第379話 ゴロツキ冒険者集団、地獄の猟犬
冒険者たちが押す力が強くて開かれそうになる。
くっそー、もうだめかーっ。
「マコト様、お手伝いいたします」
ダルシーがそう言って、ドア、私、自分にポンポンと拳を当てた後、ドアを押した。
「お、重くなったっ! くそっ! あ、いてえいてえ」
ダルシーは無表情にどんどん押していく。
私も押す。
体重が二倍ぐらいになってるっぽい、重いが押しやすい。
「い、いてえっ!! 足が、足が折れるっ!!」
後ろからだだだと足音が響いて誰かが階段を駆け上がってきた。
「カーチス!」
「冒険者かっ!! どおりゃあっ!!」
カーチス兄ちゃんはそのまま跳び上がり、ドアに向かって跳び蹴りを放った。
ガッシャーン!!
「ぎやああああっ!!」
「足を引き抜きやがれっ!!」
そういってカーチス兄ちゃんは冒険者の足を上から蹴り下げた。
ボクリ。
嫌な音がして、扉に挟んであった足がねじ曲がった。
うわ、折れたな。
「扉をあけろ、ダルシー、切り込む!」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ、もうちょっと人が来てから」
「俺とホウズにまかせろっ!」
『我にまかせよっ!』
ちょっと待ってよ。
「しゃらくせえっ!! 【切断】!!」
ぎゃあ、壁がX状に割れて崩れてきた!
向こうの冒険者がなんかのスキルを使ったみたいだ。
ダルシーが私の襟首を掴んで後ろに飛んだ。
カーチス兄ちゃんが瓦礫をホウズでたたき切った。
彼に障壁をかける。
階段を降りた所でダルシーの補助で華麗に着地した。
カーチス兄ちゃんも隣にシュタッと着地する。
ぶった切った入り口から、黒い金属甲冑を着た男がゆらりと入ってきた。
人相が悪いが、問題はそこでは無い。
こいつ、モヒカンだ!!
「ひゃっはー、可愛い子がいるじゃんかよお、初めましてえ、俺はAランクパーティ地獄の猟犬のリーダーのティモテだっ、よろしくなあ」
何がティモテだ、妙に爽やかな名前を付けるんじゃねえよ。
ヒャッハーのくせに。
「貴族学園のお嬢ちゃん、お坊ちゃんよ、お前たちには幾つか選択肢がある。俺らに降伏して蹂躙されるか、抵抗して蹂躙されるかだ。ああっ、どっちか選べよな」
「どっちも選ぶかよっ、なめんなっ」
「かかかっ、学園のガキどもが、Aクラスたる俺たちに勝てると思ってるのかよ、笑わせんぜーっ、ぎゃはははっ!」
奴の手に持っている赤い剣は魔剣のようだ。
リンダさんの魔剣の下位互換、宣言した一振りに防御無効を付ける物っぽい。
下位互換とはいえ、凶悪な魔剣には違いない。
相手の冒険者パーティは六人。
前衛、槍の奴は足が折れて下がっている。
タンクの重甲冑で戦槌を持つ大男が一人。
これにティモテが前衛だ。
後衛に黒いローブをかぶった魔術師。
白い衣を着た僧侶。
皮鎧の盗賊か。
良いバランスだな。
「お前たちの立っている所は教会所属の場所だ、早々に立ち去りなさいっ」
「へへへ、なんだ、お前、生意気だな、すぐ裸に剥いて抱いてヤンよーっ!!」
ダルシーが怒気を浮かべて私の前に出た。
「聖女さまになんて事を、ゲスめっ!」
「あらー、メイドさまに怒られちゃったよー!! ぎゃっはっはっは」
へらへらとして、ティモテは異様にムカつく。
「兄貴、俺は抜ける」
「は? 何言っちゃってんの、ヤニク、ビビっちゃったのかい、このガキどもにっ? あーっ?」
盗賊っぽい小男がティモテに抗弁した。
「兄貴、あんたは教会の怖さが解ってねえ。聖女に手を出すと狂乱の大天使が攻めてくるぞ」
「あ? ああ、リンダの馬鹿か、あ、あんなもんは怖くねえし、だいたい聖女さまの死骸を迷宮にくわせちまえばいいんだよ」
「俺は抜ける、わりいな、あと僧侶のレイモンもぶるってる」
「せ、聖女さまにはたてつけねえ、兄貴すまねえ」
「ちっ、おまえらはビビりだなあっ、おまえらは今回分け前無しな」
「ああ、それでいい」
「俺も……」
盗賊と僧侶は列をはずれ、骨折した槍持ちの治療を始めた。
ジャリンジャリンとチェーン君が走ってきた。
「マコト大丈夫?」
「平気だよ」
カロルが私の後ろに付いた。
「ち、ガキどもがいくら増えようと……」
カーチス兄ちゃんの隣に、ライアン君とオスカーが並んだ。
「待たせた」
「おせーよ、オスカー先輩」
「その分働く」
「僕もだよ」
ライアン君と、オスカーは剣を抜いて構える。
「敵はゴロツキ冒険者か、切ってよいな、マコト」
「命はうばわなきゃ、手足はいいよ」
「腕がなるみょん」
剣術部のカトレアさんとコイシちゃんが前に出た。
エルザさんは私の横にならんだ。
「対人戦ならリジンですわよね」
「助かります」
エルザさんは、私に聖剣リジンを渡して鉄扇を懐から出した。
「くそ、何人居るんだよ、笑わせんな、ガキどもめ」
「お、おい、ティモテ……」
「え?」
振り返ると、学園長と一緒に、アダベルがのっそりのっそりやってくるのが見えた。
『なんだ、悪漢であるか?』
「私たちをぶっ殺して、迷宮に食わせて、飛空艇と財宝を奪うって」
『な、なんだと、ゆ、ゆるさんぞっ!! この者どもは、その、我の友だっ!! ふざけるなよっ!!』
あら、財宝のほうじゃなくて私たちの事を心配してくれんだ。
ちょっと、うれしいね。
「ド、ドラゴン? な、なんで、ドラゴン? し、しかも古竜? SSクラスモンスターが、な、なんでこんな所に?」
「テ、ティモテ、どうするっ! ド、ドラゴンなんてっ!」
「う、うるせえっ! 切断して、切断して、ガキどもを全滅させて、そ、それからドラゴンも、せ、切断してやる、お、俺たちは泣く子も黙る、地獄の猟犬だぞっ!! ひゃっはーっ!!」
ティモテが逆上したような悪鬼の表情を浮かべて、ダルシーに斬りかかってきた。
「くらえっ! 【切断】!!」
ダルシーに向けて切断スキルを撃ち込みやがった!!
こいつっ!!
よろしかったら、ブックマークとか、感想とか、レビューとかをいただけたら嬉しいです。
また、下の[☆☆☆☆☆]で評価していただくと励みになります。




