第405話 マダムエドワルダから招待状が届く
「で、ですから、私は麻薬だなんて知らなくて、王宮で売りさばいたのは謝りますが、知らなかったんです」
隣の牢の執事が鉄格子を蹴った。
「ざけんじゃねえよっ、お前、嬉々として売ってただろっ! 聖女さま、こいつが全ての元凶です、俺は巻き込まれただけなんですっ!!」
「なによーっ!! お前も小遣い稼ぎだってやってただろっ!! ふざけんなよ、お前っ!!」
メイドも鉄格子を蹴る。
もう、ガンガンと音がうるせえ。
そして超見苦しい。
「うるせえ、治療してやんないぞ」
「本当なんです、信じてください聖女さま」
この売人メイドは真顔でウソを付く女だな。
私は覚えた。
鉄格子の間から手を伸ばして額に置こうとしたら、売人メイドは私の腕を掴みやがった。
「ひゃっはーっ!! 聖女の命が惜しいなら、この牢をっ!!」
『ライト』
バッシュンと八倍魔力の崩壊閃光を売人メイドに食らわしてやった。
「ぎゃああっ!!! 目が、目が~~!!」
「もう、おまえは治してやんない、薬切れで苦しみなさい」
「やだーっ!! やだーっ!! 目が目がーっ!!」
ジェラルドが寄って来た。
「大丈夫か、キンボール」
「ちょっと引っかかれただけだよ」
「マコトさま、牢の鍵を開けてください、この馬鹿女に生きている事を後悔させます」
ダルシーが現れて物騒な事を言う。
「いいよ、面倒くさい」
「ですがっ」
どうどう、ハウスハウス。
逆上したダルシーも面倒くさい。
引っかかれた傷なんかはヒールしておけば良いのだ。
と、思ったらカロルが傷にポーションを掛けてくれた。
傷はすぐ治った。
「ありがとう」
「どういたしまして。ケビン王子、この女の牢に催涙薬を撒いて良いですか」
「牢だからね、オルブライトさん。地下牢の皆がやられてしまうよ」
「良いじゃないですか、こんな奴ら」
カロルも激怒してるな。
どうどう、ハウスハウス。
売人メイドをパスして、チャラ執事の牢の前に来た。
「大人しくしていれば治すけど、暴れるなら治さないよ」
「わ、解りましたよ、穏便にしますから、罪の方は加減してくださいよ」
「何を言ってる、麻薬に手を出した執事なぞは吊るし首だぞ」
「い、命だけは、命だけは勘弁してくださいよう、ジェラルドさまぁ」
「黙れ、情報を吐いたら、考えてやらんでもないぞ」
売人メイドが鉄格子に体当たりをした。
ガチャーンと大きな音が地下牢に響く。
「マダムエドワルダ!! マダムエドワルダから買いましたっ!! だからお願いです、命だけは助けてくださいっ!!」
「お前は悪質だから何を言っても吊るし首だ」
「いやああっ!! 何でも喋りますからっ!! マリオンを狙うように言ったのもマダムエドワルダですっ!! 私の考えじゃ無いんですっ!!」
「君がマリオンに薬を……」
あーあー、もう、ケビン王子まで切れおったぞ。
マルゴットさんがパンパンと手を叩いた。
「王子さまたち、ここは私に任せてください、あなたたちはどっか行って下さい。そのうち怒って囚人を怪我させかねませんし」
「うむむ」
「王子、尋問はマルゴットに任せましょう、こいつらは不快で話を聞くのも汚れそうです」
「そうだね。マルゴット、お願いできるか」
「よろこんで」
売人メイドがガンガンと鉄格子を叩き始めた。
「助けてっ!! 助けてっ!! 死にたくないっ!! 死にたくないっ!!」
「うるせえっ!」
私は鉄格子に手を突っ込んで売人メイドの頭を叩いた。
『キュアオール』
げ、一発では通らないのか。
『キュアオール』
『エクストラヒール』
ついでに片目も治しておいた。
「あ、ああああっ、ああああああっ!!」
売人メイドは薬でハイになって暴れていたようだ。
薬が抜けると、悲鳴を上げ、真っ青になってしゃがみこんだ。
「マコト、そうやって事務的に囚人の頭から薬を飛ばしてよ」
「そうだね、マルゴットさん」
もう、鉄格子越しに、囚人どもの頭を叩いてキュアオールを叩き込んでいった。
大体の囚人は空気を読んだのか、黙って鉄格子に頭を付けて待っていた。
本当にもう。
「マルゴットさん、マダムエドワルダって誰?」
「んーー? 諜報の世界の人間じゃないわね」
「夜会の女帝と呼ばれている淑女だな。子爵の旦那が死んだので、爵位を継いで女子爵となっている。王都でも有数の人気夜会主で、マダムエドワルダの夜会というと参加したい者が列をなすというな」
さすが、ジェラルド、貴族の事については詳しいな。
マルゴットさんが知らないという事は諜報系の人間じゃ無いのか。
こいつがコカインルートの元締めかな。
最後の一人の頭を叩いて、地下牢の囚人の治療は終わった。
さあ、帰ろう。
ここは不愉快だ。
入り口から衛兵に連れられてメイドが降りてきた。
ん?
