第409話 試着をしてテンションが上がりアイドル活動をしてしまう
アダベルがとことこ歩いてきて、ビアンカ様シャンプーの匂いを嗅いだ。
「うへえ、竜の薬草の匂いがする」
「竜も使うの?」
「そうだよー、なんか竜の魔力が高まって熱があるときとかこれを食べるんだよ。私も何回か食べた~」
「ああ、そうか、エリクサーも蘇生薬も竜の血が入ってるからね」
「ん、カロル、どういうこと?」
「友鳴花には竜の血の毒を押さえる効果があるのよ。ほら効果が激烈だから」
おお、竜の血の作用を和らげるために蘇生薬やエリクサーに入ってるのか。
なるほどねえ。
「なんで友鳴花っていうの?」
「仲の良い友達がお互いに友鳴花を持つと、リンリンッて鳴るからだそうよ」
「おー、カロルと私が持ったら鳴るかなあ」
「鳴るわよ、絶対」
「私とは私とは?」
アダベルがぴょんぴょんと小さく跳ねて主張した。
「鳴るよー、アダベルとも仲良しだし」
「わあっ、良かった」
「聖女派閥で友鳴花の群生地に行って、みんなで鳴らしたら楽しいかもな」
「……ブロウライト卿、それ、誰かが鳴らなかったら気まずいですわよ」
ヒルダさんがぼそっと言った。
「そ、それもそうか……」
カーチス兄ちゃんがしおれた。
まあ、気まずいよねえ。
カロルと私とアダベルでリンリン鳴らした方が無難か。
というか、私とカロルとで鳴らなかったらショックだよなあ。
意外に怖い花だな。
さて、雑談してないで試着試着。
早くしないと時間がずれ込んでご飯が食べられなくなるよ。
お針子さんが、私のドレスを持って来てくれた。
色は白と水色と金色だ。
男爵位クラスのドレスだからちょっと布地が安っぽいけど、そこはデザインで勝負だよ。
「カーチス、エルマー、出て行って」
「お、そうか、隣のペンティア部でも行ってるか」
「彼らも……、礼服を……、喜んで居たから……、歓迎して……くれる……」
そうか、そろそろ外も暗くなってるからね。
外ベンチだとキツイね。
男子どもが出て行ったので、扉を施錠して制服を脱ぐ。
「下履きは?」
「普通ドロワースだけでございますよ、聖女さま」
「そう」
スポーツブラを外して籠に入れる。
シュッシュとした布地の感触が気持ちいいね。
ドレスの基本は白で、水色と金でアクセントを取ってある。
スカートはふわふわのフレアスカートであるよ。
「うわあ、マコト綺麗だなっ」
「素敵みょんよ」
「ありがとうアダベル、コイシちゃん」
お針子さんが服のあちこちにまち針を打っていく。
姿見の鏡を見ると良い感じ。
可愛いなあ私。
うっしっし。
カロルが後ろに回って髪を結ってくれる。
「ありがとう、カロル」
「せっかくだからダンスパーティと同じ格好にしましょう」
「そうね」
くるくるとカロルの指が私の髪を結い上げてアップにしてくれる。
最後に光るリボンを頭の両側に付けた。
光魔法をチャージして光らせる。
「これは……」
「とんでもない感じね、マコト」
「そう?」
鏡の前でくるくると回る。
うんうん、確かにこれは凄いな。
前世のアイドルもかくやという格好であるね。
目立つ目立つ。
うんうん。
ちょっとチャカチャカ踊ってみよう。
うっは、すげいすげい。
「なんだかすごい踊りみょん」
「テンポが凄く早いですわね」
アダベルが隣にきて、踊りを真似しはじめた。
うっしっし、アイドル育成ゲームで覚えた動きじゃい。
二人で踊ると良い感じだな。
ああ、曲と歌が欲しい。
「二人とも凄いみょん、可愛いみょんよ」
「何のダンスなのそれ? 見た事無いけど、引きつけられるわ」
「アダベルも覚えが早いね、上手いよ」
「なんだか、この動きをすると気持ちが跳ねる感じがするぞ」
うむ、心がみょんみょんするのか。
鋭いぞアダベル。
秋の文化祭では、アダベルと一緒にアイドル活動をしても良いかもしれない。
ふう。
一曲踊って気がすんだぞ。
アダベルの頭をぐりぐりと撫でた。
「終わりか?」
「終わり終わり」
「そっかー、楽しかったのでまたやろう」
「そうだねー」
楽団を探せば歌も付けられるか。
楽しそうだ。
カロルも入れて三人でアイドルユニットを組もうかな。
さて、馬鹿な事をやってないで、次はカロルの試着だね。
カロルのドレスはシックなえんじ色だ。
デザインも割とシンプルな物にしてある。
カロルが制服を脱いでブラを外した。
「もう、マコトはなんでエッチな目で私を見るかな」
「み、見てない見てないよ」
「マコトしゃんはカロルしゃんが大好きみょんなあ」
「い、いや、大好きだけど、エッチな目では見ていない、誤解だ」
「どうだか」
お針子さんがカロルにドレスをまとわせていく。
カロルの栗色の髪にえんじ色がよくはえるなあ。
可愛いなあ、可愛いなあ。
お針子さんがまち針を打って仮止めをしていく。
着終わったあと、カロルは光るリボンを首に巻いて止めた。
私は近寄って首のリボンに光の魔力を込めて起動させる。
ふーおーっ!
すっげえすっげえ。
可愛い。
「カロルも綺麗だなあっ!! いいなあいいなあ」
「カロルしゃんも素敵みょんなあっ」
「えへへ、ドレスなんて久しぶりね。えー……」
ああ、そうか。
カロルは子供の頃の事件の後、ずっとドレスとかも着てないんだな。
私はカロルの肩を抱いた。
「大丈夫大丈夫」
「そうね、マコトのおかげよ、ありがとう……」
「そんな事ないよ」
大丈夫大丈夫、これからもの凄く沢山の楽しい事をカロルとやって、過去の記憶なんか全部私が消してあげるからさ。
大丈夫だよ。
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