第419話 聖女の湯と飛空艇アメニティで疲れを吹っ飛ばすぜ
カポーン。
現在地下大浴場で湯船に浸かっている。
ああ、聖女の湯は良いねえ。
激動の一日の疲れが吹っ飛ぶみたいだわ。
大浴場も十時を過ぎると私とカロルだけでのんびり出来る。
カロルは今日はお風呂に入らないとか抜かしたので、彼女の体の匂いを嗅いで臭い臭いと言ってむりやり連れてきたのだよ。
うひひひ。
本当は良い匂いだけどね。
はーのんびりする。
「聖女の湯は一日は持つわね」
「そろそろ次のを作らねば」
「どんなのを作ろうか」
「イチゴみたいなフルーティな匂いが良いなあ」
「果実を入れるとどうなるのかしら、見当もつかないわ」
「試してみよう~。友鳴花も入れたいな、旬はいつ頃?」
「開花時期は夏だから、もうちょっと後よ。余分は全部オルブライト領で買うわ」
飛空艇で高山にお花摘みに行こう。
うむうむ。
良いだろうなあ、友鳴花のお花畑。
カロルと一緒にリンリン鳴らしたい。
「夏以外に友鳴花を使いたいときは?」
「ドライフラワーにして保存しておくのよ。エリクサーなんかに使う時はそんなに量はいらないし」
本当の希少素材なんだなあ。
体が温まったので洗い場に出る。
ダルシーがどこからか現れる。
その手には飛空艇アメニティがある。
「聖女の湯とアメニティが合わさるとどうなるか気になります」
「わたしもよ、ダルシー」
アンヌさんが見ていたのでにっこり笑った。
「カロルにも使ってあげて」
「ちょっちょっ、良いわよ、そんな文化財級の物は」
「封を開けちゃったからそんなには持たないのよ。悪くなる前に使い切らないと」
「友鳴花は欠片一つも逃さないように使うのに、アメニティで幾らになるのか怖いわ」
「他に転用は出来ないから使うしかないわよ」
ダルシーがスポンジにボディシャンプーをたっぷりと付けた。
ああ、良い匂いだなあ。
官能的で爽やかな感じの匂いがするね。
アンヌさんが瓶を受け取ってスポンジに付けた。
「はあああ、そんなに……」
カロルは体を縮こまらせた。
そんなに恐縮しなくてもさあ。
わっしゅわっしゅ。
ああ、良い気持ち。
ダルシーに全身くまなく洗われるのは気持ちがいいね。
泡がふわふわだ。
うむ、前の方はまだ照れくさいね。
大分なれたけど。
ショワワワワー。
シャワーで洗剤を流し落とす。
ふう、さっぱりするね。
お肌もつやつやつやつやであるよ。
すんげえ。
次は髪の毛である。
ダルシーはシャンプーを手に出して私の頭でシャコシャコと泡立てた。
お花の匂いの包まれる感じよね。
ふわあああ、良い気持ち。
うっとり。
ダルシーは泡をまんべんなく作って毛先に向けて洗っていくようだ。
目をつぶってるから解らないけどね。
気配で感じる。
いやあ、飛空艇アメニティは生産したいねえ。
自家用だけでも作りたい。
うむうむ。
派閥の子にも味わわせてあげたいけど、大浴場で使うと目立つよねえ。
飛空艇のシャワー室限定で洗わせるかな。
新入生歓迎ダンスパーティの本番までに考えよう。
「うわ、これ凄いですよお嬢様」
「は、肌がつるつるになったわ」
ふふふ、そうであろうそうであろうカロルよ。
シャワワーーー。
ダルシーがシャンプーを洗い流した。
暖かいお湯が頭を通り過ぎて行く感じが好き。
冷たい液体がぺちょりと髪について伸ばされた。
コンディショナーだね。
髪に馴染ませるようにダルシーの細い指が動いていく。
ああもう、気持ちが良いね。
シャワワーー。
コンディショナーを洗い流して洗髪は終わり。
夕方にも髪は洗ったので、あんまり何回も洗髪するといけないのだが、気持ちいいのでしょうが無いのです。
「友鳴花の匂いが良いですねえ」
「私は値段を換算して縮こまってしまうわよ」
「良いではありませんか、ビアンカさまからの贈り物ですよ」
「本当にお金持ちの聖女さまは信じられないわ」
ダルシーが手早く水を落としてバスタオルを髪に巻いてくれた。
「おわりました、お疲れ様です」
「いつもありがとうね、ダルシー」
「それは言わない約束ですよ」
時代劇かな。
私は湯船に体を滑り込ませた。
はあ、あったまる。
カロルの方の洗髪も終わって、彼女はぎこちない笑顔を浮かべて湯船に入ってきた。
「たぶん、今、五百万ドランクぐらい使ってしまったわ」
「そんな換算はやめなさい」
友鳴花は素材でもそんなにするのか。
さすがはビアンカさまだなあ。
「友鳴花を摘んで、アメニティを再現したいんだけど、できるかな」
「分析すれば多分。マコトの光分析で成分を書き出せば作れそうよ」
そういやそうか。
「幾らで売れるだろうか」
「売れない」
「なんでっ」
「瓶からして時間停止の魔法が掛かってるし、希少材料を惜しみなく使ってるから、少量作って国家間のご贈答用にアップルトン王家に売るのね」
「そ、そんなに?」
「一瓶一千万ドランクとかそういう次元の話よ」
ままま、まじかーい!
カロルが縮こまるわけだ。
い、一千万のシャンプーは凄いな……。
なんでそんな物を無造作にシャワー室に置いてあるのだ。
まあ、価値が解らないから誰も盗らなかったんだろうけどさ。
封を切った奴だけ使うか。
意外に凄いアメニティだったなあ。
「ダンパの前に一回だけみんなに振る舞うようにしよう」
カロルがくすりと笑った。
「マコトらしいわね。他に転用も出来ないからちびちび使いましょう」
そうだね、ちびちび使おう。
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