第406話 王宮の捜査を終えてひとっ風呂あびにいく
地下牢の階段を上がって一階に出ると空気が美味しいや。
なんという酷い環境だろうか、監獄がまだ誕生してないな、あれは地下牢だ。
私は、んくっと伸びをした。
「それではケビン王子、王宮の捜査は完了という事で」
「ありがとうキンボールさん」
ケビン王子はにこやかに笑った。
地下牢から出てきたばっかなのに爽やかだなあ。
「キンボール、今夜のマダムエドワルダとの夜会への準備の会議は良いのか?」
「いらん、うるさい、適当に手勢を集めて適当に逮捕する。私はこれから、お風呂に入った後にドレスの試着をするんだっ」
「ぐぬぬ」
もう四時ぐらいだよ、お風呂に入って、試着して、晩餐を食べたら、マダムエドワルダの家に行かないとなあ。
今日はめちゃくちゃ忙しい。
「じゃあ、警備局の騎士を僕が集めておくよ、僕も行っていいでしょ?」
「まあ、ロイドちゃんは警備局の責任者になるからいいか」
「僕とジェラルドは?」
「王宮で朗報を待ってなよ、来てもなにもすることが無いよ」
「そ、それはそうだけど」
「ケビン王子、とりあえずは書類を整理しましょう。証言が重なれば新事実が出るかもしれません」
「そうだね、そっちの方面からの応援も有りか」
そうそう、あんたたちは書類仕事してなさいよ。
「今夜のマダムエドワルダ邸に行くの名目上は夜会よね、マコトは新しいドレスを着ていくの?」
「え?」
確かに名目上は夜会だなあ。
でも新しいドレスで行って、戦闘とかで汚れたら新入生歓迎ダンスパーティで恥ずかしいしなあ。
「教会の聖女の正装で行くわ、カロル」
「確かに、聖女候補を呼んでいるのだから、それもありね」
「聖女の正装もかなり高価だろうに」
「聖女候補の仕事で行くので、汚れてもクリーニングして貰えば良いのよ」
必要経費だわさ。
「じゃ、ロイド王子、八時に女子寮の前まで馬車を回してね」
「はいはい、聖騎士部隊は出ないの?」
「リンダさんが面倒臭いのでほっとく。今は楽しそうに王都内のヤクザを締め上げてるらしいし」
「そ、そうだね」
リンダさんは頼りになるが、場を引っかき回すからねえ。
「じゃ、学園に帰りましょう」
カロルが私の手を握って引いた。
「うん、帰ろう」
うふふ、カロルの手の温かさが心地よいね。
私たちは手を握ったまま、王宮を後にした。
「さあ、まずは一緒にお風呂に入ろう」
「え、いやよ、混んでるし」
「えーっ! 一緒に入ろうよーっ」
「自分の部屋のお風呂に入って行くわ」
「じゃあ、私もそっちに入る」
「一人用だから狭いわ、マコトは大浴場に行ってらっしゃい」
もーもーっ、一緒に入ろうようっ。
王宮門の門番さんに挨拶をして、門をくぐり、私たちは学園に戻った。
やれやれ、やっと放課後になった気がするよ。
女子寮の前でエルマーと別れた。
「では……、後で……、集会室に……、行ってる」
「今日はありがとうね、エルマー」
「気にしない……、友達……として当然……」
エルマーは手を振って集会棟の方へ歩いていった。
さて、女子寮の中に入った。
カロルが手を離そうとしたので、ぎゅうぎゅう握りこんだ。
「はなしなさいよ」
「一緒にお風呂いこうよーっ」
「てい」
カロルが私の額にチョップをくりだした。
「あうっ」
「また後でね、集会室で合流しましょ」
「わかったよう」
もう、カロルはつれないなあ。
しょうが無い、一人でお風呂に入るか。
とぼとぼと階段を降りていったら、地下階のお風呂の前に人だかりがしている。
……。
お風呂待ち?
「今日のお風呂は聖女の湯ですっ。現在一時間待ちです」
大浴場の前で聖女の湯解放戦線のエイミーさんが入場制限をしていた。
「あ、マコトさま、こんにちわ」
「いま、混雑してるの?」
「はい、みんななるべく早く入りたがりまして」
「そうなの、大変ね、頑張ってね」
「はい、ありがとうございますっ」
私は踵を返して歩き始めた。
しかし、どうしようか、夜に入るかなあ。
んー。
カロルにお部屋のお風呂を貸せーと言うのもなんだしなあ。
断りはしないだろうけど、一緒には入ってはくれないだろうし。
そんなお風呂には何の価値も無いんだぜ。
あ、飛空艇のシャワーをあびようか。
うんうん、試して無かったからね。
私は洗濯場の横のドアノブを回した。
ガチャリ。
うむむ、鍵が掛かってるぞ。
背後にダルシーが現れた気配がした。
「マコトさま、飛空艇にいらっしゃるのですか?」
「うん、シャワー設備を試そうかと思って、ここ、開けられる?」
「お任せください」
ダルシーはピンを取り出して、鍵穴に差し込んだ。
カチャカチャやっている。
カチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャ。
だ、駄目かな? と思った時、カチャリと鍵が開いた。
「ふうっ」
ダルシーは額の汗をぬぐった。
「やったね、ダルシー、えらいえらい」
私はダルシーの頭を撫でてあげた。
彼女は目を細めてうっとりしている。
階段を下りて通路に出ると、自動的に灯りが灯った。
「エイダさんありがとう」
【どういたしまして。シャワー設備を使うのですね、ボイラーを回してお湯の温度を上げておきます】
「ありがとう」
シャワー設備とお部屋があるから、蒼穹の覇者号での長旅も大丈夫そうだね。
通路を歩いて行くと、自動的に扉が開閉するのはラクチンだな。
「ダルシー、シャワー室にシャンプーとかリンスとか在ったっけ?」
「はい、備え付けの洗剤類は劣化しておりませんでした。使えます。ボディブラシやボディソープもありました」
それは助かるな。
百二十年ぐらい前の石鹸類はどんな匂いだろうか。
楽しみ楽しみ。
格納庫まで来た。
やっぱ蒼穹の覇者号は格好いいなあ。
船体に近づくとハッチが自動的に開いてタラップになった。
さあ、蒼穹の覇者号シャワーを試そうではないか。
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