第395話 王宮の二階で大物を発見
階段を上りきると王宮の二階である。
北側に練兵場兼飛空艇発着場、近衛騎士の本部、東側に行政府がある。
いわば王宮の実務階だな。
私は人差し指と親指の間に光魔力の輪を作る。
サーチする。
カーーーーーン。
「近衛騎士団本部クリア」
「それはなによりだね」
「近衛まで汚染されていては話にならんからな」
王家コンビがほっとした声を出した。
「行政府……。五件ほどヒット」
「なっ!」
「間違いでは無いか?」
「三件が固まっているよ、あとは一件と一件」
「とりあえず、行ってみようマコトっち」
ロイドちゃんが現場へ直行を提案した。
そうだね、直撃が良いね。
まずは三人も居る場所だ。
我々は歩き出した。
反応があった場所は、総務部であった。
「総務か」
「総務の情報が筒抜けだったら不味い。王族の予定や行き先が筒抜けだ」
「早いうちに判明して良かったともいえるよ、ジェラルド」
「そうですな、来年、抗争が激化している時に邪魔をされたら戦いにならなかった所です」
私たちは総務部に入った。
わいわい文官さんが仕事をしていて活気があるね。
「おや、ケビン王子、ロイド王子、お珍しい、見学ですかな」
「麻薬の調査に来た、ジュスラン部長」
「麻薬……、ですか。先の調査では見つからなかったですが」
「魔法で感知できる聖女候補を連れてきた、反応があった」
「……なんですと!」
もう一度サーチしてみる。
うん、窓際の三人だ。
これはコカインの方の反応だな。
三人に近寄っていく。
彼らは私の姿を見て、緊張を高める。
なんの仕事をしている部署なのか。
ジャリジャリジャリーンと音がしたと思ったらチェーン君が私の横に並んだ。
ありがとうカロル。
振り返ると彼女は微笑んでサムズアップをした。
チェーン君と一緒に三人の前に着いた。
三人とも脂汗を流し、顔色が悪い。
「王都渉外担当課……、なんてことだ」
ケビン王子がつぶやいた。
彼らは王都内の各地区や教会などとの連絡交渉役だな。
街で行われる行事なども担当するね。
小男が逃げだそうとした。
すかさずチェーン君が行く手を阻んだ。
「や、やめろっ! ぼ、僕はこれから地域視察にっ!」
なるほど外に出る仕事だから連絡が付けやすいのだな。
「三人共か? キンボール」
「三人ともだね。しかもコカイン、ルートが解って無いけど、ここが入り口っぽい」
課長らしい初老の紳士がぐったりと机に肘を付いた。
「申し訳ございません。ですが、ケビン王子……」
「言い訳は取り調べの場で言いたまえ」
「はい……」
総務部はシーンとして音もしない。
外から訓練をしているのか、近衛兵のかけ声が聞こえてくる。
静かに近衛騎士が三人を拘束して連行していった。
「お邪魔しました」
「い、いえ……」
ジュスラン部長が押し殺したように言った。
我々は総務部を後にする。
「総務はヤバイね、マコトっち」
「王族の情報が丸裸だね。コワイコワイ」
「だから、早くしろと言ったのだ」
ジェラルドが毒づいた。
「大丈夫、ポッティンジャー派は来年度までは動かないから」
「麻薬をテコにして王宮に潜り込むのか、恐ろしい手段だな」
「どれくらいの年月、汚染されていたか解らないね。あの麻薬の量は今日昨日の物じゃないでしょ」
去年からなんだろうが、三年掛けてたと聞いても驚かないな。
絶対に新年度からではない。
グレイブと山高帽が組んで麻薬供給網を王都に作り上げつつあったのだな。
薬をちらつかせれば情報は取り放題だし、患者の中毒が重くなれば薬を得る為ならなんだってするだろう。
半壊した麻薬供給網を潰すだけでも、王都はかなりのダメージになる。
まったく。
さて、あと行政府ではあと二人。
覚醒剤とコカインだな。
覚醒剤は財務局の職員であった。
激務っぽいからねえ。
近衛騎士さんに逮捕してもらった。
そして、最後のコカインは……。
「ケビン王子、王様を呼ぶことは可能?」
「そうだね、さすがにこれは……、ジャック、謁見の間にいる父を呼んできてくれ」
「わかりました」
ジャックさんが駆け足で去って行く。
「本当に最後の一人はここにいるのだな、キンボール。間違いではすまないのだぞ」
「反応はこの中だよ」
その部屋は、軍務大臣の執務室であった。
アップルトン王国全軍の総括をする大臣だ。
まさかなー。
大臣クラスが汚染されていたとは……。
『塔』の作戦部長の比ではないよ、これ。
軍務大臣、 リシャール・シャミナード侯爵は陸軍閥のたたき上げであるよ。
国王派の重鎮だ。
「信じられない、リシャール叔父上が……。まさか」
「薬は軍事じゃないからなあ。うっかりという事があるよ」
「しかし、大臣級を、どうやって?」
「コカインの量が潤沢だから、いまも供給を受けてるね」
サーチで把握している室内の人物は書類仕事をしている。
机の中と、本人にコカインの反応がある。
「あぶなかった」
ぶるっとジェラルドが胴震いをした。
「このまま来年を向かえていたら軍の協力を得られなかった所だ。単に迂遠に陸軍の作戦を失敗させるだけで、ポッティンジャー派は勝利できていた」
たしかに、ここで見つかって良かったとも言えるね。
王様がやってきた。
「どうしたのだキンボール嬢? 何か問題でも」
「麻薬の反応がここでありました」
王様は私が指さす部屋を見て目を丸くした。
「し、しかし、まさか、そんな……」
「とりあえず、直接聞いてみます」
「わ、解った、よろしく頼む」
私は足を踏み出して、執務室のドアを開けた。
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