第400話 医務室で生徒を治療をしたあと集会室に入る
医務室の中には六人の生徒たちがいた。
みんな思い思いの格好で椅子に座っていた。
「六人だけですか?」
「そうだよ、自首してきた生徒だからね」
王宮の麻薬の浸透具合を見ると学園にも、もっと沢山居そうだね。
男子生徒が四人、女子生徒が二人。
リボンの色を見ると、三年生が一人、二年生が三人、一年生が二人だね。
椅子に座って背中を丸めている三年生の具合が悪そうだ。
赤い顔をして汗をかいて震えていた。
「大丈夫?」
「お、俺は、だ、大丈夫だから……、か、下級生から、や、やってくれたまえ」
強情を張る人だなあ。
あなたが一番キツそうだよ。
「まあまあ、あなたからやりますよ」
「す、すまん……」
これは覚醒剤の離脱症状だろうなあ。
『キュアオール』
一回で、彼の顔色が良くなった。
もう一発。
『キュアオール』
震えが止まり彼の背中がまっすぐになった。
「あ、ありがとう、こんなに効果があるのだね」
「麻薬の離脱症状、禁断症状とも言いますね」
「勉強に役に立つ薬と聞いたのだ。確かに最初は素晴らしい効果だったのだが、だんだんと沢山飲まないと効かないようになって、しかも売っていた二年生が捕まってしまって」
私は次の人の治療をしながら彼の言葉を聞いていた。
捕まった二年生は、パターソンさんだろうな。
『キュアオール』
「あ、ありがとうございます」
さて、サクサク治療を終わらせて、また王宮の捜査をしなければ。
「覚醒剤は勉強に効く、ダイエットに効く、ストレスが和らぐという触れ込みで勧められます。ですが、未来の元気を奪ってきてるだけなんで、後がキツイのです。もう手を出さないでくださいね」
「もう、絶対に薬物には手をださんよ。ありがとう、聖女さん」
「気にしないでくださいね」
その間も、ポンポンとキュアオールを患者の生徒にかけていった。
だいたいは一回で症状がなくなった。
さて、終わり終わり。
みな、口々に、もう薬には手を出さないと誓っているね。
自首してくるぐらいの生徒は深みにはまってないから楽なんだなあ。
「アンソニー先生、治療、終わりました」
「ありがとう、キンボールさん。治療は素早く終わるのですね」
「光魔法は麻薬障害と相性が良いのですよ」
基本的に時間を巻き戻してるからね。
タイムふろしきみたいな物だ。
人には言わないけどね。
三年生の生徒が私に深く頭を下げていた。
「なんとお礼を言えば良いか、この恩を返すために、俺は何をすればいい?」
「特になにも。そうですね、教会に好きなだけ献金をしてください」
「それだけで良いのか?」
「はい、これも女神様の思し召しなので、私個人に恩義を感じる事はないんですよ」
「すまない、ありがとう、聖女さん」
三年生はさらに深く頭を下げた。
というか、彼は良い家柄の子息なんだろうなあ。
興味がないから名前は聞かないけど。
なんだか立派そうな先輩だ。
「では、失礼しますね。学園の方の麻薬捜査は明日行う予定です」
「明日は放課後に行いますか?」
明日は水曜日か。
私は学生証を取り出した。
裏に時間割が書いてあるのよね。
ふむ、国語の時間があればアンソニー先生に言って、その時間にやろうかと思ったが、明日は無いようだ。
地理、音楽、社会、武術か。
バッテン先生に言って武術の時間に動くかな。
放課後だと、捜査しているうちに帰ってしまうからね。
あ、今日みたいに午後の時間を使おうか。
どうせ、午後はクレイトン親子に実験されるだけだしね。
「午後に行いますよ」
「解りました、私も付き合いますね」
「それはありがたいです」
魔法の授業の時間だから、属性ごとにばらけるけど、その分サーチする範囲が狭まるね。
「それでは皆さん、失礼します」
「私は残って、薬の入手状況を聞き取りしておきます」
「お願いします。書類に残るとルートを掴みやすくて助かりますよ」
私はアンソニー先生に礼をして、ダルシーと一緒に医務室を出た。
「さて、集会室に行って、皆の試着をちょっと見て、また王宮にいくか」
ダルシーに話しかけたら、彼女はもう姿を消していた。
んもう、諜報メイドは趣が無いわね。
校舎を出て、中庭経由で集会棟へ向かう。
日がポカポカして暖かいね。
で、集会室の外のベンチに、フィルマン父ちゃんとカーチス兄ちゃんが座っておった。
「あら、何してるの、二人で」
「おう、マコト、中で女子が着換えてるから追い出されて、オヤジに説教されてる」
「してねえだろ。また会ったなマコト嬢」
フィルマン父ちゃんは太い感じに笑った。
あまりにゴツイので、カーチス兄ちゃんが小さく見えるな。
「なんかの魔導具で攻撃されたって聞いたが大丈夫だったか?」
「なんら問題は無いよ」
「うちの領袖はキモがぶっといな」
フィルマン父ちゃんはカカカと笑った。
エルマーはどこだろうと、辺りをきょろきょろ見回したら、校舎の方からやってきた。
「エルマーも追い出された?」
「そう……、仕方が無い……、ので……、トイレに……、行ってた」
「さようですか」
あ、そうだ。
「フィルマンさんは三節棍の先生とか知りませんか?」
「三節棍? またマイナーな武器だなあ」
「ああ、エルマーの武器か」
エルマーが懐から魔法の三節棍を出してフィルマン父ちゃんに見せた。
「これ……」
「おおー、魔法の杖で三節棍かあ。だれだ、こんな変態武器作るやつは」
フィルマン父ちゃんは笑った。
「芙蓉の武器だな、ちょっと心当たりを探してやる」
「おねがい……、する……」
「まかしときなクレイトンの坊ちゃん」
豪傑に任せておけば、良い先生を探してくれるだろう。
ダンジョンで三節棍を振り回すエルマーが見れる日も近い。
「そいじゃ、私はカロルを引っ張り出してくるよ」
「おう、行ってこい」
カーチス兄ちゃんに送られて、私は集会室のドアを開けた。
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