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第397話 謁見の間で諮問会議に参加する

 さて、二階はこんな感じかな。


「三階では諮問会議が開催中ですか?」

「これからじゃな。一緒に行くか?」


 王様は気さくだなあ。

 威厳は少ないけど、私は王様好きよ。


「そうですね。ポッティンジャー公爵は?」

「来ておらんな、派閥の貴族ごと不参加だわい」


 麻薬の事でつるし上げされると不味いからか。

 派閥も減ったとは言え、まだまだ勢力が強そうだな。


 私たちは王宮の階段を上って謁見の間に入った。

 中では貴族の皆さんが並んでいた。


「おお、当代の聖女候補ではないか」

「王子たちと仲がいいのだな」

「身分は低いが、背後の教会が強力だ」


 貴族さんたちが私の噂話をしてるな。


 王様が玉座に登る。

 私たちは謁見の間の隅っこの方に行った。

 王子さまが二人も居るのだから真ん中でも良いのだろうが、空いてる席が無いんだな。


 遅れて軍務大臣も入ってきて、私たちの近くに座った。


「おい、お前も参加するのか」


 なんだか大男のハゲが話しかけてきた。

 誰やおまえー。


「ゴーチエ・ホルスト伯爵だ、お前が一昨日喧嘩を売った」


 ジェラルドが小声で教えてくれた。

 お、命令さんのお父さんか。


「参加しますよ、ホルスト伯爵」


 地上で見るとでっかい男だなあ。

 そしてはげ頭だ。

 ヒルムガルドから川舟でやってきおったか。


「麻薬にかんする諮問会議という事だが、何かお前に関係があるのか」

「まあ、ありますよ」

「偽りやでっち上げではなかろうな、お前は信用できん」


 ケビン王子が私とホルスト伯爵の間に割って入った。


「ホルスト伯爵、口を慎んでください。彼女は王家の要請でこちらに来ているのです」

「そ、そうですか、ケビン王子、それは僭越な真似をしました。お許し下さい」


 ハゲ伯爵はペコペコとケビン王子に謝った。

 ほんとうにもう、親子揃って、上に弱く、下にキツイね。


 王様は玉座に着いてエヘンと咳払いをした。


「さて、皆のもの集まったようじゃな。今回の急な諮問会議は最近王都にはびこる麻薬禍についてじゃ」


 謁見の間はシーンと静まった。


「現在確認している麻薬の種類は三つじゃ、販売ルート等も判明しておる。問題はその拡散状況じゃ、魔法学園、魔法塔、教会にも広がっておる」


 おおっ、とか、魔法塔にも、とか、驚きの声が上がった。


「そして、王家の組織である『タワー』、警護騎士団、王宮の下働き、行政府でも患者が見つかった」


 さらにざわざわと貴族さんたちの驚きの声が広がる。


「王よ直答をお許し下さい」

「差し許す、なんじゃ、ホルスト伯」

「その麻薬はどのような害をもたらすのですか? 多少気分が良くなるぐらいであれば放置していても良いかと」

「麻薬の毒性は恐るべき物じゃ。マコト嬢、説明をお願いできるかな?」

「はい、説明いたします」


 私は立ち上がり、玉座の下まで歩き、振り返って貴族さんたちに対峙した。


「この三種の麻薬は依存の毒性が強い物です。一週間も常用すると中毒になり、消費する薬の量が増え、摂取を止めると酷く苦しみます」

「ポ、ポーションは利かないのかね? キュアポーションは?」

「効きません。脳に物理的な損傷を与える薬品なので、ヒールポーションでも無いと解消はできません」


 貴族たちは息をのんだ。


「皆様は身近にアルコール中毒の方はおられますか? 酒毒にポーションは利かないとはよく言われる物です。この薬品は酒毒よりも強く脳に働き、短期間で中毒にします。使用者に待っているのは廃人への道です」

「こ、こんな物が国民に流行したら」

「はい、国力が著しく損なわれます。治安は悪化し、市井で刃傷沙汰が多発するでしょう。麻薬は流行する前に根絶しなければなりません」


 王様が咳払いをした。


「ありがとう、マコト嬢。皆の者も事態の深刻さが解ったであろう。国の根幹を滅ぼす薬じゃ、なんとしても撲滅せねばならぬ」


 よしよし、暢気な貴族さんたちも、麻薬のヤバさが解っただろう。

 前世ではアヘンという麻薬を他の国に持って行って、一国を破壊したゲス国家があったんだよなあ。

 イギリスって言うんだけどね。

 まったくブリカスはろくでもない。

 さすがにお茶の代わりに中国にアヘンを輸出するのは良心が痛んだのか議会に掛けたのだけど、僅差で通ってしまったのよね。

 そして起こるのがアヘン戦争なんだよね。

 遠い異国だからって無茶をしたもんだ。


「現在解っている麻薬は、煙を吸い込むアヘン、錠剤を飲む覚醒剤、鼻から吸い込むコカインじゃ。心当たりがある者は前に出よ、聖女候補が治療をしてくれるそうじゃ」


 王様は息を吸った。


「ここまでの説明で畏れないようなたわけは我が国に必要ない、爵位を剥奪しアップルトンから追放する!! 良いか、聖女候補は感知の魔法で中毒者を確実に見分ける!! 後で判明した者は逮捕、そして追放じゃ!! 代々継いできた地位を投げ捨てるで無いぞ!!」


 よろよろと何人かの貴族が前に出てきた。

 さすがに爵位を持ち出されると自首するしかないよね。


「よし、良く決断した。お主たちの罪は問わぬ、とはいかぬが、所領は安堵しよう」


 前に出てきた貴族さんたちは涙目であるな。


「マコト嬢、治療を頼む」

「かしこまりました」


 他の部屋でやろうぜ、とか思ったが、まあこれもセレモニーだね。

 私はそれぞれの貴族さんの額に手を当てて、キュアオールを掛けていった。


「あ、ああっ、霧が晴れたような気がします、聖女さま」

「ありがたいありがたい」

「もう、麻薬には手をだしませぬ。約束いたします」


 ええい、良いおっちゃん達が泣くない。


 さて、仕上げだ、私は光の輪を作りサーチした。


 カーーーーン。


 ……。

 あれ、一人残ってるぞ。

 私が顔を上げるのと、そいつが懐から銃を出すのが同時だった。


 その中年の貴族と目が合った。

 私に向かってそいつは銃を発射した。


「マコト!!」


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― 新着の感想 ―
[良い点] ブリカスさんさぁ……
[一言] 更新ありがとうございます。 マコトちゃんは銃口の中に障壁が張れたのか?ダルシーが肉の盾再びなのか?あ、お土産の青いブローチで命拾いするパターンかな?ドキドキ|ω・`) リンダさん、リンダ…
[一言] 次からは先にサーチしましょう
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