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第403話 隠し通路の白骨メイドを浄化する

 とりあえず、マリオンさんの方は片付いたな。

 知らずに麻薬飲んでた人を罪に問うのはちょっとねえ。

 それを言うと、騙されて飲まされてなった中毒患者さんもなあ、と、取り締まりの幅が曖昧になって困るね。

 ノリノリで売ってた売人どもは逮捕で当然なんだけどなあ。

 人が困窮したり、健康に害があると解っていて、お金を儲ける為にやってる奴は厳罰だね。

 勘違いして薬の楽園が来ると思って邁進した人は、まあ、気の毒だがしょうが無い。

 運が悪かったと思って罪をかぶって欲しいな。


「では、五階に行く前に白骨死体を調べよう」

「んー、ではこっち」


 私は麻薬捜査チームを西側の壁につれていった。

 空き部屋の壁の向こうだな。


「まあ、このお部屋は」


 マリオンさんの顔色が変わった。


「何か知ってるのかい、マリオン」

「お化けが出るって有名なお部屋ですよ。半透明のメイドがシクシク泣いてるって。メイド仲間が何人も見たって言ってますよ」


 なんと王宮の怪談案件になっているのか。

 まあ、アンデットが居る世界だから、ゴーストも居るよね。


 私は壁の前でサーチして見る。


 カーン!


 うーん、この戸棚の向こうに入り口があるっぽいな。


「そこから入れるのか?」

「だろうと思うよ。ただ、開ける仕掛けが解らないなあ」

「どれどれ」

「どれどれ……」


 カロルとエルマーが空の戸棚を調べ始めた。


「この作り付けの置物が怪しいわ」

「リンゴの……、置物……」

「アップルトン王家?」


 ケビン王子が前に出た。


「抜け穴の入り口の仕掛けは色々あるんだけど、時々展開方法が解らない物もあるんだよね。リンゴの置物は初めてかな」


 ケビン王子が風属性の魔力をリンゴの置物に流すと、ガチャリと戸棚の後ろから音がした。


「属性じゃなくて、王家の魔力波形の特徴で開くみたいね」

「何代も続くと血が薄くなって開かなくなるかもしれない仕掛けだな」

「そういう時は……、魔法陣を……、書き換えて……、対応……」


 なるほどね。

 戸棚を引っ張ると壁の中に狭い通路があった。

 埃が凄いね。

 何十年も人が入って無いようだ。


 ダルシーが現れて私の前に入っていった。

 サーチ魔法を掛ける。


 カーーーン。


 特に白骨以外何も無いね。

 あかり取りの小窓が切ってあって、そんなには暗くない。

 とりあえず入ろう。


 ダルシーの背中を眺めながらちょっと歩くと、床に埃をかぶった白骨死体があった。


「死体です」

「そうだねえ」


 白骨死体はうつ伏せになって倒れていた。

 メイド服のデザインが古い。

 胸に当たる部分に錆び錆びの短剣が刺さっていて、これが致命傷らしい。


「本当に白骨ね。百年ぐらい前かしら」

「そうだな、大体そんな感じの服装だ」

「後期アップルトン王朝の立ち上げぐらいの時代か。マリアお婆さまの前だね」


 狭い通路にみんな詰まって、見せろ見せろと押してくる。

 やめろー。


「どうしますか、マコトさま、外に出しますか?」

「ちょっと待ってね、なんか陰気が発生してるから、まずは浄化するよ」


 私はパンと手を叩いた。


浄化ピリーファイ


「名も知らぬメイドよ、非業の死に命を失った哀れな存在よ、私、聖女候補マコト・キンボールが女神の名代として、あなたを浄化する。空に昇りまた新しい生を受けるまでたゆたうといい」


 ぽっと光の球が現れて、天井を無視して上昇していった。

 私は上昇が終わるまで目で追った。


「よし、これでもう、お化けは出ないでしょう」


 私はしゃがみ込んで白骨死体をメイド服ごと収納袋に入れた。


 倒れている所とか近くの壁とか見たがダイイングメッセージは無いようだね。


 私が振り返ると、麻薬捜査チームが団子になって詰まっていた。


「一番後ろから、さっきの部屋までもどれー」

「わ、解ったよ、マコトっち」


 団子がほぐれるまで時間が掛かった。

 空き部屋に戻ってきたぞ。


 床に白骨死体を取り出す。


「百年ぐらい前の行方不明のメイドを探せるだろうか」

「あとで書庫で調べてみますよ、ケビン王子」


 メイド服の中を探して見たが、特に何も持ってないなあ。

 刺された短剣は豪奢な感じで、柄の所に金メッキが残っているな。


 何があったんだろうなあ。


「キンボール、隠し通路がどこに繋がってるか調べないのか」

「王宮の秘密なんざ知りたくもないよ。王家の人間が探検しなさいよ」

「そ、それもそうだな」

「新しい隠し通路か、あまり書物に残す物では無いから時に失伝するのだね」

「何かあったときの脱出口になります、後で調べておきましょう」

「そうだね、ジェラルド」


 マリオンさんが持って来た大きめの白い袋に白骨死体を収めた。


「後の処理はよろしく」

「は、はい、浄化は済んでますから、普通にお葬式すればよろしいですか?」

「普通に弔えるよ」


 ただ、なんで、こんな所で死んでいたのかは謎だなあ。

 お化けになって出てたというから心残りはあったのだろうなあ。

 王族付きのメイドの殺人事件かあ。

 若い王子がメイドでも孕ませたかな。

 あ、マリアさん伝説の悪い第一王子ならやりかねんな。

 まあ、ゆりゆり先輩のご先祖だから、悪口もあまり言えないが。


 結論、王宮は闇!

 早く五階をサーチして帰ろう。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 王宮の闇も恐ろしいですけど、今は麻薬の方がもっと恐ろしいです。 マコトさん、本当にしっかり聖女の役割りをやっていますね〜
[良い点] 100年前に非業の死を遂げたメイドさん、やっと昇天(-人-) そして、王家のことに深入りしないようにする思慮深いマコトちゃん。 快癒したマリオンさんは働き者。 [一言] 先代聖女のマリアさ…
[気になる点] メイドの正体・・・私、気になります! 言ってみたかっただけともいう。 [一言] まあ話的にスルーされるようなものなんでしょうけど。ドラクエのダンジョンの背景に転がってる白骨みたいな?…
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