 サーチが無かったら私は何回か死んでいそうだよ。


「失礼します」

「おや、どうしましたかアンソニー先生」

「麻薬捜査ですよ、ドニ先生」


 風魔法の授業の先生はドニ先生というのか、カイゼル髭のダンディな紳士であった。

 教室の中には、ケビン王子と、エルザさんと、メリッサさんと、カトレアさんがいた。


「その三列目ののっぽとふとっちょです」


 なにか緊張した感じののっぽとにやけているふとっちょを私は指さした。

 アンソニー先生がそちらに歩く。

 のっぽがおもむろに立ち上がった。


「今日行こうと思っておりました。自首いたします」

「「「……」」」

「えー、捜査の人が目の前に来たら、自首ではありません」

「……えっ?」

「なので、罪は軽くなりませんよ」

「……え、まさか、ほ、放校ですか?」


 アンソニー先生がうなずくとのっぽ君はわなわなと震え、バッターンと床に倒れた。

 気絶したようだ。


 なんだろうなあ。

 なんで先に自首しないんだ?


 私はのっぽ君の元に歩み寄った。


『キュアオール』


 ……?

 あれ?


「はっ、僕は何を」


 のっぽ君は目を覚ました。

 ?

 私は反応のあった彼のポケットを探った。


「あっ、あっ、だめですよ」


 彼のポケットには白い錠剤が入った瓶があった。

 物証ゲット。

 だが。


「リ、リシャールくん、なんという事かね、君のような真面目な生徒が」

「すすす、すいません、ドニ先生」


 リシャールくんはペコペコと頭を下げた。


「あなた、麻薬やってないわよね」


 キュアオールに麻薬常習者特有の手触りみたいな物が無かった。


「え、あ、その……」


 リシャールくんは太っちょの方を見た。

 

「ど、どんな物か気になって一度やりました……」


 私は太っちょの前に立った。


「あなたからも麻薬反応がでました」


 太っちょはニヤニヤ笑いを止めない。

 

「え、俺はやってないよ。リシャールとは親友だからさ、奴の麻薬が移ったんじゃないか?」


 軽く彼の瞳孔が開いてる。


「そうだよなリシャール!」

「は、はい、お坊ちゃま……」

「その呼び方をやめろって言ってるだろっ、学園の中では平等だぞっ」

「は、はい、マクシくん」


 マクシくんはニヤニヤと下卑た笑いを浮かべる。


 やろう、地位を使ってなすりつけかよっ。

 聖女候補さまをなめんなよ、マクシくん。


「マクシミリアン・エルー伯爵令息、リシャール・モンセイ騎士爵令息は君の家の騎士だね」

「はい、そうでございます、ケビン王子」


 伯爵位かよ。

 大物だなあ。


「君は女神に誓って麻薬はやってないと誓うのだね」

「はい、もちろん」


 そして、ケビン王子よ、出しゃばってくんな。

 あんたは捜査員じゃないぞ。

 王子様だが。


 私は大きくため息をついた。


『ヒール』


 素早くマクシくんの額に手を当てて、ヒールで脳の中の麻薬成分を分解した。


「な、なにを……。う、うぐっ!! あああっ、なんだ、なんだこれはっ!! く、苦しいっ!! 何をしやがったっ!! チビッ!!」


 マクシくんは太った体をぶるぶる震わせながら床に膝をついた。


「脳の中の麻薬を全部飛ばしたんだよ。大丈夫、薬はやってないんでしょ」


 汗がぶつぶつと彼の顔に浮いてきた。

 目を見開いてガクガクと体を震わせている。


「あ”あ”あ”あ”あ”あ”っ!!!!!! 苦しい苦しい苦しいっ!! ぐああああっ!!」


 実習教室にいる皆が立ち上がり、マクシくんから距離を置いた。

 マクシくんは床の上でのたうち回っている。


「薬! 薬! くすりをくれええっ!!」


 彼は机の上に置いてあった瓶に飛びつき、中の錠剤を飲んだ。


「はあはあはあ、はあ……」

「あなたが麻薬患者ね」

「ざっけんなっ!! このチビ!!」


 私に殴りかかってきたマクシくんはダルシー……。


 ジャリジャリジャリーン。


 ではなくて、カロルの動かすチェーン君が止めた。

 ダルシーが一歩出遅れて悔しそうな顔をしていた。


「くそっ!! 離せっ!! オルブライトのクソ売女!!」

「なんだと、取り消せっ!!」


 私はカッとなって、チェーン君に捕まったマクシくんの股間に跳び蹴りを食らわせていた。


 チーン!


 マクシくんは激痛で声も無く、ぐねぐねと悶絶した。

 私は悪く無い。


「わ、私は大丈夫だから、マコト」

「もう一回、薬を飛ばして地獄を見せてやれ」

「やめなさい」


 くそう、カロルに止められたぞ。


 王子様の目の前で自ら薬をむさぼることでマクシくんは麻薬中毒患者の証明をしてしまったのである。


「リシャールくん、君はマクシミリアン卿の麻薬摂取を庇うつもりだったのかね」

「……はい、ケビン王子」

「栄光あるアップルトンの騎士がそんな不正な事に加担しては駄目じゃないか」

「お恥ずかしくおもいます……」


 私はケビン王子の背中を軽く叩いた。


「な、なに、キンボールさん」

「あまり言ってやりなさんな、伯爵令息と騎士爵だとどうにも出来ないよ」

「しかし……。ああ、そうなのか……」


 ケビン王子は善人だけど、それだからこそ、いろいろと見えてないよね。

 ロイドちゃんの方が下々の気持ちがわかるかな?

 世知辛い事は外付けでイヤミメガネが請け負ってるのかね。


 ケビン王子はじっと考えているようだ。

 リシャールくんに何かしてあげたいなら、ジェラルドめと相談しなさいよね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] マコトさんが珍しく遂にキレましたね。カロルさんの為に怒っだから、中々凄く尊いだと思います〜 ちなみにですけど、患者がここまで異常に悪意溢れだと、もはや麻薬の感じじゃなく、催眠術や洗脳魔法み…
[一言] 出たあああああ! 久しぶりの金的!! 親友をコケにされて聖女の怒りが炸裂したー!!
[一言] 出たァぁーーー!聖女のフェイバリット、金的攻撃が炸裂だァァーッ!! お家断絶か、はたまた廃嫡蟄居か、いずれの沙汰かはまだ知れぬが、いずれにせよこの男にはもう必要のない代物であります二つの袋。…
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