瞳孔が開きまくってるな。
「新しい患者か?」
「それがその、自首してきたのですが、聖女候補さまにお話があると」
ガンギマリメイドは小さく頭を下げた。
なんだか、ニヤニヤ笑っているな。
「なによ?」
「あなたが聖女さまですか、思ったよりお小さいのですね」
「ほっといて」
「我が主、マダムエドワルダから書状を預かっております」
そういうとニヤニヤメイドは封蝋した手紙を私に差し出した。
なんぞ?
私は手紙を受け取り、封蝋を解いて羊皮紙を広げた。
『聖女マコト・キンボール様
突然のお手紙をお許しくださいね。エドワルダと申します。
このたび、聖女さまとの誤解を解くために夜会を催したいと思います。
つきましては、今夜の八時半、お一人で我がオダン家までいらっしゃいませ。
楽しい夜会をいたしましょう』
「罠よ、マコト」
「罠です、マコトさま」
「騎士団を出そう、キンボール」
「近衛を出そう、ジェラルド用意を」
「罠……だな」
「おまえら人の手紙を横からのぞき込んで罠罠言うなよ」
「いやあ、罠中の罠だよ、マコトっち」
ニヤニヤメイドがかしこまっている。
「お返事をいただけますか?」
「お誘い嬉しく思います、是非ともお会いしたく、オダン家へ一人で参ります」
「「「マコト!!」……」さまっ」
「「キンボール」さんっ!!」
「マコトっち!!」
ニヤニヤメイドは満面の笑みを浮かべた。
「それでは吉報をマダムエドワルダへお届けしてまいり……」
「ざけんな」
私はニヤニヤメイドに駆けよって頭をパアンとはたいた。
『キュアオール!!』
「あ、ああっ!! 薬が、薬の効果がっ!!」
「お前みたいなクソ中毒者を逃がす訳ないだろ」
ニヤニヤしていたメイドは床に崩れ落ちた。
「聞いたね、ケビン王子、ロイド王子、今夜夜会ルートの黒幕をとっ捕まえる!」
「い、いや、だが、危ない」
「そ、そうだ、キンボール、危ないぞ」
「マコトっち、考え直して」
「うるせいやい、敵が出てきてくれてるんだ、ぶっ潰す」
カロルが私の前に立ち塞がった。
「私も行くわ」
「私も行きます」
「僕も……」
ダルシーとエルマーも立ち塞がった。
私はため息をついた。
「よし、あと、カーチスも連れていこう」
カロルとダルシーとエルマーがにっこり笑った。
「む、無謀じゃないか、マコトっち?」
「何を言ってるのよロイド王子、敵の居る場所が解る、私のサーチで罠も解る。なら罠を噛み破って、マダムエドワルダを逮捕してやるわ。王子は警備局の騎士を動かしてちょうだい。スラム突入の時のメンバーが良いわ」
「ひ、一人で行くわけじゃないのか」
「ばっかねえ、夜会に一人で来いって言ってるけど、家の前まで何人連れてきちゃ駄目とは言われてないわよ」
皆はほっとしたように笑った。
「マコトはトンチ聖女だわね」
マルゴットさんがぽつりとつぶやいた。
やめろ、私を一休さんみたいに言うな。
